今、を写す絵本 アジアに勢い    2020イタリア・ボローニャ国際絵本原画展(板橋区立美術館)

キム・カウォン(韓国)「朝市」

2020イタリア・ボローニャ国際絵本原画展

板橋区立美術館(東京都板橋区)

2020年8月22日(土)~9月27日(日)

毎年恒例の「イタリア・ボローニャ国際絵本絵画展」が今年も板橋区立美術館で始まった。イタリアでの展示は3月末開幕の予定だったが、新型コロナウイルスの影響で中止になり、日本で初公開ということになった。

イタリア北部の古都・ボローニャで毎年開催される絵本原画コンクールの入選作を紹介する催し。1つの作品は5枚の絵で構成される。絵本作家をめざす新人イラストレーターの登竜門として知られ、2020年は66か国2574組の応募から、24か国の75作品が入選を果たした。審査はコロナ禍が本格化する直前の1月中旬、日本の若月眞知子氏を含むフランス人、イタリア人(2人)、イギリス人の5人の合議で行われた。

1979年に東京23区初の区立美術館として開館した板橋区立美術館。昨年、リニューアルしたばかり。

今年の傾向について、松岡希代子館長代理は「審査員が毎年変わるので、その年の審査員の考え方が選考に反映されます。今年は社会問題や時事的なテーマに踏み込んだ作品が目立ちました。また、アジア勢の台頭が目覚ましいです」と分析した。

 

チェン・チャオユィ(台湾) 「そしたら、どうなる?」

無造作に海辺に投げ捨てられたゴミが、缶詰になって食卓に届いたとしたら、という皮肉な内容。環境破壊をテーマにした社会批判だが、カラフルでユーモラスなタッチに、問題意識が素直に伝わってくる。

ラム・キンチョイ(中国・香港) 「未来を夢見て」

香港の「雨傘運動」の顛末を描いたと思われる痛切なもの。作者はどのように関わり、今、どう暮らしているのか気にかかる。

エリーサ・カヴァリエーリ(イタリア) 「現代版:みにくいアヒルの子」

現代的な意匠の中に描かれる、今も昔も変わらない「いじめ」。かわいい姿ゆえに胸が痛む。

ソン・コリ(中国) 「海を見下ろす山のかなたに」

愛するペットの埋葬先に相応しい場所を探すカップル。どこの国でも変わらぬ哀惜の情。

フォーラン・マツァク(ドイツ) 「ホームレス」

現代社会の厳しい現実を見据えた作品も多い。

会場では特別展示として、イタリアにおける視覚障がい者向けの絵本の取り組みを紹介している。写真の作品はイタリアの作家アンドレア・アンティノーリの「大いなる戦い」。ユーモラスな絵を、触覚で分かるように木製パネルにした。布でできた「さわる絵本」も展示され、「国境」など抽象的な概念を伝えるものもある。新型コロナウイルス対応で、一般の来館者は触れられないが、障がい者の要望には個別に対応している。

【開催概要】

月曜休館(ただし9月21日は開館、23日は休館)

観覧料は一般650円、高校・大学生450円、小・中学生200円(土・日は小中高生は無料)

【今後の巡回予定】

▼三重県 四日市市立博物館  (10月3日~11月1日)

▼石川県 七尾美術館     (11月6日~12月13日)

▼群馬県 太田市美術館・図書館(2021年1月5日~1月24日)

詳しくは公式ホームページへ。

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