【レビュー】質量充実、攻めの展示に活力もらう 「STEP AHEAD 新収蔵作品展示」 アーティゾン美術館

「STEP AHEAD:Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」
2021年2月13日(土)~5月9日(日) →(~9月5日(日)まで、に会期延長)、月曜休館、5月3日は開館
アーティゾン美術館(東京都中央区、JR東京駅、東京メトロ京橋駅、東京メトロ・都営地下鉄日本橋駅から徒歩5分)
入館料:ウェブ予約チケット1200円、当日チケット(窓口販売)1500円、学生無料(要ウェブ予約) ※ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ、窓口で当日チケットを販売
都内でも有数のコレクションを誇るアーティゾン美術館が、新しいコレクションを一堂に紹介する催し。未公開の新収蔵作品92点を含む201点と、芸術家の肖像写真コレクションから87点からなる。コロナ禍に負けない意気込みで、タイトル通り「前進を続ける」施設の姿勢を打ち出している。日本、海外とも近現代作品を中心に見どころも豊富だ。
<藤島武二の《東洋振り》と日本、西洋の近代絵画>

同美術館を運営する石橋財団のコレクションは多岐にわたるが、創設時からその中心となってきたのは青木繁や藤島武二ら日本近代洋画の黎明期を代表する画家たちの作品と、印象派以降のフランスを中心とする西洋近代美術。新たにコレクションに加わった《東洋振り》は、この時期、中国服を着た横向きの女性像を次々に発表した藤島の作品のひとつ。構図やモチーフの選択に「東洋と西洋の統合」を図ろうとした藤島の思いが見える。

有名作品がずらり、の冒頭のコーナー。ルノワールやモリゾ、ピカソらの作品も楽しめる。
<キュビスム>
20世紀初頭の運動で、抽象絵画の発生にかかわるキュビスムの画家たちの作品にも注目作が新登場。

<デュシャンとニューヨーク>
戦後の日本、ヨーロッパ、アメリカの絵画と立体作品を充実させた。

<抽象表現主義の女性画家たちを中心に>
第二次大戦後にニューヨークで生まれ、国際的に影響を与えたアメリカの前衛芸術運動である抽象表現主義。ジャクソン・ポロックやウィレム・デ・クーニングらが活躍する一方、女性画家たちも大きな足跡を残したことで注目される。


大型の作品が揃い、思わず足が止まる迫力の作品が揃う。

<具体の絵画>
吉原治良を中心に若い作家たちによって1954(昭和29)年に結成された具体美術協会。日本の前衛芸術を推し進め、内外で高い評価を受けた。こちらのコレクションも充実している。


<アンリ・マティスの素描>
20世紀を代表する作家、アンリ・マティス(1869-1954)。極限まで対象を単純化したドローイングを、生涯を通じて制作している。

そのほかにも「カンディンスキーとクレー」「倉俣史朗と田中信太郎」「瀧口修造と実験工房」「第二次大戦後のフランスの抽象美術」「オーストラリア美術―アボリジナル・アート」「芸術家の肖像写真コレクション」など充実のコーナーが目白押しで、同館の底力を見せつけられる。詳しくは同館ホームページへ。
(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)