【開幕】 香りを見る 「香りの器 高砂コレクション展」パナソニック汐留美術館で始まる

ライトに照らし出されたボヘミアン・ガラスの香水瓶の数々。 瓶自体が美しさを競い合うとともに、中に入った香水の魅力を競っているかのようだ。

香りは人間の記憶と結びつき、さまざまな感情を呼び起こす。しかし、香りは目に見えず、はかなくて捉えどころがない。その目に見えない香りを「見よう」という展覧会。古今の香りに関わる選りすぐりのコレクションを紹介する「香りの器 高砂コレクション展」が1月9日、パナソニック汐留美術館(東京港区)で始まった。

 

香りの歴史は紀元前3000年頃の古代メソポタミアやエジプトにまで遡ると言う。当時の宗教的儀式で使われた香油や乳油を入れた壺、近代ヨーロッパの生活を彩った陶磁器やガラスの香水瓶、日本で香道の道具として使われた漆工芸品や陶磁器など約240件が展示される。さらにローランサンによる名画、アール・デコ時代の椅子や照明器具などの特別出展も。

赤絵式把手付香油瓶 前6世紀 高砂コレクション(左)

会場に入ると、紀元前にギリシアやキプロスなどで作られた土器の香油瓶が目に入る。古代ギリシア・ローマ時代は香料や香油が普及し、ギリシアでは陶器、ローマではガラス製の香油壺や軟膏壺が数多く作られた。アルコールや蒸留器が発明される前の香料は、香油や香膏と呼ばれ、油に香りをうつして用いられた。

マーブル文長頸香油瓶 1世紀 東地中海沿岸域 高砂コレクション
大理石や縞瑪瑙(しまめのう)の文様をガラスで表現しようとしたもので、2色のガラスを溶かし合わせて宙吹きによって製作した。現代でも再現するのは難しい。

中世から近世にかけてオリエント、イスラーム世界では蒸留技術の発達で多くの香水が作られ、ガラス容器に保存された。17世紀になるとアルコールによる精油の抽出がされるようになり、香水文化が一気に花開く。18世紀になると庶民の間でも香水を楽しむ習慣が普及し、マイセンやウエッジウッドなどの陶磁器による優美な香水瓶が人気を集めた。

携帯用の香水瓶の数々。17~18世紀にアルコールの抽出法が進化して香水の生産が盛んになる。ヨーロッパの王侯貴族は香水や化粧道具を入れるために、贅を凝らした容器を作らせた。

 

セーブル 草花文ポプリポット 18世紀 高砂コレクション

19世紀以降は市民社会の成熟とともに香水文化もより洗練され、ボヘミアン・ガラスやアール・ヌーボー、アール・デコの作家たちによる多様な香りの器が作られる。

エミール・ガレ 草花文香水瓶 1900年頃 高砂コレクション(左)
同 アネモネ文香水瓶 1904年頃 高砂コレクション(右)
クリーム色の素地に朱色のガラスを被せ、エッチングで文様を彫り出したカメオガラスのアトマイザー(スプレー付き香油瓶)。ジャポニズムの影響を強く感じさせる。

 

ルネ・ラリックの香水瓶。左から「では、またそのうちに(ウォルト社)」1929年、「同名(ウォルト社)」1929年、「夜に(ウォルト社)」1924年、「カランダル(モリナール社)」1937年 いずれも高砂コレクション

日本の香りの歴史は仏教伝来の6世紀以降に始まったと言われ、他国に無い独自の展開を見せるようになる。平安時代には香りを聞いて競い合う「薫物(たきもの)合わせ」などの優雅な遊びへと発展し、室町時代には「香道」という芸術に高められる。

鶴蒔絵香枕 江戸時代 18世紀 高砂コレクション
伽羅枕(きゃらまくら)とも言い、寝ている間に髪に香を焚きしめるための枕。香炉を置く抽斗が収められ、外側は全体を濃密な梨子地に仕立て、燻煙を出すための透かし彫りがある。

 

浜松塩屋蒔絵十種香箱 明治時代 20世紀 高砂コレクション
十種香は室町時代に始まる最古の組香(くみこう)。十種の香木から四種を選んで焚き、香木の種類を当てる遊戯だが、そこで使われる道具をまとめて収めたのが十種香箱。全体に金粉を蒔き付け、金銀の高蒔絵に研出蒔絵、さらに小さな四角い金の板をちりばめて室町以来の古典的な文様を表わす。

 

香りの器 高砂コレクション 展

パナソニック汐留美術館(東京港区)

2021年1月9日()-3月21()

 

詳しくは同館ホームページ

 

 

(読売新聞事業局美術展ナビ編集班・秋山公哉)

直前の記事

「絵筆ふるう七之助さんの姿に、若冲そのものを見た」 話題の時代劇「ライジング若冲」 <完全版>放送前に川崎直子プロデューサーに聞く

大人気の若冲とその友人の僧侶を中心に、応挙ら当時の京の絵師たちの世界を生き生きと描いたNHKの正月時代劇「ライジング若冲  ~天才 かく覚醒せり~」。美術ファンはもとより、主役二人の大胆な設定もあって様々な層から熱い支持

続きを読む
新着情報一覧へ戻る