【スペシャルレビュー】日本史上有数の大事件から800年 注目の「承久の乱」展を担当学芸員が語る 京都文化博物館

京都文化博物館の長村さん(京都市中京区の同博物館で)

日本史の授業で誰もが学ぶ一大事件が今年800年の節目を迎えたのを機に、その歴史的意義に迫る特別展「よみがえる承久の乱―後鳥羽上皇VS鎌倉北条氏―」が注目を集めている。同展を担当した長村祥知学芸員に見どころを案内してもらった。

※本展は、新型コロナウイルス感染拡大による、緊急事態宣言発令のため、閉幕となりました。

【承久の乱】12世紀における院政の展開、1180年代の内乱、そして東国における鎌倉幕府の樹立を経て、13世紀初頭には後鳥羽上皇が列島を統べる体制が成立した。しかし承久3年(1221)、前代未聞の事件が起きる。後鳥羽上皇は北条氏率いる鎌倉御家人に合戦で敗れ、隠岐に流された。この承久の乱を機に鎌倉幕府優位のもとで、公家と武家が併存する時代が訪れた。同展では近年、進展が著しいこの時期の研究成果を踏まえ、皇族、貴族、武士、僧侶などこの時代を生きた人々の息吹を伝える。古文書、肖像画、刀剣、仏画や、この時代を描いた絵画類から日本史上の重要事件の深層に迫る。

長村学芸員も「これまで担当した展覧会の中で、最大の反響で驚いている」と語る本展。目玉のひとつは約80年ぶりの公開となる「承久記絵巻」(全6巻)だ。承久3年(1221)5月、後鳥羽上皇が鎌倉幕府の執権、北条義時の追討命令を発し、承久の乱は勃発した。「承久記絵巻」は当時の経緯を描いた現存唯一の絵巻とされる。巻第2には、2022年の大河ドラマでも主役となる義時が登場している。長村さんは「義時は有名な人物ですが、この絵巻が見つかるまで肖像は確認されていなかったのです。意外ですよね」と話す。

この絵巻は和歌山・高野山の龍光院が所蔵し、平家物語などと並ぶ4大軍記物語の絵巻だが、昭和14年(1939)に現在の京都国立博物館で展示されたのを最後に、所在が不明になっていた。

2019年に個人が所蔵するとの情報があり、同博物館で調査したところ、箱の墨書や巻物の内容から「承久記絵巻」と確認された。絵巻はそれぞれ縦約33センチ、長さ約12~16メートル。宇治川の合戦や、敗れた後鳥羽上皇が御所を退くシーンなど、全36場面で構成されている。

長村さんは「学生の頃から、歴史や美術の専門家に会う度に、承久の乱に関わる資料、特に『承久記絵巻』の情報があったら教えてくださいとお願いしていました。知人からの情報で再発見できたときの感動は、言葉になりませんでした」と当時を振り返る。

見逃せない展示物は絵巻以外にもたくさんある。後鳥羽上皇が作刀したと伝わる重要文化財「太刀 菊御作」(京都国立博物館蔵、展示は425日まで)も必見だ。長村さんは「後鳥羽院の武芸への関心や、美術工芸品としての価値という点で、後鳥羽院を象徴する太刀です」と解説する。

会場全体に睨みをきかせる迫力満点の戌神像(神奈川・鎌倉国宝館蔵)。ひときわ目を引く。

この像もある有名な事件に関係している。建保7年(1219)、3代将軍の源実朝が鶴岡八幡宮で甥の公暁に暗殺された際、義時は従者として八幡宮へ同行する予定だった。ところが直前に白い犬を見て気分が悪くなり、義時は欠席。危うく難を逃れたと鎌倉幕府の歴史書『吾妻鏡』に記される。この像はその霊験ある戌神の姿を伝えているという。「お像を360度ぐるっと見られるのは貴重な機会です」と長村さん。来館者にも何かご利益がある?

このほか後鳥羽上皇直筆の和歌や、藤原定家の明月記、壮大な屏風絵、源頼朝の肖像画の模本など展示品は多彩だ。様々な角度から日本史上の重要事件に迫っていく。

最後にグッズショップへ。長村さんのおすすめはやはり図録。「新発見資料や初掲載資料が盛りだくさんです。図版は可能な限り大きく掲載し、解説文も充実しています」と紹介してくれた。

多彩なジャンルのオリジナルグッズも見逃せない。

 

特別展 よみがえる承久の乱―後鳥羽上皇VS鎌倉北条氏―

会期:2021年4月6日(火)~5月23日(日)

※本展は、新型コロナウイルス感染拡大による、緊急事態宣言発令のため、閉幕となりました。

休館日:月曜日(5月3日は開館)

開場時間:10:00~18:00(金曜日は10:00~19:30)入場時間は閉室の30分前まで

入場料:一般1500円、大高生1100円、中小生500円ほか

詳しくは同博物館のホームページへ。

(読売新聞大阪本社文化事業部)

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