【レビュー】明かされる巨匠のもうひとつの顔 フランシス・ベーコン展 渋谷区立松濤美術館

20世紀のイギリスの巨匠フランシス・ベーコン(190992)の多彩な活動に光を当てた「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる-リース・ミューズ7番地、アトリエからのドローイング、ドキュメント-」が4月20日から東京・渋谷の松濤美術館で始まった。

展覧会名:フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる-リース・ミューズ7番地、アトリエからのドローイング、ドキュメント-

会期:2021年4月20日(火)~6月13日(日)

開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後530分まで)

休館日:月曜日(ただし5月3日は開館)、5月6日(木)

場所:渋谷区立松濤美術館(京王井の頭線神泉駅徒歩5分、渋谷駅からバス、徒歩15分)

入館料:一般1000円、大学生800円、高校生・60歳以上500円、小中学生100円(土・日・祝は無料)*渋谷区民は割引有り

土・日・祝と最終週は日時指定制、詳細は同美術館ホームページ

ベーコンは1940年代から、叫び、あるいは歪められた人物像や画面に漂う不穏な雰囲気が強烈な印象を与える一連の絵画を発表し、有名になった。そこには、古典名画や報道写真から引用されたモティーフが大きく変容されて取り込まれ、絵画世界を一層暗示的なものにしていた。

《Xアルバム9 裏─叫ぶ教皇》1950年代後半~60年代前半 油彩・コンテ・鉛筆、紙 ©The Barry Joule Collection
《Xアルバム3 表》1950年代後半~60年代前半 油彩・コンテ・チョーク、紙、フォトモンタージュ ©The Barry Joule Collection

生前のベーコンは、絵画のための準備のドローイングやスケッチはしないと、語っていた。ところが、死後ロンドンのリース・ミューズ7番地のアトリエに残されていた膨大な遺留品の調査では、その言葉とは相反するような資料が発見され、秘められたベーコンのもう一つの顔が明らかになった。

こうした中、アトリエの近所に住み運転や大工仕事などベーコンの身の回りの仕事をしていたバリー・ジュール氏がベーコンの死の直前に千点を超えるドキュメントを寄贈されていたことを死後4年たって明らかにした。

そこには「Xアルバム」と呼ばれるドローイング、「ワーキング・ドキュメンツ」と称されている多くの新聞や雑誌の紙片上に書き込まれたイメージなどが含まれ、それまでベーコン自身が創り上げてきたセルフイメージを覆すような新たな資料の出現となり、研究者の間では様々な意見が交わされてきた。
本展では、このバリー・ジュール・コレクションの約130点を日本で初公開している。

《Xアルバム5 表─ファン・ゴッホ・シリーズ》1950年代後半~60年代前半 油彩・コンテ・チョーク、紙 ©The Barry Joule Collection

表紙に「X」のマークが描かれていた古いアルバムに描かれている「Xアルバム」には、ベーコンが1950年代に制作した油彩画の連作《ファン・ゴッホの肖像のための習作》を想起させるゴッホのイメージや1950年頃から20年以上にわたって描き続けた教皇のイメージなどがある。ただ、こうした「Xアルバム」のドローイングが油彩画の準備段階として描かれたものか、完成後の画面を再現したものか、あるいは全く独立した画面として構成されたものなのか・・・などは不明だ。

《自転車選手の写真上のドローイング》1970~80年代頃 モノクロ写真掲載紙へのグワッシュのペイント、コンテ、ペン ©The Barry Joule Collection

「ワーキング・ドキュメンツ(作業資料)」と呼ばれる資料は、膨大な数の新聞や雑誌の紙片からなり、そこにはしばしば書き込みや変形が加えられている。

《フランシス・ベーコンの写真上のドローイング》1970~80年代頃 モノクロ写真掲載紙へのペイント ©The Barry Joule Collection

ベーコンは大変な読書家として知られ、彼の死後、多くの蔵書がそのアトリエに残されていた。バリー・ジュール・コレクションの中には生前、アメリカの写真家リチャード・アヴェドン(19232004)やフランスの詩人で美術評論家のミシェル・レリス(190190)から献呈された書籍も含まれ、その交友関係を物語っている。こうした書籍にも書き込みが加えられている。また、1930年代頃と思われる油彩画小品や、参考作品としてベーコンがサインを書き込んでいる展覧会ポスターも展示している。

(読売新聞事業局美術展ナビ編集班)

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