【プレビュー】ネコの目線で都市生活見直す 隈研吾展 東京国立近代美術館で6月18日開幕

展覧会名:隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則

会期:2021618日(金)~926日(日) 休館日:月曜日(ただし7月26日、8月2日、9日、30日、9月20日は開館)、8月10日(火)、9月21日(火)

会場:東京国立近代美術館1F 企画展ギャラリー(東京都千代田区、東京メトロ東西線竹橋駅 1b出口より徒歩3分)

観覧料:⼀般1,300(1,100)円、大学生 800(500)円

隈研吾(1954~)は現代日本を代表する建築家のひとり。公式ホームページのプロフィールを引用すると、「その土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、やわらかなデザインを提案」しているという。世界各地に点在する作品の中から公共性の高い68件の建築を建築模型や写真などで紹介するのが、この「隈研吾展」だ。

隈研吾氏 © J.C. Carbonne

コンクリートと鉄で作られた20世紀の建築は何か息が詰まるような気がする、と考える隈。では、「人間に優しい建築」とは何か。本展では、隈が用いている方法論を5つに分けて紹介する。「孔」「粒子」「斜め」「やわらかい」「時間」――。実際の建築は複数の方法論の組み合わせで成り立っているが、本展覧会では便宜的に、ひとつの建物をひとつの方法論でクローズアップしている。

高知県立美術館での展示風景 撮影:中島健蔵

建物の内側と外側をつなぐのが「孔」。隈の思想の中には、「街」や「山河」と「建物」をつなぐだけでなく、「建物」と「建物」の間に隙間としてできる空間も含まれているようだ。例えば、新潟県長岡市にある「アオーレ長岡」。市庁舎棟、アリーナ棟、市民協働センターの入った棟という3つの建物の間に、「ナカドマ」という大きな吹き抜け空間が作られており、そこが市民の憩いの場になっている。

アオーレ長岡 2012 ⓒby FUJITSUKA Mitsumasa

公共建築を作る際、往々にしてヒューマンスケールを超えた大きな建物に成り、威圧的になってしまう。それを避けるために、使うのが「粒子」の方法論。例えば、建物を作る際、幅10.5㎝程度の「小径木」を組み合わせていくなどしていくのだ。建築を「小さな単位=粒子」の集合体と捉えることで、できあがったものをヒューマンスケールに収めることができる、と隈は考える。高知県梼原町の「雲の上の図書館」はその一例だ。

雲の上の図書館/YURURIゆすはら 2018 ⓒKawasumi・Kobayashi Kenji Photograph Office

直線的なフォルムの中に、意図的に「斜め」を加えることで「人に優しい建築」を作ることも出来る。例えば、雨宿りできる軒下は、人を「守る」印象を与えられるし、寺社の山門のように「上に向かう傾斜」を持った屋根は、人を「迎える」印象が与えられる。斜めになるのは屋根だけではない。壁や床も斜めになることがある。

オドゥンパザル近代美術館 2019 ⓒErieta Attali

建築は「固いもの」と思われがちだが、日本の伝統的な建築物の壁が水で溶いた土を塗ったものであるように、「やわらかい」素材で建物を作ることも可能だ。隈は「高輪ゲートウェイ駅」で、駅全体を覆う屋根の素材に膜を選んだ。その結果、駅構内は自然光で満たされることになった。

高輪ゲートウェイ駅 2020 ⓒ東日本旅客鉄道株式会社

隈の方法論での「時間」は独特だ。古くなった建物は、物としての在り方は弱くなるが、「物を弱くする事で公共空間が楽しくなり、公共空間が人間のものとなる」と隈は考えている。だから古くなった建物を用途変更しながら再生させる「リノベーション」の際、隈はあえて自転車の車輪を装飾に使ったり、経年変化しやすい木材を使ったりすることがある。

La Kagu 2014 ⓒSS Co., Ltd.

さて、建築家の丹下健三が1964年の東京オリンピック開催前の1961年に発表した「東京計画1960」は、建築家による都市の未来への大胆な提案だった。この伝説的な案への応答として、今回隈が発表するのが「東京計画2020(ニャンニャン) ネコちゃん建築の5656(ゴロゴロ)原則」だ。日本を代表するデザイン・イノベーション・ファームTakramとの協働により、ネコの生態をリサーチ。その分析の結果、「都市を自由に生き抜いている半ノラは、従来の公共空間対私的空間という18世紀のジャンバッティスタ・ノッリ(170156)が定めた分割を、自由に乗り越えている」と隈はいう。「ハコの隙間を生きる半ノラの方法こそ、僕らは学ぶべきである。それが《東京計画2020》であり、僕にとっての東京の今なのである」。ネコ目線で都市生活を見直すリサーチプロジェクト。コロナ禍の中で、どんな都市の在り方を提示してくれるのか――。

(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班)

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