特別展「京(みやこ)の国宝」 京都国立博物館で9月12日まで 「梵天坐像」「風神雷神図屏風」「御堂関白記」「稲葉江」 など国宝72件

日本博/紡ぐプロジェクト 特別展「京(みやこ)の国宝―守り伝える日本のたから―」
会期:2021年7月24日(土)~9月12日(日) ※月曜休館、8月9日(月)は開館、8月10日(火)は休館
※前期=7月24日(土)~8月22日(日)
※後期=8月24日(火)~9月12日(日)
会場:京都国立博物館(京都市東山区、JR・近鉄京都駅からバス「博物館・三十三間堂前下車」、京阪七条駅から東へ徒歩7分)
観覧料:一般1600円、大学生1200円、高校生700円(事前予約優先制)
「京の国宝」展はもともと昨年春、京都市京セラ美術館で開催予定だったが、コロナ禍で中止。改めて会場を京都国立博物館に移し、1年遅れで実現する。政府が日本の文化芸術の振興、発信を図る「日本博」の一環で、同時に文化庁、宮内庁、読売新聞社が官民連携で進める「紡ぐプロジェクト」のひとつとして開催される。会場が大きくなったこともあり、当初の計画から内容を拡充し、国宝72件、重要文化財8件など約120件の名宝を紹介。夏の都で眼福な品々をたっぷり楽しめる。
全体は4章構成。京都にゆかりのある品を基本に、①時代ごとの歴史と美術を象徴する②日本文化にとっての「京都」を伝える③「国宝」をより深く知る上で役立つ④文化財を守り伝える営みの大切さを伝える――の4つの視点で選りすぐりの名宝を展示する。以下、テーマに沿って主な作品を紹介する。
〈第1章 京都―文化財の都市>
現在、全国で1万件を超える国指定の美術工芸品のうち、およそ6分の1以上が京都盆地とその周辺に広がる京都府下に伝えられている。京都と文化財の深いつながりを視野に、「国宝」が生まれ出るまでの歩みを振り返る。

貴重な文化財のうち、特に歴史上、芸術上たぐいまれな価値を持つものを国宝や重要文化財に指定し、保全を図っている。この制度の基礎である文化財保護法は1950年(昭和25)に制定され、70年あまりの間に徐々に指定を拡充させてきた。絶大な権力を誇った藤原道長の日記「御堂関白記」は1951年6月9日、戦後最初の国宝となったものの一つ。世界最古の自筆日記として2013年にはユネスコ「世界の記憶」にも選ばれている。当時の状況を伝える第一級の史料。

<第2章 京の国宝>
文化財保護法の制定から70年余。今日までに重要文化財となった美術工芸品は10808件(うち国宝は897件)=※令和3年3月現在=に上る。本章ではその中でも京都の土地や人ゆかりの国宝の数々を紹介する。「風神雷神図屏風」も期間限定で登場する。








<第3章 皇室の至宝>
我が国の文化財保護で、行政とともに大きな役割を果たしてきたのが京都にゆかりの深い皇室だった。明治維新に伴う混乱で、危機に瀕した東大寺や法隆寺などの社寺が最も重要な伝来品を皇室に献納し、援助を受けてその姿を保ったことはよく知られている。歴史と文化の守護者である皇室ゆかりの至宝を紹介する。


<第4章 今日の文化財保護>
文化財を後世まで確かに守り伝えるためには、様々な課題がある。京都を中心としつつ、全国にも目を向けて「調査と研究」「防災と防犯」「修理と模造」という視点で取り組みを紹介する。関東大震災で一部を失った狩野長信の「国宝 花下遊楽図屏風」や、戦後最初の国宝指定を受けながら、一時行方不明になったことで有名な刀の「名物 稲葉江」などを展示。文化財保護のリアルを考えてもらう。
質量ともに充実のラインナップで、「国宝」の重みと、それを生み出し支えてきた京の町の果たしてきた役割を実感する。かけがえのない文化財を後世に伝えていくことの大切さをかみしめる展示になるだろう。詳しくは公式ホームページへ。
(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)