【プレビュー】初の大規模回顧展 「小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌」 新発見含む多数の初公開作品に注目 京都文化博物館で8月7日開幕

小早川秋聲《長崎へ航く》1931年 個人蔵

展覧会名:小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌(レクイエム)

会期:2021年8月7日(土)~9月26日(日)

会場:京都文化博物館(京都市中京区三条高倉、市営地下鉄烏丸御池駅から徒歩約3分、阪急烏丸駅から徒歩約7分、京阪三条駅から徒歩約15分)

開室時間:午前10時~午後6時、金曜日は午後7時30分まで(入室はそれぞれ30分前まで)

休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌日は休館)

入場料金:一般1400円(1200円)、大高生1100円(900円)、中小生500円(300円)※()は前売り料金

巡回予定:東京ステーションギャラリー(2021年10月9日~11月28日)、鳥取県立博物館(2022年2月11日~3月21日)

大正から昭和にかけて京都を拠点に活躍し、従軍作家としても知られる異色の日本画家、小早川秋聲(こばやかわ・しゅうせい)(1885―1974)の初の大規模回顧展が今夏、京都文化博物館で開催される。

これまで秋聲作としては、大戦末期に制作された《國之楯》などわずかな作品が一般には認知されるだけだったが、今回は個人コレクションを中心に、初期から晩年に至る約110作を紹介。新発見作品《虫の音》を含む初公開の作品が数多く展示され、秋聲の画業の全容を知る貴重な機会となる。

小早川秋聲《虫の音》1938年 個人蔵

新発見《虫の音》は疲れ果てて、戦場で仮眠を取る兵士たちを描いたユニークな画題。日中戦争が激化した時期の作品で、当時の取材や制作意図などを想像すると興味は尽きない。

小早川秋聲《國之楯》1944年 京都霊山護国神社(日南町美術館寄託)

鳥取県の寺の長男として生まれた秋聲は、9歳で東本願寺の衆徒として僧籍に入った。その後、京都で谷口香嶠、山元春挙ら日本画家に学び、文展、帝展で活躍した。中国で東洋美術を研究したり、欧州に渡り西洋美術を学んだりなど、旅の多かった画家でもある。やがて、従軍画家として戦地に派遣。代表作《國之楯》は陸軍に受け取りを拒否され、長く秘匿されていたが、戦後、改作され公開されたことで知られる。

小早川秋聲《恋知り初めて》大正期 個人蔵

秋聲については強烈な印象を残す戦争画に焦点が当たりがちだったが、出展作品を見渡すとむしろ抒情的で、日本画の伝統を踏まえつつ、西洋画の影響を思わせるものもあり、ひとつの枠には収まりきらない多彩な作風であったことが分かる。戦後に制作された作品にも注目したい。

小早川秋聲《薫風》1924年(上は左隻、下は右隻) 個人蔵
小早川秋聲《未来》1926年 個人蔵
小早川秋聲 《愷陣》1930年 個人蔵
小早川秋聲《長崎へ航く》1931年 個人蔵

構図や衣服の柄が目を引く作品。同博物館の植田彩芳子学芸員によると、この「長崎へ航く」は、秋聲が欧州を訪れた際に描いたオランダでのスケッチを元にした作品という。江戸時代、長崎とオランダを頻繁に行き来していた船が、オランダを離れて長崎へ向かうとき、別れを惜しむ4人のオランダ女性を後ろからとらえた。秋聲は人物の衣裳を描くために、文化年間のオランダ更紗を集めたともいい、ディテールへのこだわりを感じさせる。赤い服を着た女の子は、日本人形を抱えている。

《御旗》1936年 京都霊山護国神社(日南町美術館寄託)
小早川秋聲《聖火は走る》1963年 個人蔵

東京、鳥取にも巡回し、大いに話題を集めそう。戦争画家、というこれまでのイメージにとらわれず、新鮮な眼でぜひ楽しみたい。

(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)

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