東京・日本橋に「高島屋史料館TOKYO」オープン

企画展第一弾は「日本橋高島屋と村野藤吾」
百貨店の高島屋は3月5日、東京の日本橋高島屋S.C.本館のグランドオープンに合わせ、同本館4、5階に「高島屋史料館TOKYO」をオープンした。1970年に大阪で開館した「高島屋史料館」(大阪市浪速区の高島屋東別館)の分館と位置づけ、テーマごとに外部の有識者を監修者に迎えて企画展を開く。
第1回は、2009年に国の重要文化財に指定された日本橋高島屋の建物と、4度にわたる増築の設計を担当した建築家・村野藤吾(1891~1984年)に焦点を当てた「日本橋高島屋と村野藤吾」展(5月26日まで)を開催。今後、大阪の史料館の所蔵品も活用しながら年4~5回の企画展を開き、「美しい暮らしスタイル」を発信したいという。

日本橋高島屋は1933年、高島屋の店舗と日本生命の東京支店を兼ねた「日本生命館」として竣工。設計は懸賞募集(設計競技=コンペ)に応じた390案の中から特選に選ばれた高橋貞太郎の案が採用された。高橋は東大建築学科の師である佐野利器(としたか)とともに学士会館(東京都千代田区)を設計した建築家だ。
その後、高島屋の売り上げ好調を受けて高橋が引き続き増築の設計を担当したが、地下部分を終えた段階で日中戦争の勃発で中断された。


戦後のモダンデザイン
戦後の1950~60年代、4度にわたる増築を担当したのが村野藤吾。復興期の経済状況と、新しい時代にふさわしいイメージへの期待に応えて、百貨店が入る2~6階の外壁にガラスブロックを採用するなどしてモダンなデザインを打ち出した。

図面、スケッチ、写真などを展示
今回の展覧会では、高橋が手がけた「日本生命館」の実施設計の図面を初公開している。展覧会を監修した建築史家の松隈洋・京都工芸繊維大学教授によると、1994年に村野の遺族から同大の美術工芸資料館に寄贈された図面資料に含まれていたものという。

高橋が設計した重厚で装飾的な建物外観に、村野がモダンで明るいデザインをうまく調和させることに苦心した様子が、スケッチや設計図面、模型からうかがえる。また、大阪の高島屋史料館が所蔵する竣工記念の扇子、写真ハガキなども並び、百貨店の新装オープンらしい華やかな雰囲気の伝わる展示となっている。
「高島屋史料館TOKYO」は入場無料。会期中、月・火曜休館。
(読売新聞東京本社事業局専門委員 高野清見)
