【レビュー】1970~80年代のアニメブームの躍動を振り返る『「アニメージュとジブリ展」一冊の雑誌からジブリは始まった』松屋銀座(東京)

 「風の谷のナウシカ」など、数々のアニメ作品を手掛けてきたスタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫に焦点を当てた展覧会。展覧会では初公開となる「風の谷のナウシカ」のセル画や押井守監督作品「天使のたまご」の資料など、約200点以上を展示する。

会場の入り口

『「アニメージュとジブリ展」 一冊の雑誌からジブリは始まった』

会期 2021415日-55日(日時指定制)

会場 松屋銀座8階(東京都中央区銀座3-6-1

料金 一般1500円ほか

最新の会期など詳しくは、公式サイトや公式ツイッター

https://animage-ghibli.jp/

 

アニメージュと 鈴木敏夫

「アニメージュ」は、1978526日に創刊した日本初の本格的商業アニメ雑誌。声優やアニメーターなど、それまでは裏方として脚光を浴びることがなかったアニメ制作に関わる人たちにクローズアップし、アニメブームをリードした。同展では、鈴木敏夫が編集者として活躍していた時期(1970年代末から1980年代)を中心に、日本のアニメ文化を振り返ることができる。

 

鈴木敏夫は、1948年、名古屋市生まれ。大学卒業後、徳間書店に入社。「週刊アサヒ芸能」を経て、「アニメージュ」の創刊に参加する。同誌の副編集長、編集長を務めながら、「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」など、高畑勲・宮崎駿作品の製作に関わる。1985年にスタジオジブリの設立に参加、1989年からスタジオジブリ専従。 以後ほぼすべての劇場作品をプロデュース。現在、スタジオジブリ代表取締役プロデューサー。

 

会場は、4つのエリアにわかれている。各エリアの見どころを紹介する。

 

第1エリア アニメージュ誕生!「テレビまんが」からアニメブームへ

 

1970年代後半まで、アニメは、「テレビまんが」と呼ばれるなど、「アニメ」という言葉すら定かでなかった。その中で、アニメ好きな若者たちが、自分たちの手で同人誌を作り、ファン同士、時にはアニメ制作者と交流を深めていった。そうした熱気の中で、1978年「アニメージュ」が誕生した。展示では、こうした「アニメージュ」に先行して存在していた同人雑誌など関連出版物を展示する。

 

第2エリア アニメージュは私たちにすべてを教えてくれた ガンダムが変えた歴史

 

1978年の「アニメージュ」創刊の翌年、1979年4月からテレビアニメ「機動戦士ガンダム」の放送が開始された。アニメージュは雑誌をあげて全面的に応援。ガンダムを作っているのはどんな人たちなのかというファンの要望にこたえる形で、富野喜幸(由悠季)監督をはじめ、美術・デザインの担当者や声優たちを、繰り返し特集で取り上げた。

会場では、当時のアニメージュの誌面などを再現、初期のガンプラ(ガンダムのプラモデル)による名シーンのジオラマも展示している。

 

第3エリア 加速するアニメブーム 拡大するアニメージュ

 

「ガンダム」ブームなどを受けて「アニメージュ」は、活動の範囲を広げ、ファンとの大規模な交流イベントなど、雑誌の枠を超えて拡大していく。会場では、電車の中づり広告=下写真=や、ポスターや冊子など雑誌の付録などが展示されている。

 
 
第4エリア ナウシカへの道 一冊の雑誌から映画が誕生

 

鈴木敏夫は、「アニメージュ」の編集を通じて、高畑勲と宮崎駿の二人に出会う。
1982年2月号の原作マンガ連載開始を経て、84年に映画「風の谷のナウシカ」が誕生するまでを、初公開となるセル画をはじめ、レイアウトや原画、美術ボードなどの資料から振り返る。鈴木が力を入れた押井守監督作品「天使のたまご」の貴重な資料も展示されている。

 

「風の谷のナウシカ」セル画と色指定

また、このエリア内の撮影可能なコーナーでは、造形師の竹谷隆之さんが監修・制作を手がけた「風使いの腐海装束」の実物が展示されている。この装束は、実際に人が着用することも可能な衣装として作られているという。

 

展覧会では、約150点のグッズを販売。ナウシカのオープニングに登場するイラストがデザインされたゴブラン織りタペストリー(1万6500円)や、腐海がデザインされたツバメノート(495円)など展覧会オリジナルグッズも多数用意されている。

ゴブラン織りタペストリー© 1984 Studio Ghibli・H © 1986 Studio Ghibli © 1988 Studio Ghibli © 1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
ツバメノート© 1984 Studio Ghibli・H © 1986 Studio Ghibli © 1988 Studio Ghibli © 1989 角野栄子・Studio Ghibli・N

 

さらに、松屋銀座内の「MGカフェ」では、雲のような演出の「天空のカフェモカフロート」(1210 円)や「風の谷のモンブラン」(1210円)など、コラボメニューを販売している。

「天空のカフェモカフロート」

 

同展は、宮城県石巻市などでも開催される予定。

 

会期、チケットの購入方法など、詳しくは、同展の公式サイトや公式ツイッターで。

(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)