【プレビュー】非常時、模索を続けたアーティストたちの実像 「さまよえる絵筆―東京・京都 戦時下の前衛画家たち」展 板橋区立美術館で3月27日から

さまよえる絵筆―東京・京都 戦時下の前衛画家たち
会期:2021年3月27日(土)~5月23日(日) (月曜休館、5月3日は開館、5月6日は休館)
会場:板橋区立美術館(東京都板橋区、都営三田線西高島平駅から徒歩約13分、都営三田線高島平・東武東上線成増駅からバス「区立美術館」下車)
観覧料:一般650円、高校・大学生450円、小・中学生200円(土曜日は小中高校生は無料)
先の大戦のさなか、東京や京都を拠点とする前衛画家たちが厳しい時代状況の中、新たな表現を求めて模索を続けた姿を追う意欲的な試みだ。

1930年代後半、日本の前衛画壇は最盛期を迎える一方、表現の自由は奪われつつあった。また美術界では日独伊の枢軸国の連携強化、太平洋戦争開戦などを契機に、イタリアのルネサンス絵画、日本の埴輪や仏像、庭園など前衛とは対照的な作品の紹介が盛んになった。
こうした状況下で、東京と京都の前衛画家の中でも、西洋古典絵画を思わせる技法で描かれた人物画や静物画、日本の埴輪や仏像、石庭などをモチーフにした作品などを展覧会に出品する動きが出てきた。

このため戦時下の前衛絵画は弾圧された、と見なされることもあった。だが、作品を丹念に見ていくと、彼らが東西の伝統的な技法や題材に立ち戻ることで自身の立ち位置を確認し、時代のリアルな感覚を伝えるために新たな表現を模索していたことが分かってくる。

同展では福沢一郎、靉光、麻生三郎、寺田政明、杉全直、吉井忠、北脇昇、小牧源太郎、長谷川三郎、難波田龍起ら東京・京都を拠点に活躍したアーティストの作品を幅広く展示。戦時下の前衛画家たちの作品を当時の資料とともに見ることで、東京・京都のふたつの都市で育まれた前衛の流れを確認していく。
詳しくは同美術館のホームページへ。
(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)