【プレビュー】 すべてはこの高僧から 「鑑真和上と戒律のあゆみ」 京都国立博物館で3月27日から

凝然国師没後700年 特別展「鑑真和上と戒律のあゆみ」

3月27()516()  京都国立博物館

 

京都国立博物館で327日から、凝然国師没後700年 特別展「鑑真和上と戒律のあゆみ」展が開かれる。鑑真和上坐像が寺外で公開されるのは12年ぶり、京都での公開は45年ぶりとなる。この坐像は鑑真の没年とほぼ同時に直弟子の指導により制作され、日本最古の肖像彫刻と言われる。その写実性は天平彫刻の中でも群を抜き、細かいあごひげの表現はまるで生きているかのようだ。

鑑真(688763)は中国・唐時代の高僧で律の大家。日本での戒律の整備を目指していた聖武天皇の要請で、5度の航海失敗や失明を乗り越えて来日を果たす。その後、唐招提寺を拠点に正統の律の教えを日本に定着させた。

重要文化財 東征伝絵巻 巻二(部分) 鎌倉時代 永仁6年(1298)、奈良・唐招提寺、通期展示(巻替あり。この場面は前期展示)、撮影:金井杜道
鑑真の没後すぐに伝記が編纂され、それをもとに本図が描かれた。

 

戒律とは

戒律の戒とは仏教徒が守るべき自律的な道徳規範で、律とは僧侶が守らなければならない規則のこと。会社を例にすると戒は「社訓」、律は「就業規則」に例えられる。僧になるには僧尼の間で律を守ることを誓う。そのためには本来10人以上の正式の僧尼の前で儀式(授戒)を行う必要があるが、当時の日本では授戒の重要性が認識されていなかった。鑑真が弟子を連れて来日したことで正式な授戒が可能になり、東大寺に授戒を行う常設の建物である戒壇院が建立される。

凝然(ぎょうねん)国師はその東大寺戒壇院や唐招提寺の長老を歴任するなど、全宗派の教義に通じた大学者。現在でもその著書『八宗綱要』は仏教史の入門書として研究者必読となっている。2021年は国師没後700年にあたる。

国宝 金銅舎利容器(金亀舎利塔)  平安~鎌倉時代(12~13世紀)、奈良・唐招提寺、通期展示、撮影:金井杜道
鑑真がもたらした仏舎利(釈迦の遺骨)を奉安するために制作された

 

今回の特別展は日本の戒律の教えの歩みを、歴史上重要な役割を果たした僧の坐像や絵画、書跡などを通してたどろうというもので5章からなる。

第1章「戒律のふるさと-南山大師道宣に至るみちすじ-」

律は仏教が生まれたインドの気候・風俗を基にするため、中国の僧には理解できないことが多かった。そこで多くの僧が戒律研究のためインドに渡る。そうした中国の律学研究の集大成をしたのが南山大師道宣だ。

第2章「鑑真和上来日-鑑真の生涯と唐招提寺の創建-」

鑑真は唐の揚州で生まれ大明寺の住職を務めていた時に、日本僧の栄叡(ようえい)、普照(ふしょう)から戒律を日本に伝えるよう要請された。地位を捨てて6度目の航海で日本への渡海を果たす。この章ではそうした鑑真の足跡をたどる。

国宝 伝獅子吼菩薩立像
奈良時代(8世紀)、奈良・唐招提寺、通期展示、撮影:金井杜道
かつて唐招提寺講堂に安置されていた。日本離れした造形感覚から、鑑真とともに来日した工匠が制作したという説がある。

第3章「日本における戒律思想の転換点-最澄と空海-」

仏教が民衆救済に向き合うようになると戒律に対する姿勢も変わってくる。その最初が天台宗の最澄で、皆が守れる最低限の規範としての大乗戒に注目、南都(奈良)とは異なる立場に。そこから浄土宗の法然、浄土真宗の親鸞、日蓮宗の日蓮らにつながっていく。また、真言宗の空海が唐から伝えた密教には、従来の戒律の他に三昧耶戒という特有の戒があった。

重要文化財 弘法大師坐像
鎌倉時代 正中2年(1325)頃、奈良・元興寺、通期展示
鎌倉時代後期を代表する彫刻。

 

国宝 円珍戒牒(部分)
平安時代 天長10年(833)、東京国立博物館、前期展示
戒牒とは正式な受戒を経て僧になったことを示す証明書。智証大師円珍が唐に留学する際に身分証明書として持って行ったと思われる。奇跡的に現存する。

 

国宝 法然上人絵伝 巻十(部分)
鎌倉時代(14世紀)、京都・知恩院、後期展示
法然は天台宗の菩薩戒を生き方の指針として大切にし、授戒の師として知られる。この場面は後鳥羽院への授戒を行うところ。

 

第4章「日本における戒律運動の最盛期-鎌倉新仏教と社会運動-」

鎌倉新仏教と呼ばれ民衆と向き合った仏教革新運動では、戒律は重要な役割を果たす。覚盛(かくじょう)、叡尊(えいそん)、凝然らが戒律の復興、研究に活躍した。また、俊芿(しゅんじょう)は南宋に渡って戒律を学んだ。

国宝 興正菩薩(叡尊)坐像 善春作
鎌倉時代 弘安3年(1280)、奈良・西大寺、後期展示、撮影:森村欣司
実際に対面していると錯覚すらしそうな鎌倉肖像彫刻の傑作。像内から叡尊ゆかりの品々が見つかっており、信仰面でも重要な彫像。

 

重要文化財 俊芿律師像
鎌倉時代 嘉禄3年(1227)、京都・泉涌寺、通期展示
南宋に渡り戒律を学んだ俊芿が、当時の中国仏教文化最新の高僧像のスタイルで描かせた肖像画。

最終第5章「近世における律の復興」

近世では戒律運動の第2のルネッサンスと言われるほど多くの逸材が生まれる。彼らは江戸や大坂の大都市圏にあって、町人である商工業者の職業倫理に大きく寄与する。近世戒律思想は明治時代以降の近代仏教革新運動に通じる斬新さを持っている。

 

凝然国師没後700年 特別展「鑑真和上と戒律のあゆみ」

京都国立博物館(京都市東山七条)

2021327()516()

前期 327日~418()

後期 420()516

会期中、上記以外にも展示替えあり

詳細は公式ホームページ

 

 

(読売新聞事業局美術展ナビ編集班・秋山公哉)

 

 

 

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