2019年 米国で「日本美術に見る動物の姿」展

《鳥獣人物戯画(部分) 》 12世紀-13世紀 From the Collection of Robin B. Martin, courtesy of the Brooklyn Museum, L55.12 Photo: Brooklyn Museum

米国ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー・オブ・アートは、1988年の「大名美術展」以来、約10年ごとに大型の日本美術展を開催しており、2019年には「日本美術に見る動物の姿」展を開く。

1128日、国際交流基金(東京・新宿区)で記者発表会が開かれ、共同でキュレーター(学芸責任者)を務める河合正朝(まさとも)慶大名誉教授(千葉市美術館館長)と、米ロサンゼルス・カウンティ美術館のロバート・シンガー日本美術部長が概要を解説した後、対談形式で企画の背景などを語った。

 

解説をする河合さん

 

動物は日本美術の得意分野

日本では古来から動物が身近な存在として表現されてきた。古墳時代の動物埴輪が有名だが、すでに縄文時代に人間と動物の親密な関係は築かれていたという。その後も「鳥獣人物戯画」のように動物をモチーフにした造形は日本美術の特徴となり、絵巻や仏画、武具・甲冑類などで好んで取り上げられた。

 

《埴輪犬(はにわいぬ)》古墳時代 6-7世紀 ミホミュージアム ◎山崎兼慈

 

日米約100か所から300点超

同展では、「十二支」「宗教:仏教、禅、神道」「侍の世界」など8章に分けて、古代から現代までの絵画、彫刻、漆芸、陶芸、金工、七宝、木版画、染織、写真など300点を超える作品が紹介される。

この企画はシンガーさんの発案。河合さんによれば当初は日本にある作品だけで組み立てる構想だったが、アメリカにも『鳥獣人物戯画(部分)』(個人蔵)など国宝・重要文化財級の作品が所蔵されており、日米両国で作品を集めることになった。結果的に国内外約100か所から作品を借用する大がかりな企画となった。

主な出品作品には、「埴輪犬」「鳥獣人物戯画(部分」のほか、康円(こうえん)「木造騎獅文殊菩薩及脇侍像(もくぞうきしもんじゅぼさつおよびきょうじぞう)」(重要文化財、東京国立博物館蔵)、「八相涅槃図(はっそうねはんず)」(名古屋市・西来寺蔵)、伊藤若冲「旭日松鶴図(きょくじつしょうかくず)」(摘水軒記念文化振興財団蔵)=写真下=、河鍋暁斎(きょうさい)「惺々狂斎画帖(せいせいきょうさいがじょう)(三)」(個人蔵)、草間彌生「SHO-CHAN」などがある。

伊藤若冲 《旭日松鶴図》 宝暦5-6年(1755-56)頃 公益財団法人 摘水軒記念文化振興財団

 

日米研究者の絆

河合さんは1960年代以来、渡米を重ね、コロンビア大学客員準教授やメトロポリタン美術館シニアフェロー、ブラウン大学客員教授などを歴任。一方、シンガーさんはプリンストン大学で日本美術を専攻した後、京都大学で研究を続けた。今も京都に私邸を持ち、日米を頻繁に行き来している。日米両国を股にかけた二人の信頼関係がこの企画を支えている。

質問に答えるシンガーさん(左)と河合さん

 

ワシントン展は62日~818日、その後、ロサンゼルス・カウンティ美術館で922日から128日まで開催される。。