【レビュー】日本のスポーツの源流から近代五輪までモノで振り返る「スポーツ NIPPON」東京国立博物館

1998年長野冬季大会 金・銀・銅メダル 平成10年(1998) 秩父宮記念スポーツ博物館蔵

東京2020オリンピック・パラリンピックの開催を記念して、日本におけるスポーツの歴史と文化を「もの」から知る展示。
江戸時代以前の「第1章 美術工芸にみる日本スポーツの源流」と明治時代以降の「第2章 近現代の日本スポーツとオリンピック」にわかれ、それぞれ、東京国立博物館と秩父宮記念スポーツ博物館の収蔵品を中心に展示する。

 

展覧会名 東京2020オリンピック・パラリンピック開催記念 特別企画「スポーツ NIPPON

会場 東京国立博物館平成館 企画展示室

会期   2021713日(火) ~ 920日(月・祝)

開館時間 9:3017:00 ※入館は閉館の30分前まで

休館日   月曜日(ただし、89日、920日は開館)

観覧料金 総合文化展観覧料および開催中の特別展観覧券(観覧当日に限る)で鑑賞できる。※入館は事前予約制。詳細は東京国立博物館ウェブサイトで確認を

 

1章 美術工芸にみる日本スポーツの源流

 

日本には伝統競技として、相撲、弓術、剣術、蹴鞠などがある。当たり前だが、江戸時代以前に近代的な「スポーツ」の概念はなかったが、伝統競技を描いた絵画や美術工芸品のなかに、スポーツ精神の源流を見いだそうという試みの展示となっている。

犬追物図屏風 右隻 ※8月17日(火)より左隻に展示替え

例えば、「犬追物図屛風」(江戸時代・17世紀、東京国立博物館蔵)は、動く犬を馬で追いかけて矢をあてる伝統競技を描いた作品。現代の感覚では、動物への残虐な行為と感じる人も多いだろう。
ただ、この絵で注目したいのは、犬を傷つけないように先の丸い矢が使われているところ。それでも犬にとってはたまったものではないが、競技のために命は奪わない仕組み作りは、スポーツ精神の源流のひとつと見ることもできる。

 

刀 長曽祢虎徹(東京国立博物館蔵)

同じように最初に見たとき、「これがなぜスポーツ?」と思ったのが、「刀 長曽祢虎徹ながそねこてつ」(長曽祢虎徹作 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵)だった。刀の「なかご」に「四胴」との文字が象眼されており、その意味は4人の人間の胴を試し切りで切断した=非常に切れ味のよい刀ということだという。

茎(なかご)の部分

東京国立博物館の佐藤寛介さんに、展示の意図を聞いたところ、「生きている人間ではなく、処刑された罪人の遺体4体を重ねて、試し切りをしたと記されています」と説明してくれた。もちろん、現代では罪人の遺体であっても認められることではない。だが、近代以前から、人や動物の命を奪わずに競技をするという意識が芽生えていったのかもしれない。

佐藤さんに、別の面白い資料を教えてもらった。「愛洲陰流伝書」(室町時代・16世紀写し、東京国立博物館蔵)だ。

愛洲陰流伝書(東京国立博物館蔵)

愛洲あいす陰流とは、愛洲久忠という人物が編み出した剣術流派なのだが、技の名前が<檄アツ>なのだ。

展示されている箇所では、第三は「山陰」、第四は「月陰」、第五は「浮船」、第六は「浦波」、第七が「獅子奮迅」と、ポーズをとる人物の絵とともに、技の名前が書かれている。

「一の~」「二の~」と、とある人気少年漫画を思い浮かべる人もいるのではないか。

絵柄も絶妙。ちょうど隣に葛飾北斎の「北斎漫画」も展示されているのだが、北斎に比べると、決して上手とは言えないが、少年漫画のような躍動感がある。思春期の感情が呼び覚まされる。

「食らえ! アイス流 第四の秘技、月陰!」

「第六の浦波も効かないだと? ならば、第七の秘技 獅子奮迅だ!」

とのセリフを勝手に脳内再生して楽しんだ。佐藤さんによると、今回、展示するために収蔵品を探しているときに、見いだされた作品とのこと。日本のバトル漫画史の一ページに加わるかもしれない。

 

2章 近現代の日本スポーツとオリンピック

 

日本の初期のスポーツ用具や用品、オリンピックにまつわる衣装やメダルなど、秩父宮記念スポーツ博物館の所蔵資料を中心に紹介する。

マラソン足袋 明治~大正時代・20世紀 秩父宮記念スポーツ博物館蔵

 

驚いたのは、日本が初参加した1912年のストックホルム大会で、日本人の陸上選手が履いていたのが足袋たびだったこと。

秩父宮記念スポーツ博物館学芸員の青木祐一さんは、「マラソンで走るストックホルムの道が石畳だったため、大変苦労しました。当然、思ったような走りはできませんでした。その後、足袋の底にゴムをつけるなどして道具が進化していきました」と話す。

 

1998年長野冬季大会 金メダル 平成10年(1998) 秩父宮記念スポーツ博物館蔵

また、日本でこれまで開催された3大会(東京、札幌、長野)の金・銀・銅メダルも展示されている。年代によって、どのメダルに懐かしさを感じるかが変わるだろう。記者の場合は、漆や七宝が施された長野冬季五輪のメダルが記憶に残っている。
今年は、新しいメダルがこのコレクションに加わるはずだ。日本のスポーツの歴史に、モノと記憶が残されることは間違いない。

 (読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)

 

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