アアルト、ノグチらの名作照明 傷ついた人の心を癒す 大震災もテーマに Eテレドラマ「ハルカの光」、2月8日から放送開始

芸術性の高い照明がストーリーのカギを握るユニークなドラマ「ハルカの光」

2月8日(月)からEテレで放送が始まる連続ドラマ「ハルカの光」は、アアルト夫妻(※1)、イサム・ノグチ(※2)らが制作した「名作照明」(※3)が、ストーリー展開で重要な役割を果たすユニークな設定。画面を彩る美しい光の芸術は、とりわけ美術ファンは必見だろう。まもなく10年の節目を迎える東日本大震災も主役のハルカの人生に深く関わる。様々な厄災に見舞われる昨今、照明というアートが人の心に灯す希望を見つめる内容で、Eテレでは非常に珍しい本格ドラマというのも注目点。見どころを紹介する。(読売新聞東京本社事業局美術展ナビ編集班 岡部匡志)(写真はNHK提供)

東日本大震災で心に傷を負ったハルカは、照明で人の人生を照らすことに生きがいを見出す

【あらすじ】5回シリーズで5週連続放送。宮城で漁師の娘に育ったハルカ(黒島結菜)は東日本大震災で家や多くの友人を失った。東京に出たハルカは、名作照明を集めた専門店で、とある光に出合って心を奪われ、店長・西谷(古●寛治)の元、店番として働くようになる。光を求める人に心から接客し、その人の苦悩を晴らし、人生を豊かにすることに使命を感じるハルカ。そんな店には毎日、個性豊かな面々が訪れてくる。イッセー尾形、塩見三省、渡辺大知、駿河太郎、緒川たまき、山下容莉枝、甲本雅裕らゲスト陣も豪華。脚本は向田邦子賞を受賞した気鋭の矢島弘一。(注●は「舎」へんに「官」)

名作照明に詳しく、ハルカを温かく見守る店長の西谷

【登場する主な名作照明】

それぞれの作品の特徴や由来、光の質、作家のキャラクターや人生観がストーリーのカギを握る

<第1話>

ゴールデンベル 1937年 フィンランド

1枚の真鍮から作ったアアルト夫妻の名作。ドラマでも夫婦愛の情感がにじむ。

<第2話>

ワン・フロム・ザ・ハート 1989年 ドイツ

光の魔術師と呼ばれるインゴ・マウラーの傑作。友人の結婚式のために作った。2話ではある結婚の形が語られる。

<第3話>

アカリ 1952年 日本

イサム・ノグチが手がけた、和紙から生まれた光の彫刻。ノグチの反骨精神に触れた登場人物は。

<第4話>

ヒア・カムズ・ザ・サン 1970年 フランス

ベルトラン・バラスの名作。ビートルズの名曲が作品名の由来。常に人は光を求めるのか。

<第5話>

PHスタンド 1967年 デンマーク

対数螺旋をヒントにした巨匠ヘニングセンの傑作。闇を受け入れる光、とは。

【なぜ照明?なぜEテレ?】

当初のプランはEテレらしく、名作照明の芸術性やその背景をドラマ仕立てで紹介しつつ、スタッフがテレビや映画を通じて長く向き合ってきた東日本大震災にも触れていく内容だった。スタッフで煮詰めるうちに、「もっと人間ドラマを盛り込みたい」などの声があがり、結局、Eテレでは非常に珍しい連続ドラマに発展した。

【オールスター】

登場する名作照明はコレクター垂涎の逸品ばかり。実際にはこれら作品がひとつの店で揃うことはまず考えられないといい、「夢のオールスターです」と制作にあたった松原弘志ディレクターは言う。店はセットではなく、元々レストランだった場所を借りてロケした。業者が入ってクリーニングし、美術チームが電源や内装まで一から作り変え、まるで新しい店を作ったようになった。照明の色が映えるよう壁の色を灰色にするなど、隅々まで細かい計算が働いている。この辺りも放送では注目のポイント。

照明をいかに美しく見せるか、という視点で手を入れた店内

【コロナ禍、大震災】

大震災はドラマの重要な要素。東北ロケも行ったが、コロナのリスクや現地の目を意識すると不安はあった。このため、スタッフの人数をギリギリに切り詰め、スピーディーな撮影を心がけた。実際は現地では暖かく迎えてくれたといい、「震災のことを忘れないでほしい、という気持ちを強く感じた」と松原ディレクター。

【コメント】

主演の黒島結菜さん「震災によって心に傷を負ったハルカが、名作照明を集めたお店を経営する西谷さんと出会い、お店を訪れる人々との関わりの中で、少しずつ前を向いていくお話です。癒やされたり、ちょっと勇気が湧いたり、好きな人を想ったり、とても温かいドラマになっています」

【放送概要】

Eテレで2月8日(月)から毎週月曜日。夜7時25分~7時50分

詳しくは番組ホームページへ。公式ブログも開設されており、制作の舞台裏などが楽しめそう。

(※1)アアルト夫妻 アルヴァ・アアルト(1898―1976)はフィンランドが生んだ20世紀を代表する建築家、デザイナー。妻のアイノ・アアルト(1894-1949)も建築家、インテリアデザイナー。夫婦で家具などの製造にもたずさわった。

(※2)イサム・ノグチ(1904-1988) 20世紀を代表するアメリカ生まれの彫刻家。庭や公園などの設計、家具や照明といったインテリアデザイナー、舞台芸術など幅広く活躍した。日系アメリカ人。

(※3)名作照明 ヨーロッパ、特に北欧では照明器具のデザインや光の質が尊重され、室内での光が暮らしの中で大切な要素になっている。インテリアを超え、芸術品の領域に達したとされる作品は「名作照明」と呼ばれる。

直前の記事

【開幕】 古き良き時代の風景 「没後30年記念 笠松紫浪―最後の新版画」展 太田記念美術館(東京・原宿)で始まる

大正から昭和にかけてモダンな東京の街並みや温泉地などの風情を淡い色彩で表現した、「最後の新版画家」とも呼ぶべき笠松紫浪(かさまつしろう)の作品を紹介する「没後30年記念 笠松紫浪―最後の新版画」展が太田記念美術館(東京・

続きを読む
新着情報一覧へ戻る