月光を暗示する銀色の海  抱一「波図屛風」5年ぶりに公開  「美の競演 -静嘉堂の名宝―」展

酒井抱一「波図屛風」(部分) 江戸時代・文化12年(1815)頃 波の描写にはペパーミントグリーンも用いられ、作品にアクセントを与えている

 主題や師弟関係などをもとに、日本や中国などの名画名品をペア仕立てで紹介する東京・静嘉堂文庫美術館の「美の競演―静嘉堂の名宝」展は会期後半に入り、前期の展示から20数件が入れ替わった。陶磁器、茶道具、仏画、花鳥画など44件が新たな“競演”を繰り広げている。

 

仏画、仏像、茶器などが並ぶ展示室。手前は国宝「曜変天目『稲葉天目』」

 

「狩野派と琳派」と題したコーナーでは、5年ぶりの公開となった酒井抱一の「波図屛風(なみずびょうぶ)」が、狩野派の基礎を築いた狩野探幽の「波濤水禽図(はとうすいきんず)屛風」と覇を競うかのように並んでいる。優雅さや権威を感じさせる探幽に対して、冴えた銀地に墨で波を描いた抱一の作品はどこか挑戦的にも見える。

重要美術品 狩野探幽「波濤水禽図屛風」江戸時代(17世紀)
酒井抱一「波図屛風」 江戸時代・文化12年(1815)頃

  名門大名家出身で江戸育ちの抱一は、狂歌や俳諧に親しむ文化人で、やがて尾形光琳に傾倒し、江戸で琳派を継承した。私淑する光琳が金地を多用したのに対して、抱一は「波図屛風」で銀地を用いた。銀は漢詩などで月の光と結びつけられてきた色でもあり、「この作品で銀と月を自らの表現として打ち出し、独自の美意識を表明した」と、武蔵野美術大学教授(日本美術史)の玉蟲敏子(たまむし・さとこ)さんは指摘する。見逃がせない一点だ。

このほか、国宝の「曜変天目『稲葉天目』」や重要文化財の康円「木造広目天眷属像」、渡辺崋山「遊魚図」など、好みに応じて見どころはいくつも見つかりそうだ。922日まで。

孔雀をモチーフにした作品が並ぶ展示室の一画

1980年代から約20年間にわたって同美術館の初代常勤学芸員を務めた玉蟲さんは、95日、「静嘉堂の琳派とやまと絵―発見の日々から現在へー」と題して講演し、女性学芸員のさきがけとしての体験や、「波図屛風」の制作経緯、同作品が静嘉堂文庫に収められるまでの足取りについての最新の調査状況などを語った。研究の詳細は美術雑誌『国華』で発表される予定だ。

玉蟲敏子さん(2020年9月5日、静嘉堂文庫美術館講堂で)

「美の競演 -静嘉堂の名宝―」展

2020年627日(土)~922日(火・祝) 静嘉堂文庫美術館(東京・二子玉川)

直前の記事

新進気鋭アーティストの個展 「小松美羽 展 ― 自然への祈り ―」開幕(広島・ウッドワン美術館)

国内外で人気を集める新進気鋭のアーティスト・小松美羽の個展「小松美羽展 ― 自然への祈り ―」が、ウッドワン美術館で開幕した。 版画作品から出発し、近年は狛犬などの神獣をモチーフとしたダイナミックな作品で知られる小松美羽

続きを読む
新着情報一覧へ戻る