リポート 千葉市美術館 拡張リニューアル・オープン

1995年に千葉市中央区役所庁舎の上層階で開館した千葉市美術館が、7月11日に「拡張リニューアル・オープン」した。開館25周年の今年、区役所の移転に伴って全館が美術館となり、常設展示室(5階)、「子どもアトリエ」、図書室「びじゅつライブラリー」(いずれも4階)」などが加わった。あらたな展示の様子をリポートする。
常設展示室(5階)
「千葉市美術館コレクション名品選2020」
2020年7月11日(土)~2021年4月4日(日)
千葉市美術館の収集、展覧会の「柱」は、「近世から近代の日本絵画と版画」 「1945 年以降の現代美術」 「千葉市を中心とした房総ゆかりの作品」。これまでは大規模な企画展が開かれると、現代美術あるいは日本絵画など企画展に関わるジャンルの作品しか見られないこともあったが、今後は、企画展の規模や内容に関わらず、常設展示室で「3本柱」のすべてを鑑賞できる。
それぞれテーマを設けて作品を選定し、「千葉ゆかり」と「日本の絵画・版画」は1か月ごとに展示替えを行い、現代美術は3か月単位で展示を行う。リニューアル・オープンでは、「千葉ゆかり」は千葉市と房総の海辺、「日本の絵画・版画」は美人画、「現代美術」は草間彌生をとりあげた。


8月の「近世から近代の日本絵画と版画」コーナーは「妖怪」がテーマ。関連ワークショップとして8月13日から23日まで、オンラインで「きみの妖怪絵馬を描こう」を開催する。申し込みは同館ホームページで。
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子どもアトリエ(4階)
つくりかけラボ 「遠藤幹子 おはなしこうえん」
2020年7月11日(土)~12月13日(日)
「つくりかけラボ」は、「五感で楽しむ」 「素材にふれる」 「コミュニケーションがはじまる」 という3つのテーマを軸にアーティストが滞在制作をおこない、訪れた人びとと関わりながら、空間に合わせたインスタレーションを制作するプロジェクトだ。第1弾のアーティストは公共文化施設の空間デザイン、ワークショップなどを手がけている遠藤幹子さんで、千葉にまつわる民話をテーマに設定した。


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企画展示室(7、8階)
企画展「帰ってきた!どうぶつ大行進」
7月11日(土)〜9月6日(日)

千葉市美術館の約10,000点にものぼるコレクションから、動物を描いた日本の古今の作品を紹介している。「病退散!鍾馗大集合!」「十二支のどうぶつ」「麒麟はまだか!?」「水のいきもの」など12章構成で、江戸時代の絵画や版画を中心に、室町~昭和時代の作品約250点を公開。かわいい小動物から想像上の生きものまで主題はさまざまで、日本人の動物への多様なまなざしが伝わってくる。2012年に同館が開いた「どうぶつ大行進」展 に新収蔵作品などを加えてバージョンアップした展覧会だ。
緊急登板だった「どうぶつ」たち
リニューアル・オープン記念展は「ジャポニスムー世界を魅了した浮世絵」展を予定していたが、新型コロナウイルスの影響で海外の美術館からの作品借用が難しくなり、開催延期となった。このピンチを救ったのは上席学芸員の松尾知子さんだった。昨年、米ワシントン・ナショナル・ギャラリーなどで開かれた「日本美術に見る動物の姿」展の共同キュレーターを務めた松尾さんの脳裏には、アメリカの観客が無心に動物の作品を楽しむ姿が印象深く残っていた。「あの笑顔を今の日本の人たちにも」という気持ちが生まれ、「今やるべきことは何かを考えて」(松尾さん)、「どうぶつ大行進」展のリメイクを提案。新型コロナウイルス感染防止のために美術館に出向くこともままならない中、ほとんど頭の中で作品を選び、展示プランを練り上げたという。美術館の収蔵品、寄託品を熟知し、アメリカの展覧会のために「日本美術における動物」というテーマを掘り下げていた松尾さんならではの企画だった。

企画展第2弾は宮島達男展
なお、拡張リニューアルオープン・開館25周年記念の第2弾はデジタルカウンターを用いた作品で知られる宮島達男の個展「宮島達男 クロニクル 1995-2020」。同美術館にとっては1995年の開館記念展第2弾の「Tranquility―静謐」以来、四半世紀ぶりの宮島とのコラボレーションとなる。2020年9月19日から12月13日まで。
*写真は7月29日に撮影