リポート 代表作「東京駅」の中で体感する建築家・辰野金吾の世界。東京ステーションギャラリーで11月24日まで

「日本近代建築の祖」とも呼ばれる辰野金吾(1854-1919年)の人間像に迫る「辰野金吾と美術のはなし」展が東京・丸の内の東京ステーションギャラリーで開かれている。同ギャラリーが位置する東京駅丸の内駅舎は、辰野の代表作のひとつで1914年(大正3年)に竣工した「東京駅丸ノ内本屋」(重要文化財)そのもの。重厚かつ温かみのある空間の中で、ロンドン留学中のスケッチ帳や東京駅の図面、親しかった画家・松岡壽(ひさし)の油彩、スケッチなど約70点が展示されている。11月24日まで。

明治の学び舎(まなびや)
辰野が通った工部大学校には、工部美術学校が附属機関として設けられた。初の官設美術学校で松岡壽は第一期生だった。

英国留学
大学教育機関「工学寮(工部大学校)」を首席で卒業した辰野は、英国へ官費留学する。師ウィリアム・バージェスの事務所で実地見習いをする傍ら、英国内外を旅して城や大聖堂などのスケッチにも勤しんだ


建築家として、美術の理解者として
帰国後は教育者、在野の建築家として活躍。留学時代に出会った洋画家・松岡壽とは終生の友となった。松岡は後に、日本初の洋画家団体・明治美術会の創設に関わった。辰野は明治美術会の活動を支援したほか、日本美術の振興にも尽力した。
後に辰野が建築の監督役を務めた大阪市中央公会堂(1918年)では、天井画などの装飾に松岡が起用された。辰野の意向を反映したものと考えられている。


佐賀・唐津藩の下級藩士の家に生まれた辰野が、明治初期に創設まもない工部大学校で学び、海外体験を経て、明治・大正の日本近代建築の屋台骨を担うに至った歩みを、代表作「東京駅」そのものの中で振り返ることができる企画。「ここでしかできない」展覧会のひとつといえそうだ。

ワークショップでオリジナルグッズ
展示室に続いて「好きな“金吾”モチーフでつくるオリジナルグッズ」のコーナーが設けられている。100種類以上のモチーフから好きな組み合わせを選んでオリジナルデザインのTシャツやバッグをつくるワークショップだ。


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辰野金吾と美術のはなし
没後100年特別小企画展
2019年11月2日(土)-11月24日(日) 東京ステーションギャラリー (東京・丸の内)
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連携企画として、日本銀行金融研究所の貨幣博物館(東京都中央区)で「辰野金吾と日本銀行―日本近代建築のパイオニア―」展も開催されている。辰野金吾が設計に関わった経緯や日本銀行本店の本館、支店の建物を紹介している。
辰野金吾と日本銀行―日本近代建築のパイオニア―
2019年9月21日(土)-12月8日(日) 日本銀行金融研究所貨幣博物館(日本銀行本店本館)