【プレビュー】 日本の印象派 「没後70年 南薫造」展 東京ステーションギャラリー(東京駅丸の内北口)で2月20日から

明治末から昭和にかけて官展の中心作家として活躍した洋画家、南薫造(1883-1950)の回顧展が2月20日から東京ステーションギャラリーで始まる。
東京ステーションギャラリー(東京駅丸の内北口)
2月20日(土)-4月11日(日)
前期 2月20日(土)-3月14日(日)
後期 3月16日(火)―4月11日(日)
一部展示替えあり
開館時間 10:00~18:00
休館日 毎週月曜日(4月5日は開館)
入館料 一般1100円ほか
詳しくは同ギャラリーホームページへ
南は明治16年、広島生まれ。東京美術学校西洋画科に入学し、24歳の時にイギリスに留学。帰国後は白馬会、その後身の光風会に所属し官展(文展・帝展・新文展・日展)の中心的画家として活躍した。東京美術学校の教授としても後進を育てた。印象派の画家として評価される一方で、創作版画運動の先駆けとなる木版画を制作するなど油絵以外でも新しい時代の美術を模索した。これまで地元の広島以外では大規模な回顧展が開かれたことがない。今回は南の代表作を網羅するとともに、イギリス留学時代に描かれた水彩画や朋友の富本憲吉(1886-1963)と切磋琢磨した木版画など、南の全貌を伝える決定版の回顧展となる。

南の絵の魅力はみずみずしい感受性でとらえた風景や人物の端正な描写にある。穏やかで清澄感のある作品は、早い時期から高い評価を得ていた。明るい色彩と柔らかい筆致による穏やかな作風で、特に欧米留学と前後する時期の油彩画は日本の印象派というにふさわしい作風。

イギリスに留学中は精力的に水彩画を制作する。ターナーなど優れた水彩画を輩出した本場で学んだ南の水彩画は、繊細な光の状態や、微妙な色調の変化を巧みにとらえ、透明感にあふれている。

留学から帰国後、留学仲間で後に陶芸家として名を残す富本憲吉と共同生活し、木版画の制作に励む。ひとりで下絵を描き、版木を彫り、摺るという自画自刻自摺を標ぼうし、大正期の大きな潮流となる創作版画運動の先駆けと位置付けられている。

晩年は戦時中に疎開した広島の生家で、瀬戸内海や近在の風景、家族の姿などを生き生きと描いた。タッチはより大きく伸びやかになり、日本の風土に根差した日本的洋画のひとつの完成形をみることができる。

次回展覧会は「コレクター福富太郎の眼 昭和のキャバレー王が愛した絵」展 4月24日(土)ー6月27日(日)を予定。
(読売新聞事業局美術展ナビ編集班・秋山公哉)