【レビュー】永遠の夢追い人、ケンゾーの歩み 「Dreams-to be continued-髙田賢三回顧展」 文化学園服飾博物館

世界的な名声を得た「アンチチュクール」の名品などが並ぶ

展覧会名:Dreams- to be continued-髙田賢三回顧展

会期:2021年6月1日(火)~6月27日(日)

会場:文化学園服飾博物館(東京・新宿、新宿駅から徒歩)

開館時間:10時~19時(入館は閉館の30分前まで)

休館日:会期中無休

入館料:一般500円、大高生300円、小中生200円ほか。事前予約不要(混雑時に一時的に入場制限を行うことはあり)

文化学園の後輩たちが利用する甲州街道沿いに掲示された展覧会の案内。髙田氏の人懐こい笑顔が印象的だ。

昨年10月4日、81歳で死去した世界的ファッションデザイナー、髙田賢三氏の回顧展。会場の文化学園服飾博物館は学校法人「文化学園」を母体とし、日本でも数少ない服飾専門の博物館として知られる。髙田氏は文化学園が運営する文化服装学院の卒業生(昭和36年卒)で、展示品の多くは髙田氏が母校への感謝と、後輩へのエールとして寄贈したものだ。

髙田氏は1939(昭和14)年、兵庫県姫路市の生まれ。58年に文化服装学園に入学。松田光弘氏、コシノ・ジュンコ氏、金子功氏らのちのスターデザイナーが同級生という、才能が満ち溢れる環境だった。59年、新人デザイナーの登竜門「装苑賞」(第8回)を受賞し頭角を表す。65年にフランスへ渡り、その後はパリを拠点に長く第一線で活躍。2016年には仏政府より最高勲章「レジオン・ドヌール勲章」を授与されている。

作品の中では、やはり冒頭に展示された「アンチクチュール」が印象的だ。70年のパリデビュー後まもなく発表したもので、体のラインにぴったりと沿う西欧の伝統的な服作りに対し、平面的で直線的なカットや、ゆとりをたっぷりとった大きめの服作りが特徴。女性の体を服から解放した意味でも革新的だった。

中国ルックなど、フォークロアルックも多彩で楽しい。才気煥発で、自由にあふれた「ケンゾー」ならではのデザインが光を放つ。

意匠も多彩なアフリカルック。早くから文化や民族などの多様性に深い関心を持っていた。

マリーンルックのニット。

バルーンルックも目を引く。過渡期なデザインというが、今見ても新鮮。

カジュアルなデザインが中心だが、宮廷風、中世風のドレスもある。

ロシアンルック。様々な花柄プリントがふんだんに使われ、色の合わせ方も大胆。それでも破綻しないところに髙田氏の天才たるゆえんを感じる。

ファッションショーの最後はウェディングドレス、が定番の時代。髙田氏の手にかかるとやはりひと味違う。過度に可愛らしくないところが現代にも通じる。

雑誌記事などの資料も豊富だ。髙田氏が同窓生である小篠順子(コシノ・ジュンコ)氏の仕事場を訪ねて行った対談など貴重な内容。それにしても、この二人が同級生で懇意だった、というのは改めてすごい時代だ。

髙田氏が1960年に第8回「装苑賞」を受賞した作品。

知人のために制作したウェディングドレス。

そのデザイン画。

1989年に開催された髙田氏の展覧会に合わせて、人形作家の四谷シモン氏が制作したマネキン。このマネキンにケンゾーの作品を着せ、華やか演出を展開した。現存する数少ないマネキンという。

髙田氏の一貫したセンスを感じる怒涛の展示だが、時代を追って微妙な作風の変化も確かにある。同展を企画した文化学園ファッションリソースセンターの上田多美子さんは、「デビュー当初の、作りたいものを作るぞ、という頃の作風と、ケンゾーブランドが巨大化し、ビジネスとしての側面が強くなったデザインを比較するのも興味深いです」という。

タイトルの「Dream」は髙田氏が好んで使った言葉。何かにつけて元気がなくなったように見える今の日本。髙田氏の天衣無縫で、自由に満ちたデザインに触れて、活力をもらうのもいい。

(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)

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