【レビュー】最後の将軍の素顔、リアルに 「徳川慶喜展」 久能山東照宮博物館

徳川慶喜展
久能山東照宮博物館( 静岡市駿河区根古屋、日本平山頂より日本平ロープウェイ5分、または久能山下バス停より徒歩約20分、石段1159段あり)
2021年2月11日~4月6日(火)、会期中無休
開館時間 9:00~17:00(最終入館時間16:45)
入場料:大人(高校生以上)400円、小人(小学生・中学生)150円。
(久能山東照宮拝観とのセットは大人800円、小人300円)
「徳川慶喜展」が4月6日まで、静岡市の久能山東照宮博物館で開かれている。
十五代将軍の慶喜は、今年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公・渋沢栄一と切っても切れない仲。栄一の窮地を救い、幕臣としてとりたて、弟・徳川昭武の訪欧に随行させて世界を見るきっかけを与えた。慶喜は明治維新で将軍を退いた後、静岡で30年近く暮らした。

葵立涌蒔絵陣笠(あおいたてわくまきえじんがさ)は、細長く後ろの裾を伸ばした形が特徴だ。三葉葵丸紋が蒔絵であしらわれている。頭頂部に白い毛の頭建(ずたて)がつく。馬に乗った時に、白いフサフサが美しく揺れたのだろう。明治30年(1897年)、慶喜が静岡を離れるにあたって同宮に奉納した。
菊桐紋絲巻太刀拵は、菊紋と桐紋を蒔絵で配した美しい拵。禁門の変での出兵に対して、孝明天皇から拝領したとされる剣の拵だ。

「徳川慶喜像」は30歳の時に撮影された肖像写真をもとに、明治期に描かれた油彩。強固な意思を持った雰囲気がリアルに描かれている。大河ドラマで慶喜役の草彅剛さんが演じる表情と重なって見えた。
展示品からは将軍を退いた後の多趣味な生活も垣間見える。釣り道具箱には、小さな引き出しの中に「フナ」と書かれた紙が入っており、几帳面そう。

慶喜が愛用したカメラ2台や自身が撮影した久能山の風景写真もある。赤い軍帽を展示したケースには、慶喜の馬上の姿の写真があった。久能山東照宮博物館の宮城島由貴学芸員は「慶喜公は写真を撮るのも撮られるのも好きだったそうです」と話す。

このほか、幼少期の力強い書や、謡曲のけいこに励む旧幕臣をユーモラスに描いた「間宮魁像」も印象的だった。約30点の展示品はバラエティに富み、大河ドラマを見る楽しみが増える展覧会だった。
問い合わせは久能山東照宮博物館( 054-237-2437)、詳しくは同博物館のホームページへ。
(読売新聞西部本社事業推進室事業部 境野智高)