「ジャポニスム2018」開幕企画展の報告会開かれる

 

 

昨年7月から今年2月にかけて、パリを中心にフランスで行われた日本文化・芸術の祭典「ジャポニスム2018」。美術、音楽、伝統芸能、演劇、映画など約100件の公式企画が実施された。その幕開けの企画展となった「深みへー日本の美意識を求めてー」(2018714日~821日、パリ・ロスチャイルド館。国際交流基金主催)の報告会が、422日、東京・飯田橋のアンスティチュ・フランセ東京(旧東京日仏学院)で開かれた。

同展のキュレーターを務めた長谷川祐子さん(東京都現代美術館参事、東京芸術大学大学院国際芸術創造研究科教授:写真右)と、展示用映像作品を制作した黒沢聖覇さんが、コンセプトや展示の狙いなどを語った。報告会では、会場構成を手掛けたSANAAの建築家・妹島和世(せじま・かずよ:写真左)さんも壇上に上がり、プロセスや成果を振り返った。

 

 

「深みへ」展の会場となったパリ・ロスチャイルド館

 

 旅するように

長谷川さんは、展示のテーマについて触れた。

西欧の芸術は哲学的な土台があり、異質なものが対立する中で批判的な新しい観点で統合され、創造されてきたのに対し、日本では「伝統と現在」「男性的な要素と女性的な要素」「静と動」など対立するもの同士が近づき、交わりながらも、いつまでも同じ場所で並存する文化的風土があるいう。その特性を示すことをテーマとして、縄文土器、漆器から葛飾北斎、昭和の日本画家・田中一村(いっそん、190877年)、現代美術家の李禹煥(リ・ウファン)、名和晃平(なわ・こうへい)まで約25作家、約100件に及ぶ作品を、「旅するように見られるように」構成したという。

 

 

縄文土器の展示情景(長谷川さんが監督したドキュメント映像より)

 

田中一村は日本国外で紹介されるのは初めてで、作品に合わせて黒沢さんが一村の人生などをモチーフに奄美大島の自然や詩を織り交ぜてつくりあげた映像作品も展示上映された。

 

 

展示された田中一村の作品(同ドキュメント映像より)

 

夢の中で見ているような感覚

妹島さんは、会場づくりの舞台裏について語った。

19世紀に建てられた歴史的建造物であるロスチャイルド館は、室内が過剰なほど装飾が施され、壁に作品を掛けることも一切許されなかった。そのため展示構成は難しい作業となったが、妹島さんは、特製の透明のケースをつくって室内に作品を並べたほか、窓に何重にもフィルムを貼るなどして自然光の効果を調整をした。こうした工夫により、「小さな作品も部屋の力に負けることなく展示できた一方、会場を回る際に、邸の室内装飾や庭も目に入る、夢の中で見ているような感覚が得られた」といい、「難しい問題もあったが、結果的にいい形になった」と述べた。

 

反 響

長谷川さんは、妹島さんの会場構成によって、異なるものが共存するという視点が巧みに表現され、現地のメディアで「浮遊する弁証法」と紹介されるなど手ごたえのある評価を得たという。

長谷川さんによると、ルーヴル美術館の素材の専門家らが、漆の作品や日本画に、油彩によって表される色とは異なる材質そのものの色を見出して強い関心を示した。また多くの来場者が会場の解説パネルを熱心に読んでいたのも印象的だったといい、日本文化への真剣なまなざしが生まれていたことを感じさせる。

妹島さんは「これまでにない日本美術の紹介だった。もうひと月あればバカンスから帰ってくる人たちにも見てもらえたのに(8月で終わってしまい)残念。規模を大きくしてもう一度開かれることを望む」と語った。 

 

2019年はアメリカで日本美術紹介

「深みへー日本の美意識を求めてー」展には1日平均1000人を超える来場者があったという。国際交流基金によれば、日本文化を海外に発信する取り組みは2019年も続ける。今年はアメリカ各地で美術展、音楽公演などによる「Japan 2019」が開催されている。ニューヨーク・メトロポリタン美術館の「源氏物語」展(616日まで)、クリーブランド美術館の「神道:日本美術における神性の発見」展(630日まで)が開催中で、続いてワシントン・ナショナル・ギャラリーとロサンゼルス・カウンティ美術館で「日本美術に見る動物の姿」展 が開かれる。ワシントン展は62日~818日、ロサンゼルス展は922日~128日。

日本美術への関心の高まりが期待される。

(読売新聞東京本社事業局専門委員 陶山伊知郎)

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