【内覧リポート】40年越しの完成「大阪中之島美術館」 漆黒の箱に光が差し込む新アートスポット

大阪・中之島に新たに誕生する美術館「大阪中之島美術館」が6月末に完成し、7月2日にプレス向けに初公開された。美術館は大阪市が建設し、画家・佐伯祐三やモディリアーニなど、近現代美術を中心に約6000点を所蔵。来年2月にオープンを予定している。黒い箱のような外観だが、内部は巨大な吹き抜けになっており、光が差し込むおしゃれな空間。内覧会の様子をリポートする。

美術館は、市制100周年記念事業として1983年に構想、90年に準備室が設置されたが、市の財政難などで着工が始まったのは2019年。約40年を経て、先月末に竣工した。

巨大な漆黒の直方体に中之島の「N」の字をモチーフにした窓が設けられた個性的な外観。建築家の遠藤克彦さんが設計した5階建てで、延べ約2万平方メートル。4階と5階に5つの展示室、1階にホール、3階に収蔵庫が作られ、オープンまでにレストランやカフェ、ミュージアムショップを併設する予定だという。

北側の堂島川に面した入り口(2階)には、ヤノベケンジさんによる巨大な猫のオブジェ「シップス・キャット(ミューズ)」(2021年)が出迎えてくれる。

一歩中に入ると、5階までつながる巨大な吹き抜け空間を、3台のエスカレーターや階段が縦横無尽に横切るような開放的な作り。エスカレーターや階段の段が光で浮かび上がっており、4階、5階へと進むと、まるで近未来の世界へ連れて行かれるような感覚に陥る。

最初に訪れるのは5階の展示室。最奥の「展示室3」は天井の高さが6メートルと巨大で、「所蔵する一番大きな作品が高さ5メートルなので、十分に展示できますし、大規模な展覧会にも対応できます」と菅谷富夫館長。

菅谷館長

4階へは階段を使って降りる。階段は段差が低く、ゆったりと作られており、菅谷館長は「頭の中に今見たアートがくるくると回っている状態で降りていただくことになるので、危険がないよう緩やかに作ってもらった」とこだわりを語る。

4階は、ガラスケースをしつらえた展示室が。ここは主に、日本美術の展示に活用するという。

もう1つの展示室は、途中から壁の色が白から黒へと切り替わる不思議な空間だ。中之島で発祥した(前衛美術集団の)「具体美術協会」の本拠地だった黒壁の館をモチーフにしており、具体美術の作品を展示することも計画されているという。

展示室と展示室をつなぐ「パッサージュ」という空間は、4階は東西方向に、5階は南北方向に両端に窓が広がる。2フロアを回ると中之島を360度見渡すことができる構造になっており、遠藤さんは「展示室を巡りながら中之島の景色を堪能できるような作りにしました」と話す。

様々な中之島の顔が楽しめる

大阪市立科学館、国立国際美術館に隣接。美術館同士を結ぶ橋が来年以降に開通予定という

日の光が窓から注ぎ込むと、プラチナシルバーの壁が輝くのも特徴といい、「光の当たり方、時間によって異なった色になるのも楽しんでいただきたい」と遠藤さん。

美術館は来年2月2日に開館し、3月21日まで同館が所蔵する佐伯祐三、モディリアーニ、マグリットらの作品を展示する「超コレクション展 99のものがたり」を、4月9日から7月18日まで国内外のモディリアーニの傑作を集めた特別展「モディリアーニ」を開催する。

菅谷館長は「6000点を超えるコレクションは1点ずつ収蔵した記憶があり、どの作品にも思い入れがあるので、本当なら全部並べたいくらいだ。ぜひ多くの方に来ていただきたい」と話していた。

(読売新聞大阪本社事業本部 美術展ナビ編集班 沢野未来)