【レビュー】キャリア50年超の女性アーティスト16人 たゆまぬ情熱に圧倒される喜び 「アナザーエナジー展」 森美術館

新作を前に「ずっと面白いものに飛びついてきた。飽きることはない」と語る三島喜美代さん(4月21日、森美術館で)

展覧会名:アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人

会期:2021年4月22日(木)~9月26日(日)→2022年1月16日(日)に会期延長 ※会期中無休

開館時間:10:00~20:00 ※火曜日のみ17:00まで。※ただし11月23日(火・祝)、12月28日(火)、1月4日(火)、1月11日(火)は20:00まで。(最終入館は閉館の30分前まで)

入館料:一般の平日料金が当日窓口2000円、オンライン予約1800円、土・日・休日料金が当日窓口2200円、オンライン2000円ほか

詳しい情報は同館ホームページへ。

登場するのは16人の女性。戦後動乱期の1950年代から70年代にかけて創作活動をはじめ、激動の時代に屈することなく現在に至るまで世界各地で制作を続けている人を集めた意欲的な試みだ。キャリアは50年超、各大陸からバランスよく選ばれた顔ぶれで、年齢は71歳から105歳という大ベテランたち。作品はいずれもパワフルで、明確なメッセージがあふれる。年齢を感じさせないどころか、むしろ見る側が鼓舞される逞しさに貫かれている。

企画の背景には近年のダイバーシティ(多様性)重視や、彼女たちの作品がマーケットでも高く評価されるようになったことがある。数年前から本展の構想を温めてきたという片岡真実館長は「女性性、を中心に据えた展覧会ということではなく、両義的な企画。フェミニズムを強く打ち出す人もいるし、ジェンダーには関係ない人もいる。一方、共通するのは弱々しいイメージが全くないこと。作品に触れれば、ぶっ飛ばされるような迫力があります」と説明する。その通りだろう。「ぶっ飛ばされる」作品の一部を紹介する。

フィリダ・バーロウ 《アンダーカバー2》2020年
フィリダ・バーロウ 撮影:Cat Garcia

1944年イギリス生まれ。展示会場の冒頭に置かれた巨大な作品。設営はZOOMで作家とやり取りしながら進めた。会場のスペースに限りがあり、「もうオブジェを積み重ねるのは厳しい」とスタッフが難色を示しても、バーロウさんは「すべて載せて」とあきらめなかったという。

スザンヌ・レイシー《玄関と通りの間》2013/2021年
スザンヌ・レイシー 撮影:Brittney Valdez

1945年、カルフォルニア州生まれ。フェミニズムをはじめとする社会的課題に取り組む。作品「玄関と通りの間」では、ニューヨークのブルックリンの一角で、365人の参加者が女性問題について話し合い、市民が傍聴する模様を3面プロジェクションの記録映像にした。魂をぶつけるようなやり取りに引き込まれる。

ロビン・ホワイト&ルハ・フィフィタ《大通り沿いで目にしたもの》(「コ・エ・ハラ・ハンガトゥヌ:まっすぐな道」シリーズより)2015-16年
ロビン・ホワイト 撮影:Harry Culy 画像提供:McLeavey Gallery, Wellington

1946年、ニュージーランド生まれ。キリバス、フィジー、トンガ、日本などの女性たちとコラボレーションの作品を手掛ける。西洋近代以降の個人主義的な価値観からの解放ともいえる。

リリ・デュジュリー《無題(均衡)》1967年
リリ・デュジュリー 撮影:Rita Vereecke

1941年、ベルギー生まれ。数少ない要素による詩的な表現が印象的。六本木ヒルズからの眺望と組み合わせた展示の妙も楽しい。

センガ・ネングディ《パフォーマンス・ピース》1978年
センガ・ネングディ 撮影:Ron Pollard

1943年、イリノイ州生まれ。ストッキングを用いた作品が代表的。自身が妊娠と出産を経験したことで、身体の弾性に興味を持ったのがきっかけという。

アンナ・ボギギアン《シルクロード》2021年

1946年、カイロ生まれ。世界各地を訪問し、その土地の文化や歴史、社会状況を生かして作品を制作する。出品作は日本の養蚕や自動車産業にも言及する。

宮本和子《黒い芥子》1979年
宮本和子 撮影:Christian Siekmeier

1942年、東京生まれ。ニューヨークを拠点に活動を続ける。ギャラリーも立ち上げ、多様な人種、民族、ジェンダーのアーティストに発表の機会を提供している。

カルメン・ヘレラ《赤い直角》2017-2018年
カルメン・ヘレラ 撮影:Jason Schmidt 画像提供:Lisson Gallery

1915年、ハバナ生まれ。ニューヨーク在住。16人の参加作家中、最高齢の105歳。一貫して、直線と限られた色彩による抽象作品にこだわり続ける。

ベアトリス・ゴンザレス《縁の下の嘆き―携帯電話を持って嘆く》2019年

1932年、コロンビア生まれ。自国の厳しい政治状況を踏まえた作品の数々。抑圧される民衆の嘆き、憤りの表現に共感する。

ベアトリス・ゴンザレス 撮影:Revista Avianca

三島喜美代《作品21-A》2021年
三島喜美代 撮影:飯川雄大 画像提供:森美術館

1932年、大阪生まれ。開会を前に会場で取材に応じ、「命を削っているけど、苦にならない。体が動かなくなっても作品が仕上がればいい」。

ヌヌンWS《織物の次元1番》2019年
ヌヌンWS Nunung WS

1948年、インドネシア生まれ。地域の文化、習俗、宗教など豊かな背景と研究を感じさせる抽象表現の数々。

コロナ禍で社会が根底から揺らぐ昨今だが、彼女たちは恐らくそれも泰然として受け止め、創作に生かすのだろう。揺るがない情熱に触れる喜びを味わえる展示だ。

(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)

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