懐かしく、新しい弥生の美――「YAYOI・モダンデザイン-ニッポンの美、ここに始まる-」展 愛知県陶磁美術館 10月10日開幕

近年の重要な出土品を揃え、弥生時代のプロダクトを美とデザインの観点で捉えるユニークな展覧会「YAYOI・モダンデザイン -ニッポンの美、ここに始まるー」が10月10日()、愛知県瀬戸市の愛知県陶磁美術館で開幕する。

会場の愛知県陶磁美術館(瀬戸市)

呪術的な要素が強い土偶に代表される縄文とは対照的に、弥生の文化は機能性や普遍性が重んじられ、整った形や紋様に特徴がある。こうした造形は日本の伝統的な美の源流になった。本展では、弥生時代に作られた土器などの形、色彩、絵画や紋様に注目して、そのデザイン性や美しさを紹介する。西日本を中心に、全国各地の遺跡から近年出土した重要な土器や木器など約160点を集めており、古代史ファン、美術愛好家とも注目の催しになりそうだ。

展示は「弥生デザインの精髄」「素材の転換・かたちの強調」「弥生の色彩」「弥生絵画と造形のデザイン」「首長から王へ 権威の象徴」の5部構成。主な展示作品を紹介する。

<弥生デザインの精髄> 弥生の美とは、用の美

水差し形土器 奈良県田原本町/唐古・鍵遺跡出土 田原本町教育委員会所蔵

モノの機能を追求した結果、生まれたシンプルな形が弥生の美。この土器は取っ手と注ぎ口をもち、液体を注ぐのにちょうどよい形をしている。近畿地方にしか見つかっておらず、大阪と奈良の境にある生駒山の西麓で制作される特産品だったようだ。

<素材の転換・かたちの強調> 儀式用に木で剣を作る

銅剣型木製品 岡山県岡山市/南方(済生会)遺跡出土 岡山県教育委員会所蔵

青銅製の剣の形を模倣して、モミ属の木材を素材として制作したもの。本来の武器としての機能はなくなり、素材を転換して祭りや儀式で用いられたようだ。もともとは腰に帯びていた剣が、槍のように長い柄を付けるように変化したとも考えられている。

<弥生の色彩> 美しい赤と白の対比

パレススタイル壺 愛知県一宮市/八王子遺跡出土 一宮市博物館所蔵
パレススタイル壺の実測図 愛知県埋蔵文化財センター作図

器体の下半分などにベンガラを塗って焼成し、赤く発色している。赤彩部分以外の器肌は白褐色となり、櫛描きなどで細かな紋様を描いている。パレススタイル=宮廷式、の名称は、古代ギリシア土器の様式名に由来しており、弥生土器において最も美しいとする評価に基づいている。

<弥生絵画と造形のデザイン> 直線と円弧のラビリンス

装飾木製品 石川県小松市/千代・能美遺跡出土 石川県埋蔵文化財センター保管
装飾木製品の紋様分布図 樋上昇作図

「弧帯紋(こたいもん)」が刻まれた木製品。「弧帯紋」とは、一定の幅を持つ帯のような図形が、土器などに巻き付く有様を表現したもの。分析図では赤線の格子状区分の中に、緑色の三重同心円、橙色の湾曲紋様、青色の「人」字形紋が入り組んで重なっており、極めて複雑な構成となっている。

<首長から王へ 権威の象徴> 至高の弥生漆器

装飾壺<重要文化財> 鳥取県鳥取市/青谷上寺地遺跡出土 鳥取県所蔵
装飾壺の想定復原図 樋上昇作図

実物資料は長く土の中にあったため、形がつぶれて黒くなっているが、本来は算盤形の胴部で、黒漆の下地に赤漆で同心円などの細かな紋様を描いて表面を埋め尽くしたものと思われる。現在までに発見されている弥生時代の木製品では、最高級の技と美を反映している(展示は12月6日まで)

縄文土器と弥生土器の違いは歴史の学びでもよく強調されるが、「美」や「デザイン」という観点で改めて意味付けされ、詳細に分析された展示には大いに興味をそそられる。シンプルで、かつ細部にわたって神経が行き届いたデザインは、現代の私たちにとって確かに「モダン」に見える。本展に合わせて10月18日(日)には、松木武彦・国立歴史民俗博物館教授と橋本麻里・永青文庫副館長の記念対談「弥生の美を語る」が同館で行われるなど、関連行事も用意されている。

また本展は11月22日(日)に開館する「あいち朝日遺跡ミュージアム」(愛知県清須市)に関連して、愛知県埋蔵文化財センターと愛知県陶磁美術館が共同開催する催し。「朝日遺跡」は弥生時代の環濠集落で東海地方最大級の規模で知られ、ミュージアムのスタートで改めて話題になりそう。古代史ファンは愛知に注目したい。

◆「特別展「YAYOI・モダンデザイン ―ニッポンの美、ここに始まる―」

◆愛知県陶磁美術館(愛知県瀬戸市)

◆2020年10月10日(土)~12月13日(日)

◆詳しくは同館ホームページへ。

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