リポート SOMPO美術館 開館記念展「珠玉のコレクションーいのちの輝き・つくる喜び」

見やすくなった「ひまわり」(7月9日、SOMPO美術館で)

SOMPO美術館 開館記念展

「珠玉のコレクションーいのちの輝き・つくる喜び」

SOMPO美術館(東京都新宿区西新宿)

2020年7月10日(金)~9月4日(金)

超高層ビルの42階というユニークな立地で、ゴッホの「ひまわり」で知られた「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」が隣接地の専用棟(地上6階、地下1階)に移転し、名称も新たに「SOMPO美術館」として生まれ変わった。新型コロナウイルスの影響で、オープンは予定よりひと月以上ずれ込んだが、開館記念展では「ひまわり」はもちろん、タイトル通りに同館の豪華なコレクションを惜しげもなく投入。見どころたっぷりの内容だ。約70点を6つのテーマに分けて展示している。開館前日の9日に行われた内覧会の模様をリポートする。

東郷青児の作品のモチーフを外観に生かしたSOMPO美術館。背後は損保ジャパン本社ビル(7月9日、東京・西新宿で)

<第1章 四季折々の自然>

第1章の狙いについて、中島隆太館長は「日本の美術館だから、やはり最初は日本の作家の作品こそふさわしい。日本の四季を名作で味わってほしかった」という。目玉は大正から昭和の京都画壇で活躍した山口華楊(1899-1984/明治32-昭和59)。初期の屏風絵の大作「葉桜」(1921)は第3回帝展に入選し、翌年パリのグラン・パレで開催された「日本美術展覧会」に出品された。

同作は経年劣化で屏風内部の木製の骨組みが歪んでいた。今後、歪みが増すと屏風の開閉時に表面の絹布を傷付ける可能性があったため、大がかりな修復を行い、約10年ぶりの公開となった。併せて紹介されている修復の模様の展示(写真は部分)も興味深い。

このコーナーでは岸田夏子「桜華」、東山魁夷「潮音」、吉田博「興津の富士」など計12点を展示している。

<第2章 「FACE」グランプリの作家たち>

FACE」は新進作家を支援するため、同館で2012年度から毎年開催している公募コンクール。「年齢・所属を問わず、真に力のある作品」を表彰することを目的にしており、今コーナーではグランプリ作品7点を展示している。

<第3章 東郷青児>

東郷青児(1897-1978)は昭和期に活躍した洋画家。優雅な女性像「青児美人」で知られ、広く一般に親しまれた。

東郷青児と損保ジャパンの関係は、1930年代初め、東京火災(損保ジャパンの前身)の顧客配布用カレンダーに、東郷の作品を掲載したことに始まる。1976年に安田火災海上(同)が当館を開設した際は、画家自身から寄託を受けた東郷作品を主に展覧。2年後に東郷が急逝すると、遺族からそれまでの寄託作品を含む156点の寄贈を受けた。このコーナーでは油彩画、ブロンズ像、エッチング、水彩など17点を展示している。

「四重奏」(手前、1955)などおなじみの画風の女性像がずらり。

<第4章 風景と人の営み>

19世紀から20世紀にかけて欧米の風景を描いた作品を紹介する。ゴーギャン(1848-1903)の「アリスカンの並木路、アルル」(1888年)はガラスケース越しではなく、直接見られる形になった。撮影できる。

これに加えて、人気のグランマ・モーゼス、ユトリロ、東郷青児の風景画を計13点を紹介している。

<第5章 人物を描く>

19世紀後半から20世紀の画家たちが描いた18点で、ルオー、シャガール、藤田嗣治、ピカソ、ドニ、岸田劉生など豪華な顔ぶれ。中でも注目はルノワール(1841-1919)の「浴女」(1892-1893)。過去に修復された際、画面全体にニスが塗布された。経年でそのニスに黄ばみが生じ、作品全体の色彩が沈んで見えてきていた。このため、専門家の手でニスの除去作業が行われ、作品に手を加えずにオリジナルの状態に近づけることをめざした。「ルノワールが描いた当時の、鮮やかな色がよみがえりました」と中島館長。

<第6章 静物画―花と果物>

フィナーレは、セザンヌの「りんごとナプキン」(1879-80)、そしてゴッホの「ひまわり」(1888)という豪華な2点。

2点とも、以前より少し低い位置に展示され、見やすくなった印象。「ひまわり」は作品とガラスの距離も近くなった。さらに、ひまわりの展示ケースには、ドイツから取り寄せた無色のガラスを採用した。「ガラスに映り込みがほとんどなく、自分の顔が気になることもなく、限りなくリアルに近い環境で見ていただけると思う」(中島館長)。

なお現在、国立西洋美術館(東京・上野)で開催中の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」でも「ひまわり」が展示されている。ゴッホは、花瓶に生けられた「ひまわり」の絵を生涯で7点描いており、うち2点を東京で見ることができる。

入口では陶板の「ひまわり」がお出迎え

内覧会に際し、記者会見を行った中島館長は「新型コロナウイルスで現在も厳しい状況だが、この美術館を、心に一筋の光が灯る場にしていきたい」と抱負を述べた。同館のキャッチフレーズの「この街には、《ひまわり》がある。」の意味については、「かつては無機質なビルの街だった西新宿も、最近はマンションが次々に建ち、文化施設も増えて、人が生活を楽しむ街になりつつある。この地域に密着し、当たり前に美術館があり、当たり前に《ひまわり》がある、という存在になっていきたい」と語った。

同展は日時指定入場制。美術館ではチケットは販売しないので、あからじめウェブなどで日時指定チケットを購入する。料金は一般1000円、大学生700円、高校生以下無料。詳しくは同館ホームページへ。

(読売新聞東京本社事業局専門委員 岡部匡志)

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