【プレビュー】 美しい紙の世界 企画展「彩られた紙 -料紙装飾の世界- 」展 大倉集古館(東京・港区)で4月6日開幕

料紙とは一般に書に用いる紙のこと。湿らせて叩くことで滑らかにした「打紙」や文字に変化を与えるために凹凸に加工した紙、色紙に金銀を蒔いて装飾したものなど、文字や絵をより美しく見せるためにさまざまに加工が施された「彩られた紙」。展覧会では奈良時代の荘厳な写経である「賢愚経(大聖武)」、王朝貴族の栄華を伝える「古今和歌集序」や「貫之集下(石山切)」、江戸絵画として再評価されつつある大津絵、「平家納経」の料紙を精巧に再現した田中親美の模本などを、マイクロスコープの拡大画像とともに紹介している。人々の願いや美意識が反映された各時代の料紙装飾から、そこに託された祈りや夢、美の移り変わりを探る。
企画展「彩られた紙 -料紙装飾の世界- 」展
大倉集古館(東京・港区)
会 期 4月6日(火)~6月6日(日)
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日(5月3日[月曜・祝日]開館、5月6日[木]休館)
入館料 一般1000円ほか 中学生以下無料
◆ギャラリートークも開催 担当学芸員による展示室での解説
4月20日(火)、5月11日(火)、6月1日(火) いずれも午後2時から
参加費無料。ただし「彩られた紙」展の入場券が必要。予約不要。
地下鉄南北線・六本木一丁目駅中央改札口より徒歩5分、同日比谷線・神谷町駅より徒歩7分 、同銀座線・溜池山王駅か虎ノ門駅より徒歩10分
詳しくは同館ホームページへ

特種東海製紙株式会社蔵
料紙の表面は立体的で、斜めから光線を当てたりマイクロスコープで拡大すると、思わぬ発見がある。「賢愚経断簡(大聖武)」は雄渾な筆跡から聖武天皇の筆と伝えている。料紙は香木を漉き込んだと言われる荼毘紙(だびし)。マイクロスコープで見ると、原料であるニシキギ科のマユミの凝固した粒と、白くするための胡粉(ごふん)や微細な金箔が見える。奈良・天平時代のわずか9年間しか使われなかったと考えられ、高貴な身分の人が使用した特別な料紙。

特種東海製紙株式会社蔵
「貫之集下(石山切)」は「本願寺三十六人家集」より分割された「貫之集下」の冊子本の断簡。黄と藍で染められた右側の緑色の料紙の表面には1ミリほどの異物がある。これは植物の断片で、紙を染めた時の染料に含まれていたと考えられる。今後、研究が進みDNAを解析することで産地が分かる可能性がある。また左側の紙は中国の唐紙を模倣して作られた和製唐紙。

大正9(1920)年に厳島神社の依頼で、日本美術研究家で書家、料紙製作者の田中親美(1875~1975)による「平家納経」模本の制作が始まり、5年かけて模本全33巻が完成した。さらに原本の当初の姿を復元した数組の模本が制作され、そのうちの1組が大倉集古館の所蔵となる。「平家納経」は大量の金銀を使い豪華さを極める。料紙に関しては、紙の下に型文様の版木を置いて上から硬いもので文様を摺りだす空摺りで銀の砂を撒いた国産の紙に、天女や孔雀の文様などを磨きだすという他には見られない技法を用いている。

平家納経「法華経法師功徳品」の見返しには白象に乗った普賢菩薩像が描かれている
(読売新聞事業局美術展ナビ編集班・秋山公哉)