大震災から10年 被災地の「祭り」、その重い意味  入江泰吉記念写真賞受賞 岩波友紀「紡ぎ音」展 2月20日から

崎浜念仏剣舞 2015.8 (岩手県大船渡市)

第4回入江泰吉記念写真賞受賞 岩波友紀「紡ぎ音」展

入江泰吉記念奈良市写真美術館(奈良市、近鉄奈良駅・JR奈良駅からバス)

2021年2月20日(土)~3月28日(日)

観覧料金:一般500円、高校・大学生200円(高校生のみ土曜日無料)、小・中学生100円(土曜日無料)

奈良・大和路を半世紀にわたって撮り続けた入江泰吉(1905-1992)の功績を記念し、写真文化の発展と新たな写真家の発掘を目指して2年に一度開催される「入江泰吉記念写真賞」。今回は103人の応募作品から、東日本大震災の被災地で今も盛んに行われている「祭り」を追ったドキュメンタリーが大賞にあたる記念写真賞を受賞した。受賞作は被害が甚大だった岩手、宮城、福島の沿岸地方の祭りを取り上げ、被災者と祭りの関わりを追う中で、被災地にとって本当の復興とは何なのか、を問い続ける内容だ。

歌津の三嶋神社例祭 2018.5 (宮城県南三陸町)

受賞者の岩波友紀(いわなみ・ゆき)さんは1977年、長野県生まれ。全国紙のスタッフフォトグラファーを経てフリーの写真家。現在は福島県に在住し、東日本大震災と福島第一原発事故のその後をテーマに作品制作を続けている。

受賞者の岩波友紀さん
村上の田植踊 2019.3(福島県南相馬市)

受賞作について、審査員で同美術館長の百々俊二さん(写真家)は「被災地である福島県から岩手までの太平洋沿岸の街々の祭りの写真群である。その眼は、のびやかに、しなやかに死者の生涯の地に留まるという魂と、寄り添うように帰る地を探す巡礼のように感じた。多くの方々に本気で届けたい作品と思った」とコメントを寄せた。またやはり審査員の剣持常幸・日本経済新聞社大阪本社映像写真部長は「被災地にこんなにも多くの祭があることを教えてくれます。祭りとともに生きてきた歴史と文化がそこにある証しでもあります。津波に流されたまちでは、ふるさとの風景はすっかり変わってしまいました。それでも祭があるからこそ人々が集い、アイデンティティーを再確認しているように感じます」とコメントしている。

臼澤鹿子踊 2015.9(岩手県大槌町)
大國魂神社例大祭 2019.5(福島県いわき市)

岩波さんが祭りに惹きつけられたのは10年前の夏という。「祭りは独特の勢いがあり、復興の象徴にもなりやすいが、そういった表面的なことだけでは語れない何かがあるように感じた」と話す。

八幡鹿舞 2017.9 (岩手県山田町)
うごく七夕まつり 2016.8(岩手県陸前高田市)

実際、取材を続けていくと徐々に違う面が見えてきた。被災地の多くで暮らしぶりは厳しく、原発被災地のように住民の帰還が進まない地域も少なくない。コミュニティの維持にさえ四苦八苦する中で、「祭り」は地域の一体感を取り戻す上で非常に貴重な機会になっていた。岩波さんは「祭りはもともと豊作や健康を願うものですが、被災地の祭りには本来の祭りとは違う意味が込められているように思えます。作品から、そうした被災地の実情が伝わってくるかもしれません」と話していた。

大震災から間もなく10年。被災地に根を張る写真家の地を這う目線から、この10年間を振り返ってみたい。

同展について詳しくは同美術館ホームページへ。

(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)

直前の記事

【開幕レビュー】「意匠の天才」、グラフィックデザイナーの先駆者 精緻な仕事ぶりに感嘆 小村雪岱スタイル展 三井記念美術館

特別展 小村雪岱スタイル―江戸の粋から東京モダンへ 2021年2月6日(土)~4月18日(日) 三井記念美術館(東京都中央区、東京メトロ三越前駅、東京メトロ・都営地下鉄日本橋駅、JR東京駅から徒歩) 入館料:一般1300

続きを読む
新着情報一覧へ戻る