大学生も夢中にさせる「ファッション イン ジャパン」展 明大生はこう見た

ファッションインジャパン展を鑑賞した明大生のグループ

国立新美術館(東京・六本木)で開催中の「ファッション  イン  ジャパン 1945-2020ー流行と社会」展(9月6日まで)は連日、様々な世代の来場者でにぎわっている。戦後から現代に至るファッションの歩みは、若者たちの目にどう映ったのか。明治大学商学部の東野香代子特任講師のもと、「ファッション・ビジネス論」を学ぶなどしている明大生たちが先日、グループで同展を鑑賞。「おもしろくてついつい長居してしまった」と3時間以上も会場に滞在した人もいた。「美術展ナビ」へ寄せてもらった12人のレポートを紹介する。

出展作品を鑑賞する明大生

個性豊かな自己発信に刺激 【商学部3年 中島幸嗣さん】

 私は今回ファッションインジャパン展を訪れて、ファッションの流行が循環しているように感じた。展示の序盤であるプロローグから第3章で見られた洋服が、それに近い形で第6章や7章、8章でも見られた。例えば第8章にて私が目を奪われたのは、石の流線などの自然物の形状から着想を受けて作られた洋服やサステナブルを意識した洋服である。ある種の素朴さを持っており、プロローグで見られた洋服に近いものを感じた。

 また、1990年代のファッションはやはり特徴的であった。現代ではS N Sの普及により誰もがファッションを発信できるようになった。それにより参考にできる情報が増え、ファッションに興味を持つ人がより増えてきていると考える。しかし逆にそのアクセスの容易さから、いわゆる「量産型」が生まれており、「個」の埋没につながっているのではないだろうか。できることなら私も1990年代のように個性ある自己発信を行なっていきたいと思う。

 日本も捨てたもんじゃない! 【商学部3年 関桃花さん】

 『日本も捨てたもんじゃない!』と、展示を見て率直に感じました。

洋服は、字のごとく西洋から入ってきた衣服の様式というのもあって、日本のファッションは海外の二番煎じなのではと、この展示会に行くまで思っていました。

しかし、展示されていた洋服には、「おしゃれを楽しみたい」、「自分を示したい」、「社会に抵抗したい」など、日本で暮らす人々やデザイナーの色んな欲求やメッセージを映していました。そのため、スタイルは違えど、どの時代のファッションも内包するエネルギーが凄まじかったです。新しいファッションの登場が、人々の従来の価値観を変えるというのも頷けました。

また、ファッションに込められた欲求やメッセージは、日本で暮らしているからこそ生まれたもので、その思いが込められた洋服は、日本の尊ぶべき唯一無二のカルチャーになっていると感じました。

色んな時代を経て、今も進行形で素晴らしいファッションが生まれています。現に、展示会に来場している人々も、思い思いの洋服を身にまとっていました。きっとこれからも、日本で素晴らしいファッションが生まれてくることでしょう。

最後に、日本人は自分たちのカルチャー、特にファッションとなると、どこか卑下しがちですが、もっと誇りを持っていいと確信しました。このファッションインジャパン展は、日本のカルチャーの素晴らしさを再認識できる良い機会なので、多くの人に来場してもらえたらいいなあと思います。

時代を反映、エネルギー溢れる洋服の数々【情報コミュニケーション学部4年 菅谷有純さん】

私が一番興味を覚えた時代は1970年~1980年代。古い文化や制度を打ち破り、着ることで自分を表現するようになったこの時代の洋服は、とにかく生命力に満ち溢れており、人々を元気付ける力があると感じました。

私も大学2年生の頃はここまで派手ではないですが、洋服で自分を表現しようとしていたなと思います。身近にいる大学生のシンプルな服装に飽き飽きし、個性を求めて服飾団体に所属しました。しかしそこで感じたのは、みんなのように派手な洋服を着なければならないんだという強迫観念。確かに彼らは、一般的な大学生よりは遥に個性的で自由でしたが、排他的な性質も持っていたと当時を振り返って思います。

今日展示会を見て一番に思ったことは、どの時代の洋服もエネルギーに溢れているけれど社会に訴えかけているような作品が多いということ。そこには社会問題や政治的な問題に対して、どこか嘲笑うようなそんな雰囲気も私は感じました。洋服やトレンドはその時代を異なる視点から反映する鏡なのかもしれないですね。

未来を担う自分の課題を痛感【商学部4年 ムン・チャンユンさん】

私は、この展覧会は戦後から今日までの日本を、ファッションという望遠鏡で辿るものだと感じた。それだけではなく、私が生きる時代のファッションの定義を知り、自分の中にどうやって反映させるかの課題を与えてくれた展示だと思う。

この展示の大半を占める、過去の栄光を振り返り、日本のファッションを発信するという趣旨は理解できた。しかし、この展示を見終えてから、私には、これから背負わされる荷がより重く感じられた。“先輩たちの方向性の提示って、曖昧になっていない?”という考えが私を襲ってきたからだ。私が見聞の狭い学生のせいかもしれないが、“持続可能をうったえる人々の思いを共感するだけでなく、実現へ足を運べるか?“についての疑問を抱く。

これまでなかった、新しいファッションへの定義が台頭する中、私たちの先輩世代は、私たちの背中を押してくれるペースメーカーとして、その重要な役割は終わった。これからの持続可能な未来を担うのは自分たちの世代であると、改めて考えた。

自分らしさ、の大切さ【文学部3年 石川萌さん】

 今回の展示の中で特に印象的であったのは、1970年代に日本人デザイナーが海外コレクションに登場し大活躍した展示だ。その中でも山本寛斎のコレクションは印象的であった。彼のクリエイションは日本的な伝統を前面に押し出した奇抜的なデザインで、ファッションを超えたエネルギッシュなパワーが秘められており大変感銘を受けた。そんな彼のクリエイションは当時の西洋だけでなく今日のデザイナーたちにも多大な影響を与えたものだと考えた。

また、80年代からDCブランドブームでファッションが多様化していった時代が個人的には魅力的であった。自分らしさを大事にして様々なファッションを楽しむ展示を通じ改めてファッションの良さを実感した。また、現在のファッションのあり方と80年代を比較した際に現在はインターネットを介したやりとりが定着し、互いに共感を求めることが一般化しているように感じる。故に、本来自分が着たいものが他人の意見に囚われている人も存在するのではないかと感じた。

個人的には、一着の服装をすることは社会に対する自分の意識、または社会を組み立てている規範や価値観との距離感覚を表現していると考えている。そのため、各人が他人の意見や共感、「いいね」に囚われすぎずに好きな服を身に纏うことができればこれから未来のファッション界も明るくなるのかと考えた。今回の展示を通じて、「自分らしさ」を大切にファッションを楽しむことが大事だと感じた。

ファッションの魅力に興奮【経営学部4年 羽田彩香さん】

    1980年代、特に印象に残った時代だ。目の前に現れた山本寛斎の白黒の衣装に「これがデヴィッド・ボウイが身に纏ったか」と興奮した。横に視線を移すと思わず「わっ」と声が出た。中央に集う幾体ものマネキンは、黒の統一感がありながらも異彩を放っていた。腹の底から湧き上がるような狂気とパワーを全身に受けた。どこからかビートルズの『all you need is love』が聞こえてきて、カオティックな世界。刺激が強かった。今の空虚な時代を生きる自分には強すぎるくらいだった。時代を象徴する文化への憧れがあるからかもしれない。

ブースへ続く小さな囲いを抜けると次々に変容する表現。10年単位でこんなにもガラッと変わるものか。しかし、いついかなる時代も人々は社会に影響され、ときに抗いながらファッションを楽しんでいたに違いない。

私が生きる時代には何が残るのか。身体性の追求か、持続可能社会の実践か、それとも多様性の標榜か。自由に過去の文脈を逸脱し続ける世界は、面白すぎて愛おしい。これからもファッションの魅惑に取り憑かれていたい。最後に、本ツアーを企画いただきました東野先生を初めとする関係者の皆様には心より感謝申し上げます。

 社会を変革するファッションの力【国際日本学部4年 田中美紀さん】

私はファッションインジャパンを鑑賞し、「ファッションは社会や、人々の価値観を変える力を持っている」と感じました。特に衝撃を受けたのが1964年の東京オリンピックの開会式のユニホームです。現在、私たちにとって赤は誰もが手に取ることができる色ですが、当時は「赤は女性が着る色」であり「男が赤を着るとは何事だ」と多くの苦情が寄せられたようです。しかし、このユニホームがきっかけで赤いジャケットが売れ、男性も着るようになったそうです。

このことから、ファッションは既存の価値観に切り込みを入れ、変えていく力を持っているのではないかと感じました。現代においては「ジェンダーレスブランド」という新しい価値観が登場し、社会問題の解決に繋がる可能性を持っているのではないかと思いました。もちろん、社会を変えることは容易ではありません。しかし、そこにおけるファッションの及ぼす影響は大きいのではないかと感じました。

自由に生きられる時代、象徴する服飾【商学部3年 田島叶子さん】

 学校では習わないファッション史を間近で見て鑑賞できて楽しかったです。みんな同じような服で自由が制限されていた時代から、たったの80年で自分の好きな服をきてみんなが自由な生き方をできていることは素晴らしいと思いました。これからの未来はさらにグローバル化や人々の自由が尊重されていくと思うので、着る人の性別を問わない服や自分で服を作るということが増えるのではないかと思いました。

また、自分が生まれていない頃のファッションを見て、80年代と90年代のスタイルに特に刺激を受けました。これらの時代は雑誌や写真が多く残っていて、そこに写っている人たちは自分の好きな服を着ていて、自由で、現在と近しいものを感じました。私がこの時代に生きていたらどんな服を着ていただろうと想像するのも楽しかったです。このファッションインジャパン展に参加してみて、個人のアイデンティティはファッションによっても形成されているのだと感じました。

化粧品とファッションの深い関係に驚き【情報コミュニケーション学部4年 関千春さん】

 今回、ファッションインジャパンに参加して最も興味深いと感じたのは、化粧品とファッションとの関わりについてです。化粧品とファッションが互いに与える影響については日常生活の中で感じる部分はありましたが、しっかりと文字と展示品というはっきりと目に見えた形で表されると、関わりの深さに驚くところがありました。

ファッションインジャパンでは資生堂の広告が至る所に展示されており、そのポスターの内容とその時代に流行したファッションが非常に似ていました。例えば、資生堂のポスターを健康的に日焼けをした女性が飾ったら、日焼けした肌が美しいという価値観が社会に広がり、洋服にもその影響が出ていました。また最も興味を抱いたのは、資生堂が男性化粧品の広告を出すと、男性の服装が多様になり、スーツスタイルやアイビールックなどといったように、男性ファッションに大きな影響を与えたということです。以上のように、化粧品とファッションとの関連性が非常に面白いと感じました。

 時代の変化を如実に反映【商学部4年 二宮未歩さん】

 私が一番印象に残ったのは、各年代にあった資生堂の広告です。長年、日本のトップ化粧品ブランドとしてあり続けている資生堂の広告からは、時代ごとの「あるべき女性の姿」が映し出されているように感じました。日焼け肌が印象的な1960年代後半の広告からは、健康的な美を追求する風潮が感じられましたし、それと近い時期には男性の起用など、男女関係なく美を求めるように時代が変化していったことが読み取れました。

個人的に好きな年代のファッションは1960年代でした。ポップな色使いで西洋っぽい雰囲気があり、とても可愛いかったです。現代の流行にも近いファッションも展示されていて、時代は巡ってくるんだと感じました。一方で、自分が生まれてから今に至るまでの2000年代以降のファッションにおいては、多様性の広がりからか、あまり馴染みのないものが多いと感じました。未来では、デザイン性だけでなく機能性や持続可能性など様々な観点からファッションを捉えているように感じ、これからがとても楽しみになりました。

選択肢の増える洋服の魅力【情報コミュニケーション学部2年 狭間智絵さん】

 私は、服は変化するが、良い意味で進化はしないものだと感じました。この展覧会を訪れるまで、私は、明治や大正、昭和の洋服は、現代では着ないような古いデザインなのだろうと思っていました。しかしながら、当時の洋服は魅力的なものばかりで、かつ機能性にも優れていました。現代で着られているものと同じような洋服や、今の洋服のデザインも生かされているのであろうものも沢山ありました。

何事も、時間がたつほど進化し、昔のスタイルは徐々になくなっていくのが世の条理だと思います。しかしながら、洋服は違うと感じました。様々なデザインの洋服は登場し続けていますが、昔ながらの服やシンプルな服が消えるということはありません。新しい物が取って代わるのではなく、選択肢が増え続けるのが洋服の変化の良いところだと思いました。これからも、どれかが一番優れているのではなく、11人が自分にとって一番の洋服を選べる世の中であってほしいと感じました。

サステナブルの重要性【法学部4年 山田 花月さん】

 1970年代以前は、映画・テレビ・雑誌といったメディアに登場するファッションリーダーに影響を受け、大衆が一つのファッションに統一されているような印象を受けた。それに対して2000年以降の現代においては、InstagramTwitterWEARといったSNSの浸透によって、誰もが簡単に独自のファッションを発信でき、特定の集団の中のファッションリーダーになれる時代になったと感じた。ファッションリーダーに対する大衆も、数多く存在するファッションの中から、自分が理想とし共感できるものを模倣しやすくなったと実感した。

近年では、SNS上の多くのインフルエンサーが自身のブランドを立ち上げ、独自の世界観で洋服を作り販売している。私も、自分が支持するインフルエンサーから洋服を購入することが多い。しかし、自分の理想とするファッションを実現しやすくなった一方、常に新しいファッションを発信しながらアイテムの購入を促すインフルエンサーは、環境問題への取り組みが重要視される現代において、サステナブルな存在とはいえないだろう。

今後ファッションが環境問題と向き合っていくためには、サステナブルなファッションを大衆に浸透させることが重要だ。そのために、影響力のあるインフルエンサーが、独自のファッションとともに、サステナブルなファッションの重要性についても発信していくことが求められると考えた。

学生たちの受け止めについて、ファッションの現場をよく知り、指導にあたった東野香代子特任講師に振り返ってもらった。

若者たち、どんな服で未来を生き抜いていくのか

歴史をたどる展覧会というと、過去の作品展示とひとくくりにされがちだが、ファッション衣料品は商品であって、一点ものの美術品や特権階級だけの贅沢品と違い、作り手が完成させて終わりではなく、それが市場を形成し、消費者が購入して身につけ、共に時代を生き抜いた軌跡があるかどうかにある。さまざまな人が個性を主張し、反骨精神も混ざった、多様な時代の空気をかもしだしていたのだろう。そこに思いをはせることで、私の中では多くの来場者が述べている「作品から感じる熱量」がヒートアップしていた。

 しかし、ところどころに自分史の回顧がある私と違って、学生たちは展示された作品を今回はじめて見て、そこから何を感じ取るのか、とても興味があった。展示品の多さに圧倒され、混乱して溺れてしまうのかな、と思ったら、意に反して鋭く分析していた。時を経てもなおデザイナーが発するパワーをしっかり受け止めていた。

 「奇抜な格好をしないといけないのか」というファッション業界への偏見を、自分の中で見事に解決できた人。

服の進化と変化の違いを感じた人。

サステナビリティという課題を未来につなげるために自分の役割を模索した人。

メディアでいえば、デジタル化前後を比較して、長所、短所を冷静に見極めている。おとなが心配しなくても、SNSを案外冷静に使い分けていることに安心。

メディアの進化とファッションリーダーの変遷に納得した人。

ファッションが、ジェンダー差別という過去の価値観を突き崩す武器になることを発見した人。

展示された服と一緒に時代を溯って、素直に楽しんだ人。

化粧品広告の強いメッセージを社会現象として受け止めた人。

 ファッションへの関わり方は人それぞれで、デザインする、作る、売る、選ぶ、着るがあり、そして今までの時代ならば捨てる、で終わっていた。これからは、捨てるではなく、リユース、リサイクル、アップサイクル、あるいは、私たちの世代が思いもよらない展開があるのかも知れない。そんな時代を迎える学生たちが、これからどんな服で未来を生き抜くのか、どんな時代をつくるのか、とても楽しみ。(寄稿)

東野香代子さん:エルメスの広報、民事再生中の福助の再生事業、海外モード誌「ハーパース・バザー日本版」の編集などを経て、2017年から明治大学商学部特任講師としてファッション・ビジネスの講義、およびパリのファッション・ビジネススクールへの短期留学を催行。

 

(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志) 


コシノジュンコさん、ドン小西さん、豊田エリーさんなど、会場を訪れた人たちへのインタビューや寄稿などを下の記事内でまとめています。
時代熱気伝える820点「ファッション イン ジャパン」展(国立新美術館)

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