「敦煌写経」真品34点を一挙公開  東京・三井記念美術館で 

敦煌(会場パネルより)

三井家に伝わった美術品や茶道具などを収蔵する東京・日本橋の三井記念美術館が、「三井記念美術館コレクション 敦煌写経と永楽陶磁」と題して、中国・敦煌(とんこう)の写経34点と江戸末期の京都の陶工・永楽保全の陶磁器30数点などを公開している。敦煌写経、永楽保全とも、まとまって公開するのは約14年ぶり。

敦煌写経

敦煌の写経は、1900年に敦煌莫高窟の蔵経窟から発掘された古写経。「第16窟」の壁の奥に塗りこめられていた蔵経窟(第17窟)には4~11世紀(南北朝時代~北宋時代)にわたる約5万点の古文書が秘蔵されていた。

発見された敦煌写経(会場パネルより)

1907年にイギリスの探検家スタインが約1万点を、1908年にはフランスのペリオが約6000点を入手し、その後、日本の大谷探検隊なども敦煌を訪れ、古文書類を持ち帰った。(大谷探検隊の事績は東京国立博物館・東洋館の総合文化展「西域の美術」でも紹介されている)

莫高窟第57窟 南壁中央 仏説法図右脇侍菩薩 初唐 (会場パネルより)

「地元」中国では、1910年代に敦煌を含む甘粛省(かんしゅくしょう)を統治した政治家・軍人の張広建(ちょう・こうけん)が、「敦煌写経」の一部を手に入れ、その内の112点が1928年(昭和3年)、三井家の手に渡った。その後の研究で今回展示されている34点が真品と確認された。 

「長安宮廷写経」

今回の展示の白眉は「長安宮廷写経」の「妙法蓮華経 巻第二」と同「巻第七」だろう。「長安宮廷写経」は唐の高宗の時代に、地方の官寺に配布することなどを目的に、唐の都・長安で官吏の監督の下で書写された一群の写経で、法華経と金剛経の二種が知られる。力強く謹厳で端正な書体が特徴だ。「漢字文化圏に伝わる古写経のなかで最高の出来ばえ」ともいわれ、世界で30数点しかないとされる。

「妙法蓮華経 巻第二」(部分)

 「巻第二」も「巻第七」も、紙すきのスノコ目が細かく、ごく薄い最上級の麻紙(まし)が使われており、「パリっとした確かな手触りで脆さはない」(同館学芸部長・清水実さん)という。1300年以上を経過した紙とは思えないほどの質感が保たれている。

「長安宮廷写経」の二巻を前に、状態や来歴などを語る学芸部長の清水実さん(中)

   いずれも写経に関する期日や人名などが記され、史料としても興味深い。「巻第二」の巻末部分=写真下=には、右から一行目に書写の年月日(上元二年十一月廿六日)と「群書手」(成公敬)の名が記され、二行目には「用紙廿張」とある。(「廿」は二十を表す) 四行目から六行目にかけては「初校」「再校」「三校」を「僧道深」が行ったことを伝えている。上元2年は西暦675年にあたる。

会場にはこの2点を含めて7世紀、8世紀にわたる写経がずらりと並んでいる。いずれも乾燥地域の敦煌だからこそ今日まで残ったシルクロードの至宝だ。唐時代の最高の書手による写経をじかに味わうことが出来るとともに、西域の歴史ロマンへも誘(いざな)われる。

  

永楽保全の陶磁器も

敦煌写経のほか、江戸時代末期の京焼の陶工・永楽保全(えいらく・ほぜん:17951854年)の陶磁器30数点も紹介されている。永楽保全は様々な技法を使いこなし、中国陶磁の写しや仁清風の器などを作った。パトロンだった三井家に残された保全の名品の数々が並んでいる。 

 

 

三井記念美術館コレクション

敦煌写経と永楽陶磁

2020912日(土)~118日(日) 三井記念美術館(東京・日本橋)

 *事前予約不要。開館時間は11:0016:00

 

 

 

 

 

 

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