リポート アーティゾン美術館 開館記念展

長期休館中だった東京・京橋のアーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館、2019年に改称)が1月18日、旧ブリヂストン本社の跡地に建てられた高層ビル「ミュージアムタワー京橋」(地上23階)内に開館した。約5年にわたる工事・準備期間を経て、展示室は旧館の約2倍に。照明や空調も最先端の機器に一新された。
「見えてくる光景 コレクションの現在地」と題された開館記念展では、古代エジプトから現代まで、休館中の新収蔵作品を含む206点が展示されている。3月31日まで。
入館は日時指定予約制。チケットは同美術館のウェブサイトから購入する。
再会
国際的にも評価の高いコレクションが久々に公開された。マネ「自画像」、セザンヌ「サントヴィクトワール山とシャトー・ノワール」、青木繁「海の幸」、ポロック「ナンバー2、1952」などとの久しぶりの「再会」を楽しむファンも少なくない。


初お目見え
休館中に収集した絵画・彫刻など184点から、カンディンスキー、ジャコメッティ、ロスコ、松本竣介らの新収蔵作品31点が「デビュー」。

斬新な展示
展覧会は2部構成で、第1部の「アートをひろげる」(6階)では、新しい造形世界を切り拓いた近現代美術の歩みに焦点をあてている。1870年代から現在に至るまでの作品74点が、洋の東西を越えて、ほぼ年代順に展示されている。
柱のないスペースに仮設壁が自在に立てられ、一見迷路のような空間だが、立つ位置を変える度に新しい「景色」が広がる。


大正時代の夭折の画家・関根正二の作品「子供」はマティス、ピカソを従えるかのように展示されている。

第2部「アートをさぐる」(5、4階)は、「装飾」「原始」「記録」など7つのテーマにしたがって、古今東西の表現の原点にアプローチする試み。古代エジプトから現代美術まで132点の作品が、時代や地域を越えて、一堂に展示されている。




日本の美術ファンにとっては、青木繁、関根正二、松本竣介ら人気作家の作品を、同時代の西洋画家の作品と比べて見られる刺激的な場になりそうだ。五輪イヤーとなる2020年は、海外からの観光客も多く見込まれ、海外の美術愛好家にとっては馴染みの西洋美術とともに日本の近代美術を知る絶好の機会となるだろう。
展示を担当した学芸員の島本英明さんは「日本の近現代美術を西洋の作品と並べてみた。研究者にも一般の方にも発見があるはず」と期待を語る。

名作ぞろいのコレクションとともに、近現代美術の流れをふり返ることができる贅沢な機会だ。4月からは現代美術家・鴻池朋子の展覧会や、ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展なども予定されている。
(読売新聞東京本社事業局専門委員 陶山伊知郎)
