【プレビュー】贅を尽くした人形を愛でる喜び 「岩﨑家のお雛さま」展 静嘉堂文庫美術館

五世大木平藏「岩﨑家雛人形」のうち内裏雛 昭和時代初期(20世紀)

岩﨑家のお雛さま

2021年2月20日(土)~3月28日(日)、月曜休館

静嘉堂文庫美術館(東京都世田谷区岡本、東急二子玉川駅、小田急成城学園前駅からバス)

入館料:一般1000円、大学生・高校生・障がい者手帳をお持ちの方(同伴者1名含む)700円、中学生以下無料

静嘉堂文庫美術館は、三菱創業者の岩崎彌太郎の弟で第2代社長を務めた岩﨑彌之助と、第4代社長の小彌太の父子による蒐集品を所蔵する。国宝7点、重要文化財84点を含む豪華なコレクションで知られる。開館30周年を迎える2022年、展示ギャラリーを東京・丸の内の明治生命館へ移転するため、現在の美術館で行われる展覧会は本展と、「旅立ちの美術」展(4月10日~6月6日)のあと2回となった。この季節ならではの催しで、閑静な住宅街の一角に佇むおなじみの施設を見納めしておきたい。見どころを紹介する。

<雛祭りのはじまり>

江戸時代の雛祭りの模様を当時の人形や版本で振り返る。五節句のひとつ「上巳の節句」にお雛様を飾る風習は江戸時代に広く普及した。ただし、初期の雛人形には紙製の「立雛」のような質素なものが多かったようだ。段飾りも当時はなかった。

「立雛」江戸時代後期(18~19世紀)

享保雛は江戸時代中期の享保年間に、町方にはやった面長の内裏雛。豪華な衣装をまとい、ボリュームのある身体をしている。

「享保雛(きょうほうびな)」江戸時代後期(18~19世紀)

<岩﨑家のお雛様>

岩﨑家の雛人形は、第四代社長、岩﨑小彌太(1879~1945)が孝子夫人(1888~1975)のために誂えたもの。京都の人形司・丸平大木人形店に依頼した。「丸平」は谷崎潤一郎の「細雪」にもその名が登場する名店で、当主は代々、「大木平藏」を襲名する。岩崎家の雛人形の内裏雛は、まん丸いお顔が愛らしい幼児の姿(稚児雛)で作られている。その頭(かしら)は名人・十二世面屋庄次郎(通称「面庄」)によるもので、当時の技術の高さを示す貴重な美術工芸品といえる。これらの雛人形は雛祭りの際、東京・麻布にあった岩﨑家の鳥居坂本邸に飾られ、訪問者の目を楽しませたことだろう。

五世大木平藏「岩﨑家雛人形」のうち内裏雛 昭和時代初期(20世紀)

夫婦の仲睦まじさを象徴する鴛鴦文(えんおうもん)があしらわれた黄丹袍(おうにのほう)は、皇太子の装束を連想させる。女雛の表着(うわぎ)は紅梅地に牡丹文を織り出したもの。

五世大木平藏「岩﨑家雛人形」のうち三人官女 昭和時代初期(20世紀)

内裏雛に仕える三人官女。向かって右から「長柄銚子」「嶋台」「加銚子」を持っている。

五世大木平藏「岩﨑家雛人形」のうち五人囃子 昭和時代初期(20世紀)

武家の正式な芸能である能の地謡(じうたい)と囃子方(はやしかた)を模したのが五人囃子。囃子方は笛、小鼓、大鼓(大革)、太鼓で構成される。

「菱台」昭和時代初期(20世紀)

五段の菱餅をのせるひし形の台。岩﨑家の替紋、花菱文は金蒔絵で表現されている。菱餅の配色や重ね方は地方により異なるという。

<春を感じる名品の数々>

同美術館の豪華なコレクションから、春を感じさせる名品をチョイスした。眼福の品々を楽しめる。

国宝「曜変天目」建窯 南宋時代(12~13世紀)
重要文化財 野々村仁清「色絵吉野山図茶壺」江戸時代前期(17世紀)
「吉野山蒔絵十種香箱」江戸時代中期(18世紀)
平福百穂「鴨」大正3年(1914)

静嘉堂の庭園では梅も楽しめる。世の雑事をしばし忘れて過ごしたい。同展について詳しくは同美術館ホームページへ。

(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)

 

 

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