兵庫県立美術館に安藤忠雄さんのギャラリー開館

自分が設計した美術館にギャラリーを寄付

神戸市中央区の兵庫県立美術館(蓑豊館長)に5月23日、建築家・安藤忠雄さん(77)の建築作品や社会活動を紹介する入場無料の常設展示施設「Ando Gallery」(第2展示棟)がオープンした(写真は5月22日の内覧会で「Ando Gallery」=中央奥=の前に立つ安藤さん)。

同美術館は1995年に起きた阪神・淡路大震災の復興事業として計画され、安藤さんの設計で2002年にオープン。館内の一角に安藤さんの建築作品を紹介する小さなギャラリーがあったが、新たに独立した建物として、既存の展示棟・ギャラリー棟の間に鉄骨造り3階建て(建築面積87.82㎡、延床面積614.74㎡)の建物を建てた。約5億2000万円の設計・施工費用は安藤さんの事務所(安藤忠雄建築研究所)が全額負担し、2018年1~8月に施工。2018年9月1日付で県に寄贈された。

美術館では「増築棟の正面に見える3階の『海のデッキ』や、背後の4階にある『山のデッキ』に人が回遊しやすくなった。単なる増床ではなく、施設全体のアクティビティに刺激を与えることができる」としている。安藤さんと親交の深い蓑豊館長は「(建てた場所に前からあった)南北に伸びる巨大な石の壁をそのまま(建物内部に)入れて建物が進化した。何の違和感もない。さすが安藤建築だと思った」と評した。

美術館の既存建物の間に建てられた「Ando Gallery」。従来あった石の壁を建物内にそのまま取り込んだ(中央の上下に延びる白い帯)

 

安藤さんの建築を紹介する場所としては、香川県高松市沖の直島(なおしま)で古民家をみずから改修して2013年3月にオープンした「ANDO MUSEUM」(運営・福武財団)など、建築作品の一角に設けられたものがあるが、活動を総覧できる本格的な展示施設は初めて。関西に多い安藤建築を見に訪れるインバウンド(訪日外国人客)も多く、格好の立ち寄り先になりそうだ。安藤さんも「時々来て日本やアジアの人と話をしたい。立体的な運営をしていきたい」と語った。

「住吉の長屋」(1976年、大阪市)の模型

震災復興、光の教会・・「安藤建築」を紹介

展示室ではまず「兵庫/復興」をテーマに同美術館や県の複合施設「淡路夢舞台」(淡路島)などを紹介。兵庫県内にある安藤さんの代表作「六甲の集合住宅」(神戸市)、デザイナーのコシノヒロコさんの住宅「小篠邸」(1979~81年、83~84年にアトリエを増築=芦屋市、現在は「KHギャラリー芦屋」として予約制で公開)などを模型、スケッチなどで見せる。
さらに「原点/仕事」をテーマに、日本建築学会賞を受賞した出世作「住吉の長屋」(1976年、大阪市)、「光の教会」(1989年、大阪府茨木市)を10分の1のコンクリート模型やパネルで展示した。

「光の教会」(1989年)のコンクリート模型(左)と写真(右)
建物の中から海を臨む。前方の「海のテラス」には安藤さんがデザインした「青りんご」が置かれた

パリの最新プロジェクトも

最上階では最新の仕事を紹介。大阪市の中之島公園に設計して市に寄付する「こども本の森 中之島」(2020年3月オープン予定)や、直島で30年間にわたって設計してきたベネッセミュージアム、地中美術館、Ando Museum、さらに歴史的建造物を美術館として再生するプロジェクトなどが並ぶ。
パリの旧穀物取引所「ブルス・ドゥ・コメルス」を美術館に改造する仕事は、最新プロジェクトの一つ。ドーム内にある円形広間に高さ10m、直径30mのコンクリートの円筒を入れ子のように挿入した。来年3月にオープン予定という。

パリの旧穀物取引所「ブルス・ドゥ・コメルス」を美術館に改造するプロジェクトを説明する安藤さん
「青りんご」を撮影する来館者。背後は既存の展示棟

「青春はこれからだ」

兵庫県立美術館は山と海に挟まれた場所にあり、「Ando Gallery」は山側・海側をつなぐ通路に当たる空間に建てられた。そこでガラス張りのファサード(建物立面)を設け、館内にはトークイベントの聴衆席として使える吹き抜けの大階段を造るなど、開放感あふれる構造となっている。
屋外の既存施設「海のデッキ」には、米国の詩人サムエル・ウルマンが「青春とは人生のある期間ではない、心のありようなのだ」とうたった「青春の詩」をモチーフに安藤さんがデザインした「青りんご」(幅・奥行・高さ各2.5m)の作品が、開館に先立つ2018年12月に設置された。安藤さんは5月22日に行われた記念講演会で「りんごに触っていただいて、自分の青春はこれからだと思っていただければ」と語った。

5月22日に行われた開館記念式典

パリ、ミラノ、東京で「安藤忠雄展」

なお、国内外では安藤さんの展覧会が相次いで開かれている。

2017年に国立新美術館で開催され、約30万人を集めた「安藤忠雄―挑戦―」展は「ジャポニスム2018」の事業として再構成され、パリのポンピドゥ・センターで2018年10~12月に開催。さらに2019年5~6月にはイタリアのミラノでも開かれている。
国立近現代建築資料館(東京・湯島)では2019年6月8日~9月23日、「安藤忠雄初期建築原図展ーー個の自立と対話」展が開かれ、1990年までの手描きによる設計図面とスケッチなどが紹介される。

(読売新聞東京本社事業局専門委員 高野清見)

「青りんご」と安藤さん。FRP(繊維強化プラスチック)製のオブジェは「触っていただいて、自分の青春はこれからだと思っていただければ」

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