リポート  ゴッホの言葉とともに見る「ゴッホ展」 東京・上野の森美術館で開催中

 

 

「炎の画家」とも呼ばれるフィンセント・ファン・ゴッホ(1853~90年)の初期から晩年までの歩みを追う「ゴッホ展」が東京・上野の森美術館で開かれている。

ゴッホは激しい筆致と鮮やかな色彩による作品で知られるが、わずか10年ほどの画家生活の間に、故国オランダの「ハーグ派」やパリで見た「印象派」など、さまざまな美術に出会い、それらの影響を受けつつ独自の画風を築いた。初期のまだ筆遣いがぎこちない頃の作品から糸杉、麦畑などの代表作まで油彩・素描など40点を、ゴッホに影響を与えたと思われる当時の美術作品約30点と共に紹介し、ゴッホが「炎の画家 ゴッホ」とるまでの足跡をたどる企画だ。

最初期の作品やハーグ派の作品は、日本ではこれまで十分に紹介されたことがなく、ゴッホの原点のひとつを伝えるものとして注目される。2020年1月13日まで。その後、兵庫県立美術館に巡回する。

作品とともに紹介されているゴッホの言葉とともに、展覧会の流れをたどってみよう。

  

「農民の暮らしのすべてを観察して描くよ」

 

27歳の頃に画家を志しゴッホは、やがてオランダの「ハーグ派」の影響を受ける。農民の暮らしに目を向けた作品が多い。

 

フィンセント・ファン・ゴッホ 《疲れ果てて》 1881年9-10月 鉛筆・ペン・インク・筆・不透明水彩、簀の目紙 23.4×31.2cm P. & N. デ・ブール財団 © P. & N. de Boer Foundation

 

叙情が漂う街角の情景も描いている

 

 

「誠実にやれと諭してくれたのは他ならぬマウフェ自身だった」 ~ハーグ派の画家たち~

マウフェはゴッホの遠戚にあたり、山野や水辺を詩情をまじえて描写したハーグ派の画家。ゴッホは画家を志した後、マウフェに教えを請い、ハーグ派の他の画家とも交流した。

ハーグ派の画家たちは、オランダ伝統の落ち着いた写実的画風で、田園や海岸の風景を描いた

 

アントン・マウフェ 《4頭の曳き馬》 制作年不詳 油彩、板 19.5×32cm ハーグ美術館 © Kunstmuseum Den Haag

  

「作業中の農民の姿を描くこと」

ゴッホはよく農民を描いた。ひとりひとりに目を向け、大地で働き、身を寄せ合って暮らす姿をとらえている。生活の場の片隅にある食べ物や生活用具も題材となった。1884年頃からは油彩による大作に取り組み、新たな一歩を踏み出した。

 

地元の農家の娘をモデルに描いた「農婦の頭部」(右端)など

  

フィンセント・ファン・ゴッホ 《ジャガイモを食べる人々》 1885年4-5月 リトグラフ(インク・紙) 26.4×32.1cm ハーグ美術館 © Kunstmuseum Den Haag

 

 

「ああ、クロード・モネが風景を描くように人物を描かなければ  僕は印象派が何なのかすらわかっていなかった」

 18862月にゴッホは弟テオを頼ってパリに出た。約2年のパリ滞在中に印象派や日本の浮世絵などとの出会いを経て、明るい色調が現れる。

 

セザンヌ、モネらの作品が並ぶ印象派のコーナー

 

クロード・モネ 《クールブヴォワのセーヌ河岸》 1878年 油彩、カンヴァス 50.5×61cm モナコ王宮コレクション © Reprod. G. Moufflet/Archives du Palais de Monaco

 

シスレー、ピサロら印象派の画家とともに、ポスト印象派のゴーギャン、点描で知られるシニャックにもゴッホは注目していた

 

ポール・シニャック「レザンドリー、橋」  ゴッホはスケッチ旅行を共にするなどシニャックと親しく、シニャックが得意とする点描技法を自ら試してもいる。後にゴッホがアルルで入院した折、シニャックは見舞いに訪れている

 

 

「太陽にさらされながらとにかく仕事をしよう」

1888年に移り住んだ南仏アルルで、ゴッホの色と筆遣いは大胆になり「ゴッホらしさ」がはっきり現れる。南仏の明るい陽光が「ゴッホ」を開花させたかのようだ。

 

アルル時代の作品

 

 

フィンセント・ファン・ゴッホ 《麦畑》 1888年6月 油彩、カンヴァス 50×61cm P. & N. デ・ブール財団 © P. & N. de Boer Foundation

 

 

「そうだ僕は絵に命を懸けた」

 ゴーギャンとのいさかいで自らの耳を斬り落とすなど、ゴッホは精神的に不安定さを増すが、同時にゴッホらしさも研ぎ澄まされ、糸杉や花、夜空を描いた名作が次々と生まれた。

「命を懸けた」という言葉は、自身の道にゴッホが確信を得たことを物語っているようだ。

  

フィンセント・ファン・ゴッホ 《糸杉》 1889年6月 油彩、カンヴァス 93.4×74cm メトロポリタン美術館 Image copyright © The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource, NY

 

ハーグ時代などゴッホの知られざる一面にふれつつ、糸杉などゴッホらしさも堪能できる味わいのある展覧会だ。

 

ゴッホ展

1011 () 2020113 (月・祝) 上野の森美術館(東京・上野公園)

2020125日(土)~329日(日) 兵庫県立美術館

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