【開幕】花の都の音楽シーンをふんだんに 「写真家ドアノー/音楽/パリ展」 渋谷・Bunkamura

ロベール・ドアノー 《流しのピエレット・ドリオン》パリ 1953年2月 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

写真家ドアノー/音楽/パリ展

2021年2月5日(金)~3月31日(水)*会期中無休

Bunkamura ザ・ミュージアム(東京都渋谷区、渋谷駅徒歩7分)

入館料:一般1500円 大高700円 中小400円

開館時間:10時~18時(入館は17時30分)

毎週金・土曜日は20時まで(入館は19時30分まで)(*金・土の夜間開館については予定のため、変更の可能性あり。詳細は公式HPを要確認)。

問い合わせ:  050-5541-8600(ハローダイヤル)

*3/20(土・祝)・21(日)・27(土)・28(日)の4日間に限り【オンラインによる入場日時予約】が必要。

フランスの国民的写真家ロベール・ドアノーがパリの街角にあふれる音楽シーンを撮った作品展「写真家ドアノー/音楽/パリ」展が東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで始まった。1930年代から90年代に撮影されたドアノーならではの音楽的感覚に富んだ約200点で構成されている。

ドアノー(1912年~1994年)は、自動車メーカー「ルノー」のカメラマンを経てフリーとなり、「ヴォーグ」誌や「ライフ」誌でファッション写真を始めとする多くの作品を発表した。特にパリの庶民の日常をとらえた写真で高い評価を得た。ありふれた日常から奇跡のように愛すべき瞬間を切り取るドアノーは「イメージの釣り人」ともいわれる。

ロベール・ドアノー 《流しのピエレット・ドリオン》パリ 1953年2月 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact
ロベール・ドアノー 《音楽好きの肉屋》パリ 1953年2月 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

ドアノーはジャーナリストの友人と夜の街の人々を撮ることを日課としていた。ある時、流しのピエレット・ドリオンと出会いすっかり魅了されたドアノーは、店から店を移動してアコーディオンの弾き語りをする彼女に数日間密着した。

ドアノーはこう語っている。

「日常生活の中で偶然出会う、小さな種のような瞬間をカメラに収め、それが人々の心の中で花開くことを思うと大変うれしい」

ロベール・ドアノー 《パリ祭のラストワルツ》パリ 1949年7月14日 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

パリ祭はフランス革命によるフランス共和国の成立を記念した国民の祝日(7月14日)の祭典。街灯が消えたパリ左岸の暗闇の中、最後まで喜びを享受せんと踊るカップルをドアノーのカメラがとらえた。

ドアノーは写真家人生で多くの音楽家と出会い、多大な影響を受けた。シャンソン、オペラ、ジャズ、ロック・・・。ドアノーが写し取った素顔の音楽家たちの姿は、数十年の時を経た今でも変わらず作品の中で輝きを放ち続けている。

ロベール・ドアノー 《サン=ジェルマン=デ=プレのジュリエット・グレコ》 1947年 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact
ロベール・ドアノー 《イヴ・モンタン》 1949年 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact
ロベール・ドアノー 《「録音中のマリア・カラス、パテ・マルコーニ・レコードのスタジオにて》 1963年5月8日 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

20世紀最高のソプラノ歌手といわれるカラスのパリのスタジオでの姿をとらえたポートレート。演奏の合間のリラックスしたカラスの表情が印象的だ。

ロベール・ドアノー 《バレエ「カルメン」の衣装合わせ、イヴ・サン=ローランとジジ・ジャンメール》 1959年 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

本展には、エディット・ピアフ、ジャック・プレヴェール、イブ・モンタン、ジュリエット・グレコ、シャルル・アズナヴール、バルバラ、マリア・カラス、ジャンゴ・ラインハルト、アーサ・キット、レ・リタ・ミツコほか多数のその時代を彩ったアーティストたちが登場している。

ロベール・ドアノー 《雨の中のチェロ》 1957年 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

チェロ奏者モーリス・バケは、ドアノーの生涯の友人だった。俳優、スキー選手としても活動するバケの多才な想像力に触発され、ドアノーはバケを被写体にフォトモンタージュ、特殊効果、コラージュなどの技術を用いてユーモラスな作品を多く生み出した。

1980年代以降、写真家として世に知られるようになってもドアノーは若い世代と一緒に創作することを愛し続けた。年を重ねれば重ねるほど、その時代に生きる若者たちの生き方を発見することに喜びを感じていた。

ロベール・ドアノー 《レ・リタ・ミツコ》 1988年10月13日 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

ギタリストのフレッド・シシャンと歌手のカトリーヌ・ランジェによるフランスのポップミュージック・デュオ。グループ名はフランスの女優兼ストリッパーの「リタ・ルノワール」とゲランの有名な香水「ミツコ」から採られた。(*アメリカの女優リタ・ヘイワースからの説もある)

本展には1932年ドアノーが初めて買った愛機「ローライフレックス」も展示されている。

(読売新聞事業局美術展ナビ編集班   大角直也)