ジェンダーの成り立ちと変化 「性差(ジェンダー)の日本史」展  国立歴史民俗博物館で10月6日から

重要文化財 高橋由一画「美人(花魁)」 1872(明治5)年 東京藝術大学蔵

企画展示「性差(ジェンダー)の日本史」

国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)

2020年10月6日()~12月6日(日)

日本の歴史で「なぜ、男女を区別するようになったのか?」「男女の区分のなかで人々はどう生きてきたのか」を280点以上の豊富な資料を通して問う内容で、同館ではジェンダーをテーマとする初めての企画展だ。女性の王や官僚が当たり前だった古代から、徐々に政治や職業との関わり方が変容した中世から近世を経て、明治憲法体制下での女性排除、そして現在。こうした流れを踏まえ、ジェンダーが日本社会の歴史の中で、どんな意味を持ってきたのかを問う企画になっている。ジェンダーにとらわれず、誰もが自分らしく生きられる社会を築くには、無意識のうちに私たちを強くとらえているジェンダーの姿をまずつかむことが肝要、というねらいだ。

重要文化財 柄杓を持つ女性埴輪
栃木県甲塚古墳出土 6世紀後半 下野市教育委員会蔵

展示は「古代社会の男女」「中世の政治空間と男女」「中世の家と宗教」「仕事とくらしのジェンダー―中世から近世へ―」「分離から排除へ―近世・近代の政治空間とジェンダーの変容―」「性の売買と社会」「仕事とくらしのジェンダー―近代から現代へ―」の7章。各時代のジェンダー観や、女性の勤労観などを伝える貴重な資料が数多く展示される。

重要文化財 伊福吉部徳足比売臣骨蔵器 710(和銅3)年 東京国立博物館蔵 Image:TNM Image Archives

因幡国(鳥取県)出身の女官、伊福吉部徳足比売臣(いおきべのとこたりひめのおみ)の骨蔵器。蓋には放射状に16行にわたって銘文が計108文字彫られている。終わりから4行目では、墓所を壊すことなかれと末代の豪族たちを戒めており、徳足の威光をうかがわせる。

静岡市指定文化財 寿桂尼朱印状 1528(享禄元)年10月18日 静岡市蔵

「女戦国大名」として知られる寿桂尼(じゅけいに、今川氏親の妻、義元の母)が出した文書。仮名交じりで書かれている。文頭に朱印が押されている。男女が官人としてともに奉仕した古代から、女性官僚が徐々に「女房」として御簾の向こう側の存在になっていくのが中世。一方、政治空間としての「家」に着目すると、女性も政治的権能を発揮していたことが分かる。

東山名所図屏風(第2扇)(部分)16世紀後半 国立歴史民俗博物館蔵

京都東山の名所、特に清水寺を大きく描いた参詣曼荼羅的な屏風。女性の生業や参詣の様子も多く描かれており、清水の舞台の中央には、参詣して喜捨を施す女性家族の姿が見られる。屏風には、様々な職種の女性が描かれる。

髪結 F・ベアト撮影 1863(文久3)年 長崎大学附属図書館蔵
女髪結 F・ベアト撮影 1863(文久3)年 長崎大学附属図書館蔵

幕末の髪結と女髪結。モデルによる写真で、当時、髪結いは男性の仕事。女髪結は取り締まりを受ける非合法の職業だった。

重要文化財 高橋由一画「美人(花魁)」油彩 
1872(明治5)年 東京藝術大学蔵

性の売買については特に1章をもうけ、遊女として生きた女性たちの日記や手紙も紹介しつつ、男女の区分や位置づけを深く反映する性の歴史を振り返る。

新吉原遊郭の稲本屋の遊女・小稲の肖像画。近代洋画の創始者、高橋由一のモデルになった小稲は、完成したこの絵を見て泣いて怒ったと伝えられる。稲本屋抱え遊女のトップとして、店と自身の宣伝に努めてきた小稲には、リアルを追求する絵が、自らの努力を台無しにするものに見えたのであろう。

遊女桜木の日記「おぼへ長」(「梅本記三」狩野文庫)1846(弘化3)年 東北大学附属図書館蔵

新吉原遊郭の遊女屋梅本屋佐吉お抱えの遊女・桜木の日記。1849(嘉永2)年、梅本屋の遊女たち16人が、楼主・佐吉の非道を訴えるため、集団で放火し自首するという事件が起き、江戸で評判となった。裁判調書に綴じ込まれた桜木の日記は、梅本屋における遊女たちの過酷な生活を物語る。

ユネスコ「世界の記憶」入坑(母子)(山本作兵衛氏炭鉱記録画)1899(明治32)年頃 田川市石炭・歴史博物館蔵 ⒸYamamoto Family

日本で初めてユネスコの「世界の記憶」に指定された山本作兵衛の炭鉱記録画「入坑(母子)」など3点を出品。坑道の天井が低く、母親が背負うと幼児の頭を打ち付けるため、10歳未満の息子に背負わせている。子守りのため入坑する息子は、学校を長期欠席した。

ポスター「男女同一労働同一賃金になれば」 労働省婦人少年局婦人労働課
1948(昭和23)年 メリーランド大学ゴードン・W・プランゲ文庫蔵

戦後の占領下、GHQ/SCAP(連合国軍最高司令官総司令部)経済科学局のマリア・ミード・カラスと、日本の労働省婦人少年局や都道府県の婦人少年局地方職員室の女性公務員たちは、性差別廃止をめざす活動を通して深い絆を結んだ。

展示ではこのように政治をはじめ、仕事とくらしの場面などの「男」「女」の区別についてその変遷をたどっていく。詳しくは同館ホームページへ。

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