【プレビュー】現代のリアルを迫力の1枚に 「世界報道写真展」 東京都写真美術館で6月から

世界報道写真大賞 一般ニュースの部 単写真1 位 マッズ・ニッセン(デンマーク、ポリティケン/パノス・ピクチャーズ)

展覧会名:世界報道写真展2021

会期:2021年6月12日(土)~8月9日(月・休)

会場:東京都写真美術館(東京・恵比寿ガーデンプレイス内、JR恵比寿駅より徒歩約7分、東京メトロ恵比寿駅より徒歩約10分)

休館日:毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館、翌平日休館)

開館時間:10:00~18:00(入館は閉館時間の30分前まで)

観覧料:一般1000円、大学・専門学校生800円、中高生・65歳以上600円ほか

詳しくは公式ホームページへ。

「世界報道写真展」は1956年から始まったドキュメンタリー、報道写真の展覧会。毎年、1月から2月にかけて、主に前年に撮影された写真を対象に「世界報道写真コンテスト」が開かれ、入賞した作品を世界各地の約120会場で展示する。年間を通じて総計約400万人が観覧し、世界最大級の写真展とされる。第64回の今回は130の国の地域のフォトグラファー4315人から、計74470点の応募があった。

最も優れた作品に対しては「世界報道写真大賞」「世界報道写真ストーリー大賞」が贈られる。今年の「世界報道写真大賞」には、マッズ・ニッセン氏(デンマーク、ポリティケン/パノス・ピクチャーズ)の作品が「初めての抱擁」が選ばれた。2020年8月5日、ブラジルのサンパウロにある介護施設で、新型コロナウイルス感染防止の「ハグカーテン」越しに、看護師のアドリアナ・シルヴァ・ダ・コスタ・ソウザさんに抱きしめられるローザ・ルジア・ルナルディさん(85歳)の姿を記録した。人々に勇気を与える一枚だろう。

「初めての抱擁」 世界報道写真大賞 一般ニュースの部 単写真1 位 マッズ・ニッセン(デンマーク、ポリティケン/パノス・ピクチャーズ)

 

視覚的な創造性および技術をもって、ジャーナリズム的に重要な問題をとらえた作品を表彰する「世界報道写真ストーリー大賞」には、アントニオ・ファシロンゴ氏(イタリア、ゲッティルポルータジュ)の「ハビビ」が選ばれた。

2018年12月、パレスチナのベイト・リマにて、自宅のソファに横たわるリディア・リマウィさんの姿。夫はイスラエルの観光大臣暗殺に関与した罪で25年の懲役刑に処されている。夫婦の間には体外受精で2013年に生まれた息子がいる。

「ハビビ」 世界報道写真ストーリー大賞 長期取材の部 1位 アントニオ・ファシロンゴ(イタリア、ゲッティルポタージュ)

 

主な入賞作品を紹介する。いずれも「あのニュースか」と思い起こさせる。現代社会の最前線を切り取った迫真の作品ぞろいだ。

「奴隷解放記念碑論争」 スポットニュースの部 単写真1位 イヴリン・ホックシュタイン(アメリカ)

2020年6月25日、アメリカ・ワシントンDCのリンカーン公園で、奴隷解放記念碑の撤去をめぐり、意見を異にする男性と女性。

 

「バッタ来襲と戦う東アフリカ」自然の部 組写真3位 ルイス・タト(スペイン)

2020年4月24日、牧草地を破壊するバッタの大群を追い払おうとするケニアのサンブル群落アーチャーズ・ポストの集落の長ヘンリー・レナヤサ。

 

「ベイルートの港湾で負傷した男性」 スポットニュースの部 組写真1位 ロレンツォ・トゥニョリ(イタリア、コントラストよりワシントンポストに提供)

2020年8月4日、ベイルートの港湾で大爆発が発生し、消防士が倉庫を飲み込む火災の消火にあたる中、爆発現場近くに立つ負傷した男性。

 

「ドクター・ペヨとミスター・アセン」 現代社会の問題の部 単写真2位 ジェレミー・レンピン(フランス)

2020年11月30日、フランスのカレーにあるカレー病院センターのセレーヌ緩和ケア病棟で、息子のイーサンさん(7歳)を抱きしめる転移がん患者のマリオンさん(24歳)。そして動物介在療法に用いられている馬のペヨ。

 

「浸水した島からキリンを救出」 自然の部 単写真1位 アミ・ヴィターレ(アメリカ、CNNに提供)

2020年12月3日、ケニア西部バリンゴ湖で、洪水に見舞われたロンギチャロ島から特製のはしけで安全な場所に輸送されるロスチャイルドキリン(ジラファ・カメロパルダリス・ロスチルディ)。

 

ニュースにまつわる情報が満ち溢れる現代。しかしプロが狙い定めた1枚の写真が訴える力は何物にも替え難い。コロナ禍に悩まされる日々だが、それ以外にも報じられるべき出来事は無数にある。私たちが生きる「今」を振り返る意味でも、ぜひみておきたい展覧会だ。

(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)

直前の記事

新着情報一覧へ戻る