23年ぶりに国宝「百済観音」が東京へ 来年3月、東博で特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」

1949年に火災で焼損し、翌年の文化財保護法成立や1955年の「文化財防火デー」制定のきっかけとなった法隆寺(奈良県斑鳩町)の金堂壁画(飛鳥時代・7~8世紀 重要文化財)の全貌を、火難の前に行われた精巧な模写や、現在の金堂内に安置されている再現壁画で紹介する特別展が2020年3月13日~5月10日、東京・上野公園の東京国立博物館で開かれる。

1997年に同館で展示されて以来、東京での公開は23年ぶりとなる国宝「百済観音」(観音菩薩立像 飛鳥時代・7世紀)の出品も決定。9月24日に同館で開かれた報道発表会で主催者(東京国立博物館、法隆寺、朝日新聞社など)が発表した。

1949年 焼けた金堂壁画に合掌する佐伯定胤・法隆寺貫主=同年1月27日付の朝日新聞(大阪本社版)朝刊一面に掲載された写真

模写や再現壁画で焼損前の姿を紹介

法隆寺の金堂壁画は、創建当初の伽藍が天智9年(670年)に焼失し、再建された際に制作されたと考えられている。堂内の本尊・釈迦三尊像や諸仏を取り巻く外陣(げじん)に、釈迦浄土図や阿弥陀浄土図などを描いた大壁(高さ約3.1m、幅約2.6m)4面、菩薩たちを単独で描いた小壁(高さ約3.1m、幅約1.5m)8面の計12面が描かれていた。

しかし敗戦から間もない1949年1月26日早朝、解体修理中だった金堂から出火して壁画の大半が焼け、放水の圧力で第6号壁の阿弥陀如来像の頭部などが欠損した。焼損した壁画は表面にアクリル樹脂を吹き付け、裏側にはステンレス板を固定して保護され、境内の収蔵庫に原則非公開で保管。その一方、焼損前の模写や写真を基に再現壁画が制作され、現在の金堂内を荘厳している。

過去に行われた模写について説明する東京国立博物館の瀬谷愛・保存修復室長

 

展覧会を担当する東京国立博物館の瀬谷愛・保存修復室長の説明によると、金堂壁画は江戸時代から昭和10年代にかけ、模写や写真撮影などによって焼損前の姿が記録されている。今回の特別展では、画工の桜井香雲が明治17年(1884年)頃、日本画家の鈴木空如(くうにょ)が大正11年(1922年)に原寸大で描いた摸本などから9面(展示替えあり)を展示する。

法隆寺金堂壁画(摸本) 第10号壁 鈴木空如摸
大正11年(1922) 秋田県大仙市蔵 前期(3/13~4/12)展示

 

法隆寺金堂壁画(摸本) 第6号壁 阿弥陀浄土図 桜井香雲摸
明治17年(1884)頃 東京国立博物館蔵
後期(4/14~5/10)展示

 

法隆寺金堂壁画(再現壁画) 第12号壁 十一面観音菩薩像 前田青邨ほか筆
昭和43年(1968) 法隆寺蔵 後期(4/14~5/10)展示 写真便利堂

「百済観音」東京へのお出ましは1997年以来

壁画の模写などとともに、金堂ゆかりの仏像も展示。昭和初期まで金堂内に存在し、現在は大宝蔵院の百済観音堂に安置されている国宝「百済観音」(観音菩薩立像、像高約2.1m)は1997年9~10月、「フランスにおける日本年」にパリのルーブル美術館で海外初公開されたのに続き、東京国立博物館で同年11~12月に特別展観「百済観音:文化財指定制度100周年」として公開されて以来、東京では23年ぶりの展示となる。また、現在の金堂内で本尊の左右に安置された国宝「毘沙門天立像」「吉祥天立像」(いずれも平安時代・承暦2年=1078年)も出品される。

国宝 観音菩薩立像(百済観音) 飛鳥時代・7世紀 法隆寺蔵 通期 写真飛鳥園

 

国宝 毘沙門天立像 平安時代・承暦2年(1078) 法隆寺蔵 通期
画像提供;奈良国立博物館(撮影:森村欣司)
国宝 吉祥天立像 平安時代・承暦2年(1078) 法隆寺蔵 通期
画像提供;奈良国立博物館(撮影:森村欣司)

「観音様の力で世の中を平和に」

法隆寺の大野玄妙管長に代わって報道発表会に出席した古谷正覚執事長は「焼損した金堂の壁画、部材は収蔵庫の中で再現しているが、焼けた時の臭いがまだほのかに残っている。2015年から金堂壁画の保存活用委員会を設け、皆様に収蔵庫を見ていただけないか検討していただいているところ。今回、金堂壁画について認識していただくために、展覧会で焼損前の壁画をご覧いただくことを考えた」と法隆寺としての思いを説明し、“門外不出”だった百済観音の出展について「最近の世の中は不幸な出来事がいろいろ起こっており、なんとか観音様の力で世の中を平和にしていただければと思っている」と述べた。

(読売新聞東京本社事業局専門委員 高野清見)

あいさつする法隆寺の古谷正覚執事長

特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」
2020年3月13日(金)~5月10日(日)
※前期展示:3月13日(金)~4月12日(日)、後期展示:4月14日(火)~5月10日(日)
東京国立博物館 本館 特別4・5室

国宝 法隆寺金堂と五重塔 写真飛鳥園

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