【レビュー】能を通して日本の自然と美術を知る 特別展「日本人と自然 能楽と日本美術」(国立能楽堂資料展示室)

展覧会名 特別展「日本人と自然 能楽と日本美術」
会場 国立能楽堂 資料展示室(東京・千駄ヶ谷)
会期 2021年4月7日(水) ~6月27日(日) 休室日:月曜日、ただし6/21は開室
入場料 無料
入場制限 混雑緩和のため32人以内。公演日の休憩時間は利用不可

伝統芸能「能」は、日本ならではの四季や自然を舞台の上で観客に見せてくれる。その世界は「幽玄」と言われている。こうした日本の自然は能だけでなく、日本美術でも重要なテーマだ。
国立能楽堂(東京・千駄ヶ谷)の資料展示室で開かれている特別展「日本人と自然 能楽と日本美術」では、能と美術の結びつきを、絵画から工芸品までさまざまなジャンルの美術品を通じて感じることができる。国立能楽堂の高尾曜・事業推進課専門員兼調査資料係長の案内で、展示作品の中から、特に「琳派りんぱ」の作品を紹介してもらった。会期は6月27日までだが、ここで紹介した作品の多くは5月30日までの展示だ。

光悦謡本

琳派のはじまりといえる本阿弥光悦と俵屋宗達のコンビが、現代的に言うとブックデザインをしたもの。謡本うたいぼんとは、能の曲の「楽譜」のこと。
展示されているのは、「光悦謡本(特製本)」(法政大学鴻山文庫蔵)=写真右=と、慶長10年<1605年>の奥書のある「光悦謡本 観世身愛ただちか奥書」(鴻山文庫旧蔵)=写真左=で、表紙のタイトル部分の書体は光悦流で、表紙の装飾は俵屋宗達によるもの。展示は5月30日まで。

四季草花図屏風 伊年印

六曲一双の屏風は、きらびやかな金地に四季の草花が描かれており、まさに琳派。「伊年いねん」は俵屋宗達の工房の印だ。それぞれ縦約146センチ、横約356センチと大きく迫力がある。静嘉堂文庫美術館蔵。展示は5月30日まで。

酒井抱一と原羊遊斎

光悦・宗達が切りひらき、尾形光琳が大成した琳派の作風を、江戸後期に私淑したのが酒井抱一だ。酒井抱一が下絵を描き、原羊遊斎が作った蒔絵まきえの櫛が4枚、しかも春夏秋冬で4枚展示されている。このうち3枚(胡蝶庵コレクション)は、櫛の両面にそれぞれ抱一と羊遊斎の名が書かれているが、「牡丹蒔絵櫛」(個人蔵)は、ひとつの面に2人の名を表す珍しいもの。6月27日まで展示されている。

江戸の高級ブランドとなった二人による作品がほかにも展示されている。「月秋草蒔絵さかずき 酒井抱一下絵 原羊遊斎作」は、本展にて初公開の作品で、5月30日までの展示。
また、5月5日まで展示されていた中には、抱一が羊遊斎にあてた「椿棗下絵書簡」もあった。抱一がなつめのデザイン下絵を描いて発注する内容で、それをもとに作られたとみられる「椿蒔絵棗」(いずれも泉屋博古館分館蔵)に付随して残されてきた。展示は終わったが、公式図録(2550円)で両者を見比べるのも楽しいだろう。
図録は国立劇場売店の文化堂のネット店舗でも購入できる。

慶長期の野外での能

琳派ではないが、5月30日までの展示品で、注目されるのが、「北野演能図屏風」(桃山時代~江戸時代・17世紀、国立能楽堂蔵)だ。写真は部分。
京都の北野天満宮近くの野外で、仮設の能舞台で能の<船弁慶>が演じられている様子を描いた四曲一隻の屏風。高尾さんによると、北野天満宮では慶長4年(1599年)以降に、途絶えていた勧進能が再開された。見物人の衣装や駕籠かごの形式、見物席「桟敷」の構造などから、慶長期の能楽が描かれた貴重な絵という。
(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)
展覧会の詳細は、国立能楽堂のサイトへ。

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