豊田エリーさん 「服には魂が宿る。人の息遣い、歴史を感じて感動しました」 ファッション イン ジャパン展を鑑賞

「これほどたくさんのファッションアイテムを見られることはまずないです。チャンスを逃さずに来てほしいです」と話す豊田さん(14日、国立新美術館で、マスクは写真撮影時のみ外しています)

国立新美術館(東京・六本木)で開催中の「ファッションインジャパン」展で、音声ガイドナビゲーターを務めるモデルで女優の豊田エリーさんが14日、展覧会場を訪れました。ファッションに詳しく、サステナブル(持続可能)な社会の在り方にも強い関心のある豊田さん。展示に大いに感銘したそうです。感想を伺いました。(聞き手、読売新聞東京本社美術展ナビ編集班・岡部匡志)

デヴィッド・ボウイがツアーで着用したジャンプ・スーツ《トーキョーポップ》(左)など山本寛斎氏の作品

ファッションは「身に着けるアート」

Q 山本寛斎さんの作品に強い印象を持ったようですね。

A 作品自体は写真などで見たことがあったのですが、実物をはじめてみて、いい意味での「異物感」を強烈に感じました。日常の生活の中ではなかなか見られないもので、ファッションを超えてアートに近いな、という印象でした。アートを身にまとえるのがファッションの一番すごいところだな、と思うので、それをデヴィッド・ボウイという最高の人が着ていて、「かっこいい×かっこいい」だなと。本物を見られてうれしかったです。本人のアグレッシブさが作品にそのまま表れている。すごく異色ですよね。一目で寛斎さん、と分かるのはすごいと思いました。

Q 寛斎さんや三宅一生さんが世界で活躍しました。

A マイルス・デイヴィスとも一緒に仕事をするなど、海外のカルチャーともつながって、世界との架け橋になるって素晴らしいことです。夢があります。

自分の音声ガイドを聞きながら、作品解説にも熱心に目を通す豊田さん

人の暮らし、文化、すべてにつながるファッション

Q 展示を振り返ってみると。

A 今回すごいと思ったのは、個人のコレクションを含めて、様々な施設が所蔵している何百点という作品が一堂に会している点です。この機会を逃してしまうと、なかなかこれだけのファッションアイテムが揃うことはないでしょう。展示全体の感想としては、人の息遣いに感動しました。洋服って魂が宿るんだなあ、と。歴史をたどって歩きながら見ていると、写真を見ているのとは違う、素材感を全部含めて伝わっているものがすごく多くて、言葉にするのがまだ難しいんですけど、本当に感動しました。グッとくる展示会でした。

豊田さんがナビゲーターを務める音声ガイドは、菊池武夫さんや津守千里さんのスペシャルインタビューなど盛りだくさん。豊田さんのサステナブルへの思いを聞くこともできます

Q  どんな展示だと想像していましたか。

A  音声ガイドを収録した時も思ったのですが、ファッションってひとつのものではなくて、人間の歴史、文化、生活、音楽となどと密接に関わっているジャンルです。それを実際に展示している空間に行ってどんな気分になるかと楽しみにしていました。今回、ひとつひとつの部屋は白い壁でとてもシンプルな作りで、作品が引き立つ展示になっていたのですが、部屋を移動するごとに時代が変わっていくということが洋服をみればわかる、ということにもすごく感動しました。時代を象徴していました。やはり景気が元気な時代の服はすごく元気ですし、色も鮮やかでした。

森英恵さんがデザインした日本航空乗務員の制服(1970年)など
コシノジュンコさんがデザインした大阪万博のコンパニオンのユニフォーム(1970年)

万博やJALのユニフォーム、「着てみたい!」

Q  60年代や70年代のファッションも熱心にご覧になっていました。

A 大阪万博やJAL、東京五輪などのユニフォームが印象的でした。すごく可愛くて、「着たい!」と思いました(笑)。いま、ああいうモノをデザインしてほしいですね。

Q 会場の人たちもとても熱心に見ていました。

A 来場者のファッションを見るのも楽しかったです。羽織が着物っぽい方もいたりして。みなさん、お気に入りの服で来てほしいです。

Q どんなところが見どころだと思いますか。

A ファッションは私たちにとって一番身近なアート作品です。家に置いておける、身にまとうこともできるアート。ふだん何気なくコーディネイトしてお出掛けすると思いますが、衣服がどう発展してきたか、あるいは今までにどんな作品があったのかを、歴史に沿って見られる展示はなかなかないです。幅広い年代の方に楽しんでもらえると思います。自分の時代が近づいてくると、なんだかワクワクしてきて(笑)。「そうそう、これこれ」という気持ちにもなります。性別問わず、年代問わず、楽しめます。

ルーズソックスにグッときた

Q 豊田さんには、どのあたりから「自分の時代」でしたか。

A 1990年代の後半ぐらいから、「分かる」なあと。ギャル文化全盛期の時、私はその世代よりちょっと下だったんですね。下の世代からみて「カッコいい!」という憧れでした。上の世代の人たちが、厚底とか親が絶対に許してくれない格好をしている時代で(笑)。履きたくても履けなかった。でも、ルーズソックスは履いている世代でした。ルーズソックスも展示されていましたね。ポケベルも置いてあって。すごく短い時期の流行はやりだったんですが、この長いファッションの歴史の一部に残してもらっていると思って、グッと来ました。

ルーズソックスとポケットベルも展示されている(1990年代中ごろ)

Q ルーズソックスは履いていたんですね。

A  はい、自分で買って。それも、中学1年であんまりダボダボの履いていると、先輩に怒られるのです。だんだん長くしていったんです(笑)。そういう文化がありました。百何十センチという、身長に近いものを買って。それをたるませるのがいい、という価値観でした。

Q ダブダブ感で勝負なんですね。

A そこでヒエラルキーがみえるというか。格が分かるというか。ダブダブの感じで学年が分かるんですよ(笑)。当時、がっつり流行になって、嵐のように過ぎ去ったギャル文化でした。それが懐かしくて、写真もいっぱい展示されていて。それもよかったです。渋谷や原宿の街並みも懐かしかったです。

「下妻物語」で深田恭子さんが着用した《はわせドールワンピース》など
ロリータやゴシックの代表的ファッションも展示されている

Q ゴシックロリータのコーナーもしっかり見ていました。

A 映画「下妻物語」が大好きだったので。代官山を歩いてロケ地巡りしたほどです(笑)。

Q ティーンエージャーのころ、裏原宿あたりを実際に歩いた世代ですか。

A ええ、もう実際に。「今、私、裏原のヴィンテージショップにいるよ!」という感じで。かなり背伸びしている感じでした。そういうことひとつひとつが楽しかったです。

印象的だったという中里唯馬さんの作品とともに

「自分」があれば着こなせる

Q  その他の展示で印象に残ったのは何でしょう。

A 広川泰士さんの「Sonomama Sonomama」が良かったです。図録でもこれは楽しみだと思って期待していました。畑で作業している人などにいきなりハイブランドを着てもらい、写真を撮影する試みですね。皆さん、とても着こなしていて、元々モデルになった彼らが来ていた民族衣装のように見えたのです。

写真家・広川泰士さんが1982~86年まで撮り続けた「Sonomama Sonomama」。ファッションに縁も興味もない、特に田舎で土や海とともに生きている人たちに、イッセイミヤケやコム デ ギャルソンを着てもらうプロジェクト

Q モデルになったみなさん、いい顔していましたね。

A 本当に笑顔がすてき。特に犬を散歩させている男性の写真なんてめちゃくちゃカッコよくて。その人自身が「自分」をもって生きていれば、服に負けないというか、似合うんです。しっかり「自分」がある人は着こなせるんです。私もまず自分を持ってファッションを楽しみたいなあ、と改めて思いました。

サステナブルへの取り組み、心強く

Q 豊田さんは、サステナブルにはとりわけ強い関心をお持ちですね。衣服もサステナブルを意識して変わってきていました。

A 2020年代になると特にそうでした。消費の時代から一点一点大事に作るとか、一つのものを長く着るとか。素材もサステナブルなものが増えています。ファッションも地球の未来を考えることがテーマになっていくと思っていたので、展示にもとても共感しました。リサイクルやリユースの展示があったのも、時代だと思いました。ほとんどのデザイナーさんが環境のことを考えていることが分かり、心強かったです。

リサイクルやリユースの現状についても展示されている

Q グッズコーナーも充実していました。

A  可愛いものが目白押しで目移りして大変です(笑)。最後までしっかり楽しんでほしいです。

豊田エリーさん モデル・女優 1989年、東京生まれ。趣味は旅行、カメラ、芸術鑑賞、乗馬、ギター、英語、フランス語。JWAVEETHICAL WAVE」ナビゲーター。現在、舞台 イキウメ「外の道」に出演中。

「ファッション イン ジャパン 1945-2020 ー流行と社会」展は9月6日(月)までの開催。公式ホームページはこちら

(おわり)

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