特別展「聖地をたずねて―西国三十三所の信仰と至宝―」 京都国立博物館で開催中

日本最古の巡礼路の至宝を集めた特別展「聖地をたずねて―西国三十三所の信仰と至宝―」が、京都国立博物館(京都市東山区)で開かれている。

西国三十三所は養老2(718)年に閻魔大王のお告げを受けた長谷寺(奈良)の開基・徳道(とくどう)上人が、人々を救うため定めたと伝わる。巡礼路は和歌山をスタートし大阪、兵庫、京都、奈良、滋賀、岐阜を結び、総距離は1000キロメートルにも及ぶ。1000年余にわたり33の札所は変わらないという。

今回は草創1300年を記念しての展覧会。国宝12点、重要文化財46点を含む170件余りの至宝が展示される。普段は閉じられた厨子の中にあって見ることのできない「秘仏」も。

展示は第1章「説かれる観音」で始まり「受け継がれる至宝」まで7章からなる。

重要文化財「菩薩半跏像」 奈良時代(8世紀) 奈良・岡寺(龍蓋寺)=通期展示
片脚をもう一方の脚の上に組み、片手の指先を頬に当ててものを思う姿から「半跏思惟像」とも呼ばれる

第1章「説かれる観音」

観音は33通りに姿を変え人々を救うと『妙法蓮華経(法華経)』に書かれる。第1章は観音がどのように人々に説かれたか、経典や仏像を通して見ていく。会場に入ると異なる年代に制作され、様々な表情を見せる仏達が優しく迎えてくれる。経典も経文の文字を生地に縫い取った刺繍経や金泥の文字などが並ぶ。遣唐使学問僧であった玄昉(げんぼう)が、天平13(741)年に書写させたという「千手千眼陀羅尼(だらに)経」(国宝=京都国立博物館)は、千手観音の功徳を説いたもので、国家と人々の安寧を願って1000巻書写させた中で唯一現存する一巻という貴重なものだ。

 

 

国宝「餓鬼草子」(部分) 平安~鎌倉時代(12世紀) 京都国立博物館 =8月18日~9月13日展示 地獄で仏の説法を聞く餓鬼の姿が描かれている

第2章「地獄のすがた」

人々は観音に地獄からの救済を願ったが、その地獄とはどんな所か。「六道絵のうち閻魔王庁図」(国宝=滋賀・聖衆来迎寺、818日~913日展示)や「餓鬼草子」(国宝=京都国立博物館)などから、どんなイメージを抱いていたか見て取れて興味深い。当時の風俗や苦悶、嘲笑などの生々しい描写は、状況を目の当たりにするような現実感を与えてくれる。

 

 

国宝「粉河寺縁起絵巻」(部分) 平安時代(12世紀) 和歌山・粉河寺 =7月23日~8月16日展示

 第3章「聖地のはじまり」

西国三十三所成立に大きな役割を果たした徳道上人や花山法皇、圓教寺(兵庫)の性空上人の肖像、それぞれの寺院の由緒や歴史を紹介する。粉河寺(和歌山)の創立や本尊・千手観音像の霊験を描いた「粉河寺縁起絵巻」(国宝)は、中近世を通して盛んに作られた社寺縁起絵巻の古典的名品で、長者や女性、猟師などの姿が生き生きと描かれていて当時の人々の暮らしぶりがうかがえる。

第4章「聖地へのいざない」

修行僧や修験者たちが中心だった西国三十三所巡礼は、やがて武士や一般庶民も行うようになる。彼らの寄進が戦乱などで荒廃した寺院の再興に大きな役割を果たした。展示された参詣曼荼羅や勧進状などは、こうした新たな巡礼者をいざなう今のガイドブックや趣意書のようなもので、伽藍の配置やそこに集う人々の様子がよく分かり興味深い。

 

秘仏「如意輪観音座像」(手前) 京都・頂法寺(六角堂)=通期展示

5章「祈りと信仰のかたち」

観音は人々を救うためにその場に応じて7種の姿で現れるという。「聖(しょう)観音」、「十一面観音」、「千手(せんじゅ)観音」、「如意輪観音」、「馬頭観音」、「不空羂索(ふくうけんじゃく)観音」、「准胝(じゅんでい)観音」の7観音の姿を集めた。それぞれが特徴のある形、表情で独特の雰囲気を醸し出す。一つの展覧会で堪能できるまたとない機会だ。京都・頂法寺(六角堂)の秘仏「如意輪観音座像」も展示されている。建礼門院徳子が安産祈願のため寄進したとの伝承もあり、仏像ファンには見逃せないものだろう。

第6章「巡礼の足あと」

巡礼が身分的にも地域的にも広がっていく中で、刊行される書物や訪れた人々が身に着けたり奉納したりするものも増える。朱印や巡礼札からは人々の思いがしのばれる。

 

㊨ 第5章 重要文化財「千手観音立像」 平安時代(9世紀) 滋賀・園城寺 (三井寺)=通期
㊧ 第7章 重要文化財「毘沙門天立像」 平安時代(9世紀) 岐阜・華厳寺
  =7月23日~8月16日

第7章「受け継がれる至宝」

西国三十三所は平安時代の12世紀前半には成立していたと考えられる。しかし、歴史も宗派も異なる各寺院には、「観音」や「三十三所」ではくくれない固有の宝が伝えられている。

最後の第7章では、そうした各寺宝が紹介される。「法華一品経 観世音菩薩普門品」(奈良・長谷寺)や「普賢延命菩薩像」(京都・松尾寺)などいくつもの国宝、重要文化財が並ぶ。観音信仰とは離れても見ごたえのある展示が並ぶ。

 

今も昔も旅の楽しみの一つは食べること。巡礼者も門前のお茶屋や旅籠で、ご当地の名物を楽しんだ。ショップには札所認定スイーツの中から選りすぐりの「お寺スイーツ」も。

 

特別展「聖地をたずねて―西国三十三所の信仰と至宝―」

2020年7月23日~9月13日  京都国立博物館

会期中、一部展示替えあり

新型コロナウイルスの感染予防、拡大防止のため会期や展示期間を変更する場合あり

詳細は展覧会公式ホームページ

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