ウィーン・モダン展から 名士たちの姿 細密に

グスタフ・クリムト 「旧ブルク劇場の観客席」 1888年 ウィーン・ミュージアム蔵 ©Wien Museum / Foto Peter Kainz

 瀟洒(しょうしゃ)な劇場を埋める人、人、人。着飾ったウィーンの名士たちが、手前の舞台側を向いている。ほぼ1メートル四方の画面には、100人以上の男女が細密に描かれている。すべて実在した人物だ。
 1888年、画家グスタフ・クリムト(1862~1918年)らは、ブルク劇場の建て替えに際し、旧劇場の観客席を記録する水彩画を依頼された。旧劇場は女帝マリア・テレジアの命で建てられ、ベートーベンの交響曲第1番が初演された場所でもある。
 正確な遠近法で写実的に描かれた本作は、クリムトの出世作の一つとなった。制作中も話題を集めていたようで、画家のアトリエには、記念に描き込んでもらおうと多くの人が詰めかけたという。絵の中には、クリムトの弟や花形女優もいる。

 

ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道
【東京展】
会期:開催中~8月5日(月)
会場:国立新美術館(東京・六本木)
【大阪展】
会期:8月27日(火)~12月8日(日)
会場:国立国際美術館(大阪・中之島)