特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」
2020年3月13日(金)~5月10日(日)東京国立博物館 本館 特別4・特別5室
新型コロナウイルス感染拡大防止のため臨時休館となり、最終的に中止となった。
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世界遺産・法隆寺は7世紀に創建され、金堂は世界最古の木造建築として知られる。金堂の12面の壁画は仏教絵画の傑作とされるが、1949年(昭和24年)の失火で重大な損傷を被った。文化財保護法はこの災禍を契機として1950年に制定された。「特別展 法隆寺金堂壁画と百済観音」は、同法制定70年を機に、金堂壁画の魅力を文化財保護の視点で振り返り、同時に23年ぶりに国宝「観音菩薩立像」(百済観音)を東京で公開する企画だった。
内覧会まで開かれながら、ついに開幕を迎えるに至らなかった会場の様子をお伝えする。
臨時休館延長を伝えるお知らせが張られた案内看板(5月、東京国立博物館)
背景や見どころは、昨年9月に「23年ぶりに国宝『百済観音』が東京へ 東博で特別展『法隆寺金堂壁画と百済観音』」で伝えた通りだが、2部屋にわたって壁画模本や仏像が並ぶ会場は荘厳な美の空間となり、同時に古美術にひかれて描きとめてきた先人たちの文化財保護の歩みも浮かび上がった。
「百済観音」を壁画の模本が囲んだ (3月16日に開かれた報道内覧会より)
法隆寺金堂
「法隆寺金堂模型」 昭和時代 20世紀 奈良・法隆寺蔵 会場の入り口に置かれた、焼損する前の金堂模型。金堂の内陣は巨大な厨子のようだ。
江戸時代
祐参筆「阿弥陀浄土図」江戸時代・嘉永5年(1852年)山梨・放光寺蔵 現存する最古の金堂壁画模写。阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩のほか、明治時代に模写が行われた時にはほとんど見えなくなっていた化生菩薩も描かれている。元の図像を推定する資料としても貴重な作品
明治時代
桜井香雲筆 「法隆寺金堂壁画(模本)」 明治17年(1884年) 東京国立博物館蔵 国から法隆寺への依頼により、画工・桜井香雲が壁画全12面を写し取った
大正時代
鈴木空如筆「法隆寺金堂壁画(模本)」「第十号壁 薬師浄土図」(部分) 大正11年(1922年) 秋田・大仙市蔵 鈴木空如は東京美術学校(現・東京藝術大学)で薫陶を受け、仏教芸術と文化財保護の普及にあたった
昭和の技術 高精細のガラス原版
重要文化財「法隆寺金堂壁画 写真ガラス原板」 佐藤浜次郎ほか撮影 昭和10年(1935年)奈良・法隆寺蔵 法隆寺の昭和大修理に伴い、文部省法隆寺国宝保存事業部は金堂の解体修理前に金堂壁画の原寸大撮影を行った。総計363枚に及び、「空前の大事業」とも呼ばれた。大壁は一面を42分割、小壁は24分割して撮影され、4Gを上回るとも言われる精緻な図像が記録された
最新のテクノロジー
「第六号壁阿弥陀浄土図」と「釈迦三尊像」(いずれもスーパークローン文化財) 東京藝術大学COI拠点制作 2019年 現代の技術で飛鳥の美の再現に挑んだ
国宝仏像
国宝「吉祥天立像」(左) 平安時代・承暦2年(1078年) 奈良・法隆寺蔵
国宝「観音菩薩立像」(百済観音) 飛鳥時代・7世紀 奈良・法隆寺蔵 水瓶をもつ左手の優美な形も間近に見られた。奥に見えるのは祐参筆「阿弥陀浄土図」
背面も見られる360度の展示は特別展ならでは
百済観音は1997年にパリと東京で公開された後“門外不出”となったが、聖徳宗管長で法隆寺の住職だった大野玄妙(おおの・げんみょう)さんが平和への願いを込めて特別に出展を決めた。大野さんは2019年10月に他界。展覧会も公開には至らなかったが、その思いは「里帰り」した百済観音とともに生き続けるだろう。
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展覧会図録は東京国立博物館ミュージアムショップなどで販売中。詳しくはホームページで
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