フォト・リポート 「ネオ.ダダの痕跡」展 ギャラリー58(東京・銀座)

2020年3月18日(水)~4月4日(土) 東京・銀座 ギャラリー58
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前衛芸術グループ、ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ(略してネオ・ダダ)が廃品を利用した作品や過激なパフォーマンスで登場し、注目を集めたのは1960年。グループは1年足らずで解散したが、彼らの反芸術的な精神は21世紀に至っても風化することはなかったようだ。
東京・銀座のギャラリー58で開かれている「ネオ・ダダの痕跡」展は、ネオ・ダダ結成60年の節目に、主要メンバーだった赤瀬川原平(1937-2014年)、篠原有司男さん(1932年生まれ)、風倉匠(かざくら・しょう:1936-2007年)、吉野辰海さん(1940年生まれ)、田中信太郎(1940-2019年)の作品計38点を集め、この前衛芸術運動の息吹を伝えている。

赤瀬川の「無題」作品は、ネオ・ダダが結成された60年代に描かれた、精神分析学者ライヒの著作の挿絵原画。出版後は赤瀬川夫妻が手元に秘蔵していた初公開のペン画だ。

ギャラリー58の画廊主の長崎裕起子さんは、いまも現役の作家として活動を続ける篠原さん(88歳、ニューヨーク在住)と吉野さん(80歳)には「ネオ・ダダの今を伝えたいと思い、新作をお願いした」と語る。篠原さんは今年1月のパリ訪問を題材にした大作を送ってきた。
篠原さんの作品は色彩の豊かさや躍動感が特徴だが、今回はパリの街角で見かけたライオン像、映画の広告塔、夫人との朝食の情景などを題材に、「考えない写実画」をテーマに描き上げたという。対象の選択や構図の組み立てにあたって、湧き出すエネルギーに任せて思いのままに描いたということだろう。


吉野さんは長崎さんの求めに応じて新たなシリーズ「此処へ」を手がけた。


田中の作品は、要素を切り詰めたミニマリスム的な作風が鮮烈さを感じさせる。
「新作をお願いしたお二人が、挑み、脱皮し続ける『ネオ・ダダ精神』をリアルタイムで見せてくれたのが嬉しかった」と長崎さんは振り返る。半世紀以上前の時代精神を想像させる、熱を帯びた展示空間だ。4月4日まで。
(読売新聞東京本社事業局専門委員 陶山伊知郎)