リポート「チェコ・デザイン 100年の旅」 京都国立近代美術館

ラジスラフ・ストナル、カヴァリエル・ガラス工房「耐熱ガラスのティーセット」(1931年)

チェコ・デザイン 100年の旅

2020年526日(火)~75日(日) 京都国立近代美術館(京都・岡崎公園)

*202036日から510日までの予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止のために臨時休館となり、新たな会期で開催されている。

 

チェコ国立プラハ工芸美術館の所蔵作品を中心に、19世紀末のアール・ヌーヴォーから21世紀初頭までのチェコのデザインの歩みを紹介する「チェコ・デザイン  100年の旅」展が京都国立近代美術館で開かれている。

チェコの美術・工芸は、アール・ヌーヴォーの旗手ミュシャ(母国のチェコ語ではムハ)のポスターや絵画が人気を集め、建築やアニメなども個別に紹介されてきたが、1世紀にわたるデザインの歩みを回顧する企画は日本では初。同美術館の担当キュレーター本橋仁さんは「チェコのアートの知られざる魅力を発見できるはず」と語る。家具や食器、装丁本、ポスター、プロダクト・デザイン、玩具、アニメなど約250点が時代順に並ぶ。愛知、富山、東京などに続く京都会場では、独自の木製フレームを多用したシンプルな会場装飾が作品を引き立てている。

入り口付近。突き当り(椅子の左奥))にミュシャのポスターが見える

 

スタートは19世紀末から20世紀初頭にかけてのアール・ヌーヴォーで、ミュシャのポスターなどが並ぶ。次に、パリのキュビスムをチェコ独自に解釈してクリスタル(水晶・結晶)型をモチーフとする幾何学的なデザインにしたチェコ・キュビスムの作品が続く。建築を中心に、家具や食器などへと展開し、チェコ独自のモダニズム運動として注目された。やがて民族的装飾をほどこしたものも現れた。

ヨハン・レッツ・ヴェトヴェ・ガラス工房の花瓶など

 

チェコ・キュビスムの工芸品

 

パヴェル・ヤナーク「クリスタル(結晶)型小物入れ」(1911年)
パヴェル・ヤナーク「コーヒーカップ&ソーサー」(成形:1914年、絵付:1920年代)

 

1930年代に入ると、それまでは上流階級のための高級な趣味・嗜好の対象だった「デザイン」が中流階級にも浸透する。デザイナー自らが街に会員制のショールームを設ける、という大衆への新しいアプローチも人気を呼んだ。本橋さんはこの時期のデザインを「知られざるチェコの一面では?」と見どころのひとつにあげた。

ラジスラフ・ストナル、カヴァリエル・ガラス工房「耐熱ガラスのティーセット」(1931年)
ラジスラフ・ストナル「ゾウ」(国立家内工業教育研究所のためのデザイン)(1930年頃)

 

第二次世界大戦の後、チェコは共産主義圏に入ったが、デザイン制作においては必ずしも抑圧・統制一辺倒ではなかったといい、親しみやすく軽快なセンスの感じられるデザインが生まれている。市川崑監督の記録映画「東京オリンピック」のチェコでの上映にあたって描かれたポスターはその一例だろう。冷戦後は、ウィットと洗練さに、独創性も加わったデザインが現れた。

イジー・ヒルマル「映画ポスター『東京オリンピック』」(1966年)

 

ジェリー・コザ「多機能椅子 でんぐり返し」(2002年)

 

各セクションの最初には、各時代の椅子が展示されている。「椅子はその時代の技術とフォルムを一目で見せてくれる」と本橋さんは語る。一度通り過ぎた後、回り込むように進むと、半透明のボード越しにシルエットが目に入る。フォルムが抽象化されたシルエットの美しさは、この展覧会のかくれた見どころかもしれない。

 

アニメも上映されている。写真(下)はズデニェク・スメタナ「朝の決闘」(1964年)の一場面。

 海外渡航が難しい今、日本にいながらチェコ発見の旅ができそうな、ユニークな展覧会だ。

同館では「チェコ・ブックデザインの実験場 1920-1930s」も開催中(712日まで)。大阪中之島美術館(2021年度開館予定)が所蔵するチェコの書籍約120冊を展示。20世期にチェコ で生まれた本の装丁をまとめて見ることが出来る。

 

 

 

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