比類ない熱量、「少数者」としての自負 石岡瑛子展が開幕 東京都現代美術館

会場に入るとまず目に飛び込んでくる資生堂キャンペーンのポスター(1966~68年)。前田美波里をフィーチャーし一世を風靡した

「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」展

東京都現代美術館(東京都江東区)

2020年11月14日(土)~2021年2月14日(日)

アートディレクター、デザイナーとしてグラミー賞、アカデミー賞を受賞するなど国際的に活躍した石岡瑛子(1938―2012)の世界初となる大規模回顧展がはじまった。

石岡瑛子 1983年 Photo by Robert Mapplethorpe
©Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.

会場を入ると、石岡が亡くなる半年前に行われたというインタビューの肉声が耳に入ってくる。資生堂やパルコ、角川書店など、60年代から70年代にかけて広告の分野を席捲した数々の業績が紹介される。それぞれ凄まじい熱量と勢いで、活気あふれる当時の社会の雰囲気を思い起こさせる。

作品からは「自立した女性像」を打ちだしたい、という強い意思も明確に伝わってくる。現代でも全く古びない意匠と視点。担当した藪前知子学芸員は「石岡は、常に女性や少数者の権利に高い意識を持っていた」と話す。「お茶くみならやらない」と言って資生堂に入社したエピソードも有名だ。

80年代に入ってからは日本を飛び出し、ニューヨークを拠点に幅広い活躍を見せる。マイルス・デイヴィスとのコラボでアルバムジャケットをデザイン。グラミー賞を受賞。

アカデミー賞を受賞した映画「ドラキュラ」の衣装デザイン。

ソルトレイクシティオリンピックのユニフォーム

「シルク・ドゥ・ソレイユ」の衣装

舞台「M・バタフライ」の衣装

また権利の関係で写真を紹介できないが、ワーグナーの「ニーベルングの指環」の衣装デザインの展示は圧巻。オランダ国立オペラの舞台を飾った34着の実物をまとめて見られるのは貴重な機会で、オペラファンならずとも眼福のコーナーだろう。

仕事柄、作品の大半が他者とのコラボレーション。権利関係が複雑で、展示にこぎつけるまでは困難の連続だったといい、藪前学芸員は「この規模の回顧展を開くことは今後、難しいのではないか」という。社会の分断や、コロナによる閉塞感にさいなまれる現代でこそ、振り返る価値の高い展示。石岡の仕事にリアルタイムで触れた世代はもちろん、直接は知らない若い世代にこそぜひ見てほしい。詳しくは公式サイトへ。

会期:2020年11月14日(土)-2021年2月14日(日)

休館日:月曜日(11月23日、2021年1月11日は開館)、11月24日、12月28日ー2021年1月1日、1月12日

開館時間:10時ー18時(展示室入場は閉館の30分前まで)

観覧料:一般1800円、大学生・専門学校生・65歳以上1300円、中高生700円、小学生以下無料

(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)