「近代京都日本画史」(求龍堂刊) 京都画壇の全体像を最新の知見を交えて紹介 人気作の写真も豊富に

幕末明治期から昭和戦後まもなくまでの、京都における日本画の流れを概観できる新刊「近代京都日本画史」が求龍堂から発売され、ファンや専門家の注目を集めている。

竹内栖鳳、山元春挙、上村松園、土田麦僊ら現在も高い人気を誇る巨匠を次々に生み出した京都の日本画壇。一方で、近代日本画の研究は盛んに行われていてもその歴史は東京中心に語られがちで、一般のファンはもとより、学生や研究者も含めて京都画壇の全体像を掴むことは容易ではなかった。

そこで新進気鋭の若手研究者4人による概論・入門書として企画されたのが本書。近代京都の日本画の歴史を6つの章に分けて構成し、その歩みを最新の知見を交えて振り返りつつ、各時期を代表する作家を主要作とともに紹介している。表紙の竹内栖鳳《アレ夕立ちに》をはじめ、今尾景年《鷲猿》、上村松園の《焔》、土田麦僊《舞妓林泉》など、54名の画家の106点が掲載されており、お気に入りの作家のコーナーを眺めるだけでも十分楽しい。

また、当時の画壇の様子を分かりやすく伝えるコラムも充実している。同時期の東京画壇の状況や、様々な美術団体の消長、生活に追われた画家たちが輸出用美術染織品の下絵制作に励んだことなど、興味深い話題を提供。祇園祭などの伝統行事や、映画界との関係など京都ならではテーマも目を引く。巻末の年表と画家の関係図、地図なども展覧会の時に役立ちそう。

執筆者のひとりの植田彩芳子・京都文化博物館学芸員は「個々の作家は有名でも、近代京都の日本画の流れの中で、どういう位置にあるのか意識されることは意外に少ないと思います。この本を通じて歴史の流れを知り、作品の魅力をより深く知るきっかけになればうれしいです。学生や研究者の基礎資料としても役立ててほしいです」と話している。他の著者は中野慎之(文化庁文化財第一課)、藤本真名美(和歌山県立近代美術館学芸員)、森光彦(京都市学校歴史博物館学芸員)の各氏。B5版、214ページ 3200円(税抜き)。詳しくはこちらへ。

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