今秋、4か所で同時開催 「文化財よ、永遠に」展 

宝冠阿弥陀如来坐像 鎌倉時代(13世紀) 愛知・財賀寺蔵 【東京国立博物館で展示】
緩んでいた部材を解体して再び接合し、金箔の剥落止めも行って優美な姿を取り戻した

住友財団の修復助成30年記念

国内外に伝わる美術工芸品の維持・修復を支援してきた住友財団の助成対象が累計1000件を超えるとともに、助成を開始してからまもなく30周年を迎える。

それを記念して「文化財よ、永遠に」と題する展覧会が2019年9~12月、全国4か所で同時開催されることに決まり、3月18日、東京国立博物館で記者発表会が行われた。

修復助成の実績を説明する住友財団の蓑康久常務理事

 

全国4か所の会場は、住友家が収集した美術品を保存・展示する泉屋博古館(京都)と泉屋博古館分館(東京)、そして東京国立博物館、九州国立博物館。
別々に設けたテーマに沿って、財団の助成で修復された仏像・絵画・文書・歴史資料など各30件前後を展示する。伝統と最新の科学を組み合わせた修復技術や、修復に使う紙などの素材を確保するための課題、熊本地震などの自然災害で被害を受けた文化財の修復状況など、修復事業を多角的に紹介したいという。

修復の意義を伝える展示

住友財団は1991年9月、住友グループ20社で設立。2017年度までの助成対象は1063件(国内745件、海外318件)に達している。
同財団の蓑康久常務理事は「修復の過程や技術を多角的にお見せして、一人でも多くの方に関心を持っていただき、その意義をお伝えできればと考えている」とあいさつ。仏像の解体修理や補彩、屏風・掛け軸の表装や裏打ちなど、伝統的な修復技術をビデオ、スライド、実演、ワークショップなどで伝え、近年の高度な修復作業も紹介したいと述べた。また、「文化財は人々に守られ、地域固有のシンボルとして位置付けられている。修復の背景にある物語にも光を当てたい」と語った。
10月19日(土)には東京国立博物館でシンポジウムを開き、絵画・工芸・彫刻の研究者と修復担当者、ボストン美術館の修復担当者が参加する予定という。

各館の開催概要

【東京国立博物館】 10月1日(火)~12月1日(日)
「~守り伝えられた仏に出会う~」
本館の特別4・5室を使い、九州地区・京都府内に所蔵されるものを除いた仏像24件で構成する。戦時中に日本から当時のフランス領インドシナに贈られ、現在はベトナム国立歴史博物館(ハノイ)が所蔵する阿弥陀如来立像(鎌倉時代・13世紀)が初めて里帰りする。

この仏像は、1943~44年(昭和18~19年)に日本とフランス領インドシナとの間で行われた文化財交換によって、東京国立博物館(当時は東京帝室博物館)からフランス極東学院(本部・ハノイ)に贈られた計31件の美術工芸品の一つという。

ベトナムから里帰りする仏像について説明する東京国立博物館の浅見龍介・学芸企画部企画課長

 

【泉屋博古館分館(東京)】 9月10日(火)~10月27日(日)
「~美を守る文化財修復の最前線~」
関東周辺や東日本に所蔵される絵画・工芸品43件で構成する(前後期で展示替え)。江戸中期に文人画を大成した池大雅の「比叡山真景図」は作家の五味康祐の旧蔵品で、書斎の雨漏りで画面がひどく傷んでいた。修復を終えた作品は昨年、「池大雅展」(京都国立博物館)に出品された。ほかに東京・増上寺が所蔵する狩野一信の「五百羅漢図」(江戸時代・19世紀)のうち、経年劣化したものを修復した10幅も紹介する。

《比叡山真景図》池大雅 1762年 練馬区立美術館蔵
《五百羅漢図》狩野一信 江戸時代(19世紀) 東京・増上寺蔵

 

【泉屋博古館(京都)】 9月6日(金)~10月14日(月・祝)
「~古都の美をまもる~」
京都を中心とする地域の文化財を紹介する。歌人・藤原定家の日記として知られる国宝「明月記」は、1988年から12年にわたる修理が行われた。それによって日記を書く用紙として二次使用された文書(紙背文書)が解読できるようになり、定家に宛てた天皇からの書簡などが確認され、修理の完成とともに国の重要文化財から国宝に変更された。

ほかに神護寺の国宝「山水屏風」、両足院の長谷川等伯「竹林七賢図屏風」、養源院の狩野山楽「唐獅子図」などを展示する予定。

国宝《明月記》藤原定家 鎌倉時代(13世紀) 京都・冷泉家時雨亭文庫蔵
大日如来坐像 平安~鎌倉時代(12~13世紀) 京都・浄瑠璃寺蔵

 

【九州国立博物館】 9月10日(火)~11月4日(月・振替休日)
「~新たな文化財修復の拠点~」
2005年、福岡県太宰府市に開館した九州国立博物館は九州・沖縄地方における文化財修復の拠点を担ってきた。九州・沖縄の7県に伝わる考古、絵画・彫刻など29件を紹介する。「仏涅槃図」(中国・清時代・17世紀 長崎・春徳寺蔵)は縦3m近い大涅槃図。江戸時代に中国やヨーロッパから最先端の文化が伝えられた長崎らしい絵画で、解体修理による補彩によって清時代の絵画の特徴である濃密な彩色がよみがえったという。
また、2016年の熊本地震で被災した仏像の修復過程も紹介する。

仏涅槃図 中国・清時代(17世紀) 長崎・春徳寺蔵
熊本地震で最大の被害を受けた益城町で、寺の本尊が足元から折れ、多くの部材が破損した。地域のシンボルだったことから、いち早く修復が行われた(写真は被災当時)
千手観音菩薩立像 平安時代(12世紀) 熊本・千光寺蔵

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