見どころ紹介「チェコ・デザイン 100年の旅」展 世田谷美術館で開催中

 

チェコ国立プラハ工芸美術館の所蔵作品を中心に、19世紀末のアール・ヌーヴォーから21世紀初頭までのチェコのデザインの歩みを紹介する「チェコ・デザイン 100年の旅」展が世田谷美術館(東京・砧公園)で開かれている。建国100年(2018年)と、民主化を実現した「ビロード革命」30年(2019年)を機に、約1世紀にわたるチェコのデザインの魅力に焦点を当てた企画だ。

アール・ヌーヴォーの旗手アルフォンス・ミュシャから、チェコ・キュビスム、アール・デコ、さらに家具や食器、装丁本、ポスター、プロダクト・デザイン、玩具、アニメを含む、デザインの歴史を俯瞰する約250点を、時代を追って紹介している。11月10日まで。その後、京都に巡回する。

 

冒頭の扇型のギャラリーでは、アール・ヌーヴォーからアール・デコへの展開が紹介されている

 

 

ミュシャの作品が並ぶアール・ヌーヴォーのコーナー

 

チェコのキュビスム

ヨーロッパの前衛芸術、キュビスムは、チェコでは絵画、彫刻だけでなく、日用品、インテリア、建築にも及び、1911年から14年までの間に多くの作品がつくられ、チェコ・キュビスムと呼ばれた。切子状の屈曲した形態などが特徴だ。

パヴェル・ヤナーク「コーヒー・セット」(1914年頃)

 

アール・デコへ

この後、1918年のチェコスロヴァキア共和国独立(93年にチェコとスロヴァキアに分離)を機に、幾何学的形態と抽象的単純化に民族芸術的要素が加わったチェコスロヴァキアのアール・デコが開花する。写真(下)は、ヤナークがキュビスム時代につくった器に、数年後、自ら民族的装飾を絵付けしたもの。チェコの陶磁器における、キュビスムからアール・デコへの連続性と変化を端的に物語る。

パヴェル・ヤナーク「コーヒーカップ&ソーサー」 1914年(成形)、1920年代(絵付け)

 

 1925年にパリで「アール・デコ博覧会」が開かれると、チェコでもシンプルで都会的なポスターが現れ、人気を呼んだ。ポスターは民族のアイデンティティーや芸術上の先進性をアピールする手段でもあった。 

ハンス・ヤケシュのポスター「ブルナ 永遠の靴」(1929年)

 

アレクサンデル・ヴラジミール・フルスカによるレストランの宣伝ポスター「バランドフ・テラス」(1932年) アール・デコ風の女性像と写真を組み合わせたモダンなイメージに、若いカップルが見入っていた

 

20世紀後半の展開

第二次世界大戦を経て、チェコスロヴァキアは共産主義圏に組み込まれた。自由な表現は制約されたが、50年代から60年代の実用品のデザインには穏やかで、親しみやすい、軽快なセンスが感じられる。

 

国産車「シュコダ1200」のポスター(1952‐56年:左)と「チェゼタ・スクーター 501型」(1957年)
右はチェコで公開された映画「東京オリンピック」のポスター(1966年)

 

1968年の民主化運動「プラハの春」が挫折すると、ソ連の強い統制下にデザインも型にはまるが、1989年のビロード革命を経て新たな歩みを始めた。

トゥチェク 「ランプ『PUR』」(1998年)  ビロード革命後の自由化の中で、照明器具にも斬新なデザインが登場した。訪れた子供たちも「これがランプ?」と言いながら光源さがしをしていた
ヴェルチョフスキー「花瓶 『ウォータープルーフ』」 2001年  ゴム長靴にしか見えない花瓶。 若い来館者の間で人気があるという

  

これまでチェコの美術・工芸に関しては、ボヘミアングラスやミュシャ以外にはあまり紹介される機会がなかった。今回の展覧会は、政治に翻弄されつつもウィットと洗練さを失うことのなかったチェコのアートの歩みにふれられる、絶好の機会といえそうだ。 

チェコ・デザイン 100年の旅

2019年46日(土)~519日(日) 岡崎市美術博物館(愛知・岡崎)

2019年61日(土)~728日(日) 富山県美術館(富山市)

2019年914日(土)~1110日(日) 世田谷美術館(東京・砧公園)

202036日(金)~412日(日) 京都国立近代美術館(京都・岡崎公園)

 

 

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