建築家の安藤忠雄さんが東京・銀座 蔦屋書店でイベント

建築家・安藤忠雄さんが自分の建築作品をみずから撮影した写真を収めたポートフォリオ集『ANDO  BOX  VI』(企画・出版:株式会社アマナ/株式会社アマナサルト)刊行の発表・展覧会が10月23日午後、東京・銀座 蔦屋書店の「GINZA ATRIUM」で行われた。展覧会「安藤忠雄 ─ 光を求めて」は11月4日まで。

安藤さんは撮りためた建築写真の中から「光の向こうに希望があるという感じの写真を探して集めた」とあいさつ。「当時は結構、普通のカメラできっちり撮っておりました。だんだんと今は携帯で撮るようになって、ほとんど力が出ないんですね。写真は瞬間を切り取る緊張感が全てですから」などと語った。
その後、展示壁に自分の建築作品のイメージを描くおなじみのパフォーマンスも。今年5月、神戸市の兵庫県立美術館にオープンした「Ando Gallery」前にある「海のデッキ」に設置した立体作品「青りんご」(モチーフは米国の詩人サムエル・ウルマンの「青春の詩」)のドローイングも披露した。

『ANDO  BOX  VI』は限定20部。「地中美術館」(2004、香川県直島町)、「光の教会」(1989年、大阪府茨木市)、「ユネスコ瞑想空間」(1995年、パリ)などを撮影した高精細のプラチナプリント(プラチナ、パラジウムを使用した写真印画法)による写真15点と、ドローイング3点、地中美術館のコンセプト模型1点がセットになっている。

安藤さんは「建築の光」と題して、次のような「作品コンセプト」も発表した。

 

建築の光

忘れ難い建築との出会いがある。その一つが二〇代後半、初めての世界旅行の際に訪れたル・コルビュジエのロンシャン礼拝堂だ。モダニズムの礎を築いた巨匠が、人生の最後に、その道程を否定するかのごとく、創り上げた奔放なコンクリートの造形。湾曲する壁の狭間から内部に足を踏み入れると、そこはありとあらゆる角度から、ありとあらゆる種類の〝光〟が差し込む混沌の空間だった。その衝撃は一日では受け止めきれるものでなく、翌日、翌々日と訪問を重ねた。三日目に、ミサの場面に遭遇、美しくも激しい光が降り注ぐ空間で、人々が肩を寄せ合い、一心に祈る情景を目にした。ただ光を追い求めるだけで、建築ができることを、私はこのとき知った。

人工物とは全て、いつかは風化して潰えるものだ。その宿命に抗い、永遠性を希求する人間の営為の一断面が、ギリシアに始まる建築の歴史なのかもしれないが――かなうならば私は、物質それ自体や形式ではなく、記憶として、人々の心の中に、永遠に生き続ける建築をつくりたい。

その理想に近づくべく、コンクリートによる〝裸形〟の空間を試みる。表層を覆う一切の装飾物を削ぎ落すことで無地のキャンバスのような〝余白〟が現れる。そこに自然の断片が映し出されたときに生まれる空気、生命感に、人間の魂に訴える力を期待する。その自然の断片の象徴が、光であり、それによって浮かび上がる影の表情だ。

その場所でしか出来ない、その建物だけが持つ光の空間。それを、いかなる骨格・構成をもって、いかなるヴォリューム、オリエンテーションの光をつくりだすか。こうして、ただ光を追い求める時間を今日まで過ごしてきた。手ですくい取りたくなるような量感の光。心深くにまでしみ込んでくるような、静かで柔らかな光。イメージずっと心にあるのだが、現実の仕事では、なかなかそこまで辿り着かない。試行錯誤を続けている。

作品集のサインに応じる安藤さん=銀座 蔦屋書店で

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